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公開日:2019年6月24日

金融機関の再編に備え、中小企業が打つべきこの一手 月刊「企業実務」 2019年7月号

家森信善(神戸大学経済経営研究所教授)


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最近の金融機関を取り巻く状況とは

金融機関の再編に向けて企業が採るべき対策とは


人口減少や超低金利で金融機関の収益力悪化が進んでおり、地銀のさらなる再編は必至の状況です。この状況で中小企業はどんな対策を講じるべきかを考えます。

※本稿は、2019年6月3日時点の情報に基づいています。

最近の金融機関を取り巻く状況とは

基礎的収益力の向上が求められる地域銀行

日本銀行は、日本の金融システムの現状を分析するために「金融システムレポート」を年2回公表しています。この最新号が2019年4月に公表されました。その結論部分で、日本銀行は、金融機関に求められる4つの経営課題を挙げています(図表1)。

図表1 金融機関の経営課題図表1 金融機関の経営課題

このうち筆頭に掲げられているのが「基礎的収益力の向上」です。そのための具体策として、
(1) 企業の課題解決や家計の資産形成支援等の金融サービス提供力を強化していくこと
(2) 主力の国内貸出においてリスクに見合った金利を確保し、また役務収益の増加を図っていくこと
(3) 業務プロセスや経費構造の見直し等を通じて経営効率を抜本的に高めていくこと
を挙げています。
そして、「これらの取組みを強力・効果的に推進する観点から、金融機関間の統合・提携や他業態とのアライアンスも有効な選択肢となり得る」と指摘しています。

厳しい地域銀行の収益見通し

日本銀行が収益力の向上を経営課題として指摘せざるを得ないほどに、地域銀行の収益環境は厳しいです。金融機関の基礎的収益力を示す代表的な指標が「コア業務純益」です。これは、貸出などの資金運用と各種の手数料業務から得られる「もうけ」の大きさで、銀行の本業の収益力を示す指標として使われています(図表2)。

図表2 コア業務純益の計算式図表2 コア業務純益の計算式

図表3は、地方銀行64行のコア業務純益の推移を示しています。10年ほど前には1.4兆円でしたが、減少傾向が続き、2016年度と2017年度には1.1兆円を下回っています。

図表3 地方銀行のコア業務純益の推移図表3 地方銀行のコア業務純益の推移

ただ、大きく減っているものの、それでも巨額の利益が出ており、危機というのは大げさではないかと疑う人も多いでしょう。問題は将来の見通しなのです。
最近の銀行の収益を支えてきたのは、企業倒産が少ないことに伴う信用コストの減少と、株式などの有価証券の売却益でした。しかし、企業倒産は景気の悪化で今後増える心配がありますし、有価証券の売却益は底をつきつつあって、収益の下支え要因は先細りするのが確実です。
図表4は、日本銀行が金利や経費について一定の前提のもとで、地域銀行や信用金庫の当期純利益が今後10年間にどのように推移するかをシミュレーションした結果です。

図表4 将来の純利益の赤字金融機関の比率図表4 将来の純利益の赤字金融機関の比率

貸出需要に関しては、(1)これまでと同じペースで企業の借入需要が減少し続ける「借入需要減少ケース」と、(2)先行きは企業の借入需要の減少に歯止めがかかる「借入需要不変ケース」の2つのケースで分析をしています。
いまの水準で借入需要の減少に歯止めがかかれば、赤字の金融機関は1割程度で抑えられますが、いまのペースで減少が続けば(「借入需要減少ケース」)、地域銀行と信用金庫の6割近くが10年後には赤字になるという深刻な予想がなされています。
金融庁も本業利益(顧客向けサービス業務[貸出・手数料ビジネス]の利益)が、2025年3月期には約6割の地域銀行でマイナスになるとの試算を公表しています(「平成27事務年度金融レポート」)。金融庁と日本銀行の両当局が地域金融機関の将来収益について極めて厳しい見方で一致しているのです。

(続く)

企業実務



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