岡本博美(税理士)
関係会社間で取引を行なう場合、その取引価格が第三者との取引価格と同等であるかどうかが重要な問題となります。
したがって、関係会社に対する販売価格が低額であるという指摘を受けた場合には、第三者間との取引価格との差額は、販売側は寄附金とされ、購入側は受贈益が計上されます(図表3)。
棚卸資産の販売を行なう場合、第三者に対する取引条件と関係会社に対する取引条件が異なる場合には、その取引価格に差異が生じても経済的合理性があるといえます。
このように取引条件が異なる取引には、次のようなケースが考えられます。
関係会社に対する販売数量が、第三者と比べて多いことにより、取引価格に差異が出ることが考えられます。
関係会社に対して販売した商品が、第三者に販売した場合に比べて返品が少ないということは、返品リスクを考慮する必要がないため、取引価格に差異が出ることが考えられます。
関係会社に対して業務委託料を支払う場合、その実態が不自然でないか、金額が適正であるか、また、その金額が高額な取引となるような場合には資金の授受が適正に行なわれているかどうかなど、税務調査では確認される内容も多くなります。
関係会社に対して業務委託する場合、経理業務をすべてアウトソーシングするためのものや、社内のコンピュータシステムの管理などのように委託内容が明確なものは問題ないのですが、委託内容が明確でないものについては問題となることがあります。
たとえば、経営指導料やコンサルタント料などとして毎月定額を支払うケースで、その指導やコンサルティングの実態がわかりにくいものが多いのも事実です。
したがって、次のようなレポートを整備しておけば、その事実関係が明らかとなります。
業務委託料については、経理業務をアウトソーシングしているような場合、第三者との価格設定と比較して大幅に差異がなければ問題ないでしょう。
また、経営指導料などのような場合には、その算定方法としてタイムチャージで行なう方法と月額固定報酬で行なう方法がありますが、その指導者の人件費を基準に算定を行なう必要があります。
業務委託料の支払いについて、契約書上では、毎月支払いという条件を定めていながら、資金繰りが悪いからと、委託者側は未払金として処理し、受託者側は未収金として長期間計上されるような状態では、業務実態も併せて問題となります。
このため、当初の条件どおりに資金の授受を行なうことが肝要です。
商取引において、販売促進のために、多額の取引または多量の取引をしてくれた得意先に対して、売上代金の一部を戻す割戻し(リベート)が行なわれることがあります。
この割戻しについても、第三者間取引と同様の算定基準を適用する必要があります。
また、売上割戻しの計上時期は、原則として販売日の属する事業年度になりますが、継続適用を要件として、割戻額の通知日または支払日の属する事業年度の損金とすることも認められます。
ただし、仕入割戻しについては、その算定基準が購入価額または購入数量によって、かつ、その算定基準が契約その他の方法により明示されているものは、購入日の属する事業年度で計上することとされています。
また、その他の仕入割戻しに関しては、その仕入割戻しの金額の通知を受けた日の属する事業年度で計上することができるとされています(図表4)。
関係会社間取引においては、仕入割戻しに関して、その算定基準が明示されているものと考えられるため、仕入割戻しは購入日の属する事業年度で計上することとなります。
会社がその有する売掛金、貸付金などの債権について、債権放棄をした場合には、その債権放棄した金額は寄附金に該当します。
ただし、子会社等の解散、経営権の譲渡等に伴い、損失負担または債権放棄等をした場合において、損失負担等をしなければより大きな損失を蒙ることが社会通念上明らかであると認められ、やむを得ずその損失負担等をするに至ったような場合には、その経済的利益の供与による額は、寄附金の額に該当しないものとされます。
なお、子会社等には資本関係を有する者のほか、取引関係、人的関係、資金関係等において事業関連性を有する者も含まれます。
この寄附金に該当するか否かの判断は、これらの行為に経済的合理性があると認められるか否かの判断が必要であり、その判断が難しいため、国税庁より「子会社等を整理再建する場合の損失負担等」に係る質疑応答事例が公表され、図表5のような項目を検討することとされています。