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公開日:2020年1月17日

入念な準備がカギを握る 今期の決算業務をスムーズに進めるための段取り 月刊「企業実務」 2020年2月号

村田顕吉朗(村田顕吉朗税理士事務所 税理士)


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決算業務を効率化する段取りとは

正確かつスムーズに進めるためのコツとは

ココに注意!今期の決算業務


決算業務をスムーズに進めるためには、事前準備が重要となります。
そのために必要なのが、売上・経費情報の入手と関係部門の協力です。
あわてずに作業をこなすための段取りと、今期ならではの決算業務を解説します。


決算業務を効率化する段取りは

決算は、会社にとって非常に重要な業務です。しかし、実務においては通常の業務(ルーティーンワーク)を進めつつ決算業務をこなさねばならず、ミスも起こりやすくなります。
決算業務はちょっとした工夫で早く、効率的に、ミスも少なく進めることができます。以下、決算業務のポイントを説明します。


(1) 決算とは

決算とは、企業の1事業年度の収益や費用等を計算し、財政状況や経営成績をまとめて「決算書」として確定させることです。
決算書は監査役等のチェックを経て株主総会に提出され、株主の承認を得ます。金融機関等へも報告を行ないます。
また、日本の法人は、事業規模にかかわらず少なくとも1年に1回は決算を行ない、決算書と税務申告書を税務署等に提出することが義務付けられています。
決算日(事業年度の最終日)から株主総会の実施・税務申告書の提出までは一般的に2か月(延長の申請をしている場合は3か月)となるため、決算作業は非常にスケジュールがタイトになります。

(2) 決算業務とスケジュール

決算業務のメインは、決算書の作成です。決算書は主に以下の書類で構成されています。
・貸借対照表(決算日現在の資産・負債等の状況)
・損益計算書(1事業年度の損益の計算書)
・キャッシュフロー計算書(1事業年度の資金の使途・調達の明細)
・株主資本等変動計算書(1事業年度の増減資・配当等利益処分の状況)
・個別注記表(前記決算書の補足情報)

また、税務申告書に添付する以下の書類を作成することも多いでしょう。
・勘定科目内訳明細書(主な勘定科目の残高の詳細[例・売掛金の取引先別残高等])
・法人事業概況説明書(事業内容や主要科目残高等をまとめた書類)

これらの書類を限られた時間のなかで作成するには、作業を洗い出し、どのような日程で進めていくかを事前に組み立てることが大変重要です。間違っても、決算日が過ぎてから動き始めるようなことはしてはいけません。
決算・申告には期限がありますから、想定外の出来事が起こっても大丈夫なように、余裕を持ったスケジュールを組みましょう。
経理を自社で行なっている中小企業のスケジュールの例が図表1です。

図表1 スケジュールの例図表1 スケジュールの例

図表のとおり、決算前にしておくべきことが多く、事前の準備がいかに重要かがわかると思います。
税金計算を税理士に依頼している場合は、業務分担と税理士への資料送付のスケジュールについて事前に打合せをしておきましょう。特に3月決算の場合、GWの大型連休や税理士の繁忙期の影響で思うように作業が進まないことも多く、注意が必要です。

(3) 利益予測・納税予測

決算の2~3か月前には、今期の利益予測を行ないます。利益予測では、今期のこれまでの営業実績や決算日までの予算・予測、過去の実績データなどから、今期の決算でどの程度の利益が出るのか、または赤字になるのかを予測します。
予測の結果、特に黒字か赤字かにより、決算までに会社がやらなければならないことが大きく変わります。
黒字の場合は法人税等の納税額を予測し、税負担を抑えたいのであれば、決算までに図表2のような節税プランを検討することになります。

図表2 決算直前の節税対策図表2 決算直前の節税対策

赤字の場合は、決算までに利益を出せるよう、備品などの購入をできるだけ先延ばしにしたり、含み益のある資産を処分するなどして黒字化を図ります。金融機関から融資を受けている場合は、黒字であることが特に大切です。
しかし、あまりにも業績が悪く抜本的な経営改革が必要な場合は、思い切って不良在庫や不良設備などを処分して今期のうちに膿を出し切り、翌期以降の黒字化を狙う場合もあります。
いずれにしろ、プランを検討し、実行するにはある程度の時間が必要です。早めに利益予測を行ない、顧問税理士も交えて決算までに取るべき行動を協議し、スタッフにも周知しておくとよいでしょう。そうすれば余裕をもって、全社一丸で決算を迎えることができます。

(4) 事前準備(人員の配置、業務分担の見直し)

中小企業では経理部の人数が少なく、決算業務を少人数で抱えて大変な思いをすることも珍しくありません。決算業務で大切なのは、自分だけでやろうとしないことと、仕事を抱え込まないことです。決算業務はルーティーンの作業に加えて行なわれる業務ですので、これを自分だけで乗り切ろうとは考えないほうがよい結果が出ます。早いうちから作業の分担を決め、1人ひとりの負担を減らすようにしましょう。
毎年作成するような書類や作業については、定型書式やマニュアル等でなるべく「誰にでもできる」レベルにフォーマット化しましょう。
作業を分担できるだけでなく、複数の人が見ることによりチェック機能が働くようになります。
また、決算の早期化・効率化のためには他部署や他社の協力が不可欠です。急な依頼で相手にストレスをかけたり関係を悪化させないよう、早めに連絡を取り合って円滑に進めていきましょう。

(5) 進捗管理表

スケジュールと業務分担が決まったら、進捗管理表を作成するとよいでしょう。決算業務の各項目ごとに「担当者」と「期限」を明記し、各担当者が自分の分担の進捗を「作業中」「完了済み」などと記入していきます。進捗管理表は社内に貼り出すか社内ネットワーク上に配置し、全員で最新の状況を共有しましょう。朝礼や定例会議等で状況を報告することも効果的です。
これは、自分がしなくてはいけない作業の確認を行なうと同時に、「自分の状況を周囲の人たちに知ってもらう」効果があります。責任感が強い人は、自分の仕事を何が何でも一人で終わらせようとして、抱え込んでしまうことがあります。仕事が遅れ気味でも周囲に相談できず、結果的に期限ギリギリになって「もう間に合わない!」ということが発覚したりします。そうならないように、誰もが見えるように進捗状況を共有しておくことが必要なのです。

(6) 新しいサービス・ソフトウエア・システムの活用

これは決算業務に限った話ではありませんが、経理や事務の業務効率を上げるためには、業務手順の改善やシステムの活用も欠かせません。
特に「手作業で行なっている業務」は、改善の宝庫です。紙の伝票に手書きで記入したり、パソコンを使っていても手入力でデータを移しているような作業は意外に多いのではないでしょうか。
社内で作成するエクセル資料やワード報告書は、たくさんあるはずです。そのような資料同士、または資料と会計システムとが連動しておらず、どの段階でも手作業で打ち込んでいる場面をよく見かけます。手作業は読み間違えや打ち間違えによるミスが一定数発生することから、エクセルの数式や会計ソフトの読込機能を利用して手作業の部分を省略することで、入力ミスの削減や作業時間の短縮につながるケースがあります。

図表3 作業の効率化図表3 作業の効率化

たとえば図表3は、もともとは手作業で複数の資料をつくっていたところを、簡単なエクセルのプログラムや会計ソフトの機能の利用により自動化し、大幅に手間を減らすことができた例です。このほかにも、請求書作成ソフトから切り出したエクセルファイルを加工したり、自動読み込みができない場合はRPA(ロボットによる作業)により作業を削減するなどのアイデアもあります。
こういった改善は準備から効果測定まで時間を要するため、今回の決算業務に間に合わせることは難しいでしょう。
しかし、業務が一段落した段階で、二度手間三度手間となっている作業はないか見直してみてはいかがでしょうか。特に決算業務は年に1度のイベントですので、終わった直後が一番改善点を多く洗い出せるでしょう。

(7) 業務の委託

自社で会計伝票の入力から決算書の作成、申告書の作成までできれば理想的ですが、それが現実的に厳しい状況下では、税理士事務所等の外部機関に委託(アウトソーシング)することを検討するとよいでしょう。
税理士事務所については、自社の人材や経理の状況によって委託する作業が変わってきます(あわせて報酬も変わります)。
会計ソフトへの伝票入力から依頼するケース、自社が行なった会計伝票の確認から依頼するケース、決算書までは自社で作成し申告書の作成のみを依頼するケースなどです。
多くの税理士事務所では、会社が自前で経理・決算ができるように指導を行なっていますので、アドバイスを受けつつ、段階的に経理部門のレベルアップを図るのがよいでしょう。

(続く)

企業実務



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