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公開日:2019年12月18日

働き方改革に対応! 「就業規則等」改定のためのチェックリスト 月刊「企業実務」 2020年1月号

野田宏明(ITS 社会保険労務士法人 社会保険労務士)


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働き方改革関連法の内容とスケジュール

長時間労働是正のチェックポイント

同一労働同一賃金のチェックポイント


働き方改革関連法は、2018年7月に公布され、2019年4月から順次施行されています。
企業にとって影響の大きな内容ばかりですので、いま一度、改正内容を確認するとともに、就業規則や労使協定の改定等について、対応ができているかチェックしましょう。


就業規則等のチェックポイント

働き方改革関連法の内容とスケジュール

働き方改革関連法の改正項目については、図表1にあるとおり多岐にわたります。

図表1 働き方改革関連法の施行スケジュール図表1 働き方改革関連法の施行スケジュール

それぞれ施行日が異なりますが、一部は大企業が中小企業より先行して施行されます。まずは、各改正事項について、内容とスケジュールを確認していきます。


時間外労働の上限規制

時間外労働または休日労働をさせる場合には、あらかじめ労使双方で36協定を締結し、所轄の労働基準監督署に提出する必要があります。

36協定には延長できる時間を明記しますが、これまでは厚生労働省が定める告示(時間外労働の限度に関する基準[平成10年労働省告示第154号])により原則となる上限が定められていました。
そして、その告示による上限を超えて、臨時、特別な事情により時間外労働等が発生する場合には、労使で36協定の特別条項を設けることで、例外的に限度時間を超えた労働をさせることが可能となります。

しかし、この特別条項には限度がなく、労使で合意すれば青天井に時間の設定が可能となっており、この点が長時間労働の原因のひとつとされていました。
今回の改正により、原則の上限時間を従来の告示から法律(労働基準法)に格上げし、さらに特別条項に関しても法律による上限が設けられるという改正が行なわれました(図表2)。

図表2 法律による時間外労働の上限規制図表2 法律による時間外労働の上限規制

合わせて罰則も規定され、これまで以上に強制力のある制度に変わりました。これに伴い、36協定の様式についても大きく変わることになりました。

施行日は、大企業は2019年4月1日ですでに開始しており、中小企業は2020年4月1日となります。36協定は通常1年間の期間を締結していますが、経過措置として、施行日以後に締結された36協定に対して改正法が適用されます。
たとえば、中小企業において2020年1月1日から1年間の36協定を締結している場合、2020年12月31日までの期間は改正前の旧法が適用されることになり、2021年1月1日に締結した分から改正法が適用されることになります。

なお、業種によっては上限規制の適用が除外または猶予されるケースがありますので、あわせて確認が必要です。


年次有給休暇の時季指定義務

年休の付与日数が年10日以上の労働者には、年5日については会社が時季を指定して与えることが義務付けられました。会社は、時季指定にあたっては、労働者の意見を聞き、それを尊重するように努めなければなりません。
計画的付与や、労働者が自ら取得した日数によりすでに年5日の年休取得を確保している場合には時季指定の必要はありませんが、年5日に満たない場合には、時季指定が必要となります。

注意が必要なのは、法定どおりの年休制度としている場合、入社月によって付与のタイミングが異なる点です。
当該義務化は付与日から1年間を単位としますので、労働者によって期間が異なる状況が生じます。管理するためには、各労働者の期間を把握しながら、漏れなく年5日に満たない可能性がある者を抽出できるよう、仕組みや手順を検討することが必要です。
また、法定基準を上回る制度として、入社と同時に年休を付与するなど前倒しで付与している場合や、入社日に関わらず4月に一斉に付与する場合もあります。

このような場合、年5日の計算が複雑になることがあります。厚生労働省はそれぞれのケースを例示した資料を公開していますので、あわせて確認が必要です。


フレックスタイム制の清算期間の延長

今回の改正で、従来1か月であったフレックスタイム制の清算期間の上限を3か月に延長することで、労働者は月をまたいだ労働時間の調整ができるなど、より柔軟な働き方が可能になりました。

フレックスタイム制の導入には、労使協定の締結が必要となります。清算期間が1か月以内の場合は労働基準監督署への届け出は必要ありませんが、1か月を超える場合には労働基準監督署へ届け出る必要があります。


産業医・産業保健機能の強化面接指導制度の拡充

長時間労働やメンタルヘルス不調などにより、健康リスクが高い状況にある労働者を見逃さないようにするための対策として、「産業医・産業保健機能の強化」「長時間労働者に対する面接指導制度の拡充」を行ないました。
これは、2019年4月1日より施行されています。

ポイントは2点あり、(1)産業医の活動環境の整備、(2)健康相談の体制整備・健康情報の適正な取扱いについて、です。

(1)については、産業医の独立性・中立性を高めることにより、労働者の健康確保のための活動がより行ないやすくなることを目的としています。
主な内容としては、労働者の健康管理に必要な情報を産業医に対して提供することを法律上の義務とした点です。健康診断結果や長時間労働者に対する面接指導結果などの情報や、時間外・休日労働時間が1月当たり80時間を超えた労働者の情報などについて、事業者は産業医に情報を提供しなければなりません。
なお、産業医の選任義務のない労働者数50人未満の事業場については努力義務となります。

(2)については、労働者の情報が適切に管理され、労働者が安心して産業医などに対する健康相談を受けられるようにすることを目的としています。
会社はそのために必要な体制整備などを実施するように努めなければなりません。また、同時に労働者の心身に関する情報を適正に管理するために必要な措置を講じる必要があります。

一方、面接指導を実施する時間外労働時間のラインが、改正前は100時間超でしたが、改正後は80時間超に厳格化されました。ただし、研究開発業務従事者については、100時間を超えた場合、本人の申し出に関わらず面接指導を行なわなければなりません。
また、労働時間の把握について法律上明記され、管理監督者やみなし労働時間制適用者についてもタイムカード等の客観的な方法により把握することが義務付けられました。


勤務間インターバル制度の普及促進

勤務間インターバルとは、終業時刻と翌日の始業時刻までに一定の休息時間を確保する制度です。残業で深夜まで勤務した場合には、翌日の始業時間を遅らせることで生活時間や睡眠時間を確保し、ワークライフバランスや健康の保持などの効果が期待されます。政府はその普及促進のため、勤務間インターバル制度の導入を努力義務と位置づけました。

一定の休息時間を何時間とすべきかについて法律上の規定はありませんが、この制度を導入すると利用できる助成金の対象となる休息時間数は9時間以上(11時間以上は支給額増)となっており、この時間数を目安に検討するとよいでしょう。


同一労働同一賃金への対応

同一労働同一賃金は、同一企業内における正社員と非正規社員の間の不合理な待遇差を禁止するものです。以前より、労働契約法20条では有期労働契約者と無期労働契約者における不合理な労働条件の禁止を規定していました。
また、パートタイム労働法ではフルタイムとパートタイムとの間の差別的取扱いの禁止と不合理な待遇の禁止規定があります。

今回の改正によって、労働契約法20条の内容は削除され、パートタイム労働法の対象に有期契約労働者が含まれることになり、法律の名称も「パートタイム・有期雇用労働法」に変わります。これにより、正社員と非正規社員の間の不合理な待遇差解消のための規定が整備・明確化されることになります(図表3)。

図表3 同一労働同一賃金についての改正状況図表3 同一労働同一賃金についての改正状況

企業としては、施行日までに制度の見直しと、必要に応じた就業規則の改定が必要となります。

改正のポイントは、(1)不合理な待遇差の禁止、(2)労働者への待遇に関する説明義務の強化、(3)行政による事業主への助言・指導等や裁判外紛争解決手続き(行政ADR)の規定の整備です。
このなかで、施行までにあらかじめ準備が必要となるのは、(1)と(2)です。自社の規程において不合理な待遇差がないかを確認し、あれば制度変更等の対応を行ないます。そのうえで、労働者から待遇に関する説明を求められた場合にきちんと説明できるよう準備をしておくことが重要となります。

(続く)

企業実務



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