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公開日:2019年5月23日

どこまでやれば及第点か 労働時間を客観的に把握する法 月刊「企業実務」 2019年6月号

坂本直紀(坂本直紀 社会保険労務士法人 特定社会保険労務士)


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労働時間の状況の把握とは

客観的に労働時間を把握するには

労働時間の状況の把握後の対応

トラブル防止のための留意点とは


働き方改革により、ことしの4月1日から、原則としてすべての事業者に対して、労働者の労働時間を客観的に把握することが義務付けられました。
ここでは、客観的に労働時間を把握する方法とその留意点を解説します。

労働時間の状況の把握とは

労働安全衛生法の改正により、事業者には、「労働時間の状況の把握」が義務化されました。
労働時間の状況の把握とは、事業者が労働者の健康確保措置を適切に実施する観点から、労働者がいかなる時間帯にどの程度の時間、労務を提供し得る状態にあったかを把握することを指します。

適用となる対象労働者とは

労働時間の状況の把握の対象となるのは、図表1に挙げた労働者を含め、すべての労働者です。

図表1 労働時間の状況の把握の対象となる労働者図表1 労働時間の状況の把握の対象となる労働者

たとえば、裁量労働制の適用者はみなし時間に基づき割増賃金の算定をしていること、管理監督者は時間外・休日労働の割増賃金の支払義務が発生しないことから、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」の対象外とされ、労働時間の状況を適正に把握しているとは言い難い面がありました。
しかしながら、今後は健康管理の観点から、こうした労働者に対しても労働時間の状況の把握を適切に行なう必要があります。

原則的な労働時間の状況を把握する方法

事業者が労働時間の状況を把握する方法としては、原則として、
 ・タイムカード
 ・パソコン等の使用時間(ログインからログアウトまでの時間)の記録
 ・事業者(事業者から労働時間の状況を管理する権限を委譲された者を含む)の現認
等の客観的な記録により行ない、労働者の労働日ごとの出退勤時刻や入退室時刻の記録等を把握することが義務付けられました。

したがって、基本的に、客観的な記録を行なううえにおいては、事業者はタイムカード等を導入して適切に対応することが必要になります。
そのうえで事業者は、これらの方法により把握した労働時間の状況の記録を作成し、3年間保存することになります。
なお、派遣労働者については、派遣先事業者が労働時間の状況を把握することになります。

客観的な方法では把握し難い場合

前述のとおり、客観的な記録が義務付けられることになりましたが、客観的な方法により労働時間を把握し難い場合は、やむを得ず自己申告による方法も認められる場合があります。
ただし、この「やむを得ず客観的な方法により把握し難い場合」は、たとえば、労働者が事業場外において行なう業務に直行または直帰する場合など、事業者の現認を含め、労働時間の状況を客観的に把握する手段がない場合が該当することから、非常に限定的といえます。

実際、労働者が事業場外において行なう業務に直行または直帰する場合であっても、たとえば、事業場外から社内システムにアクセス可能であり、客観的な方法による労働時間の状況を把握できる場合については、直行または直帰であることのみを理由として、自己申告により労働時間の状況を把握することは、 認められないとされています。

また、タイムカードによる出退勤時刻や入退室時刻の記録、パソコン利用時間の記録などのデータを有する場合、事業者の現認により労働者の労働時間の把握が可能な場合は、客観性が存在するといえるため、こちらも自己申告による労働時間の状況把握は認められていません。

自己申告による把握の方法

それでは、万が一、「やむを得ず客観的な方法により把握し難い場合」に該当した場合、労働者の自己申告が認められるには、どのような要件をクリアしなければならないのでしょうか。
自己申告が認められる前提条件として、事業者は図表2の措置を、すべて講じることとされています。

図表2 自己申告が認められるための要件図表2 自己申告が認められるための要件

これを見るとわかるとおり、自己申告制が認められるには、かなり高いハードルをクリアすることが必要となります。
具体的には、管理面の強化や本人への頻繁な確認など、事業者側は、多くの時間を割く必要があります。したがって、原則的な方法(タイムカードやICカード等)で記録することが、現実的であると思われます。

(続く)

企業実務



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