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公開日:2019年3月27日

人手不足企業が直面する最難問 「有給休暇取得義務化」への対応 月刊「企業実務」 2019年4月号

篠原宏治(社会保険労務士事務所しのはら労務コンサルタント/特定社会保険労務士)

実務情報STATION


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年次有給休暇の取得義務化の具体的な内容

求められる就業規則の整備

運用上想定される問題点と現実的な対応とは


働き方改革により、一定の有給休暇の取得義務化が行なわれますが、ただでさえ人手不足の状況でこの難問にどう対応するか頭を抱えている中小企業は多いはず。
義務化の内容と具体的な対応策について紹介します。

年次有給休暇の取得義務化の具体的な内容

対象となる労働者とは

年次有給休暇の取得義務の対象となるのは、当年度の付与日に10日以上の年次有給休暇が与えられた労働者です。
使用者は、労働者が雇入れの日から6か月間継続勤務し、その間全労働日の8割以上を出勤した場合に、原則として10日の年次有給休暇を付与することが義務付けられているため、いわゆる正社員については、出勤率が8割未満であった場合を除いてすべて取得義務の対象となります。
また、パートタイマーやアルバイトなどで、比例付与の対象となる労働者(週所定労働時間が30時間未満かつ週所定労働日数が4日以下(または年間の所定労働日数が216日以下))については、「週4日(年169~216日)で勤続年数が3年6か月以上」と「週3日(年121~168日)で勤続年数が5年6か月以上」の者については、一部取得義務の対象となります(図表1)。

図表1 年次有給休暇の付与日数図表1 損金算入される3つのケース

なお、「年10日以上」は、当年度の付与日に与えられた日数のみが対象であり、前年度からの繰り越し分は含まれません。
したがって、直近1年間の出勤率が8割未満であったため新たな年次有給休暇が付与されなかった労働者については、前年度から繰り越し分が10日以上あったとしても当年度においては取得義務の対象とはなりません。

取得させる日数とは

使用者は、対象労働者に毎年5日の年次有給休暇を時季を指定して与えることが義務付けられます。ただし、労働者本人からの請求や計画的付与制度によって与えた年次有給休暇の日数は、使用者が時季指定を行なう5日から控除されます。
いずれかの方法で年次有給休暇の取得日数が年5日に達した時点で、当該期間において使用者は時季指定を行なう必要がなくなり、また、時季指定を行なうこともできません。
使用者による時季指定は、本来労働者が持っている「時季指定権」を制限することにもなることから、年次有給休暇の取得率向上が目的であったとしても、就業規則等で年5日を超える日数を使用者が時季指定を行なうことができるように定めることはできません。
なお、取得させる年次有給休暇は必ずしも当年度に付与されたものである必要はなく、前年度からの繰り越し分から5日を取得させた場合であっても取得義務を果たしたものと認められます。

有給休暇を取得させる期間

【1】原則
使用者は、10日以上の年次有給休暇を付与した日から1年が経過する日までに5日の年次有給休暇を取得させなければなりません。

【2】法定の付与日よりも前倒しで付与している場合
法定の付与日(以下「基準日」という)よりも前倒しで10日以上の年次有給休暇を付与している場合、たとえば、入社当日に10日の年次有給休暇を付与しているような場合には、当該付与日(第一基準日)から1年以内に5日の年次有給休暇を取得させなければなりません(図表2)。

図表2 法定の基準日より前に10日以上の年次有給休暇を付与する場合

【3】前の付与日から次の付与日までの期間が1年以内のため、5日の指定義務がかかる1年間の期間に重複が生じる場合
全社員の年次有給休暇の付与日を統一している場合は、前の付与日から次の付与日までの期間が1年以内となり5日の指定義務がかかる1年間の期間に重複が生じることがあります。具体的には、次のような場合に重複が生じます。

● 入社日(7月1日)に1年目の年次有給休暇(10日)を付与し、2年目の年次有給休暇(11日)を全社員統一した付与日(1月1日)に付与している場合(図表3

図表3 前の年と次の年で年次有給休暇の付与日が異なるため、5日の指定義務がかかる1年間の期間に重複が生じる場合

●入社日(4月1日)から6か月経過した法定の付与日(10月1日)に1年目の年次有給休暇(10日)を付与し、2年目の年次有給休暇(11日)を全社員統一した付与日(1月1日)に付与している場合

5日の指定義務がかかる1年間の期間に重複が生じる場合であっても、それぞれの付与日から1年以内に5日の年次有給休暇を取得させることが原則となります。
ただし、事務簡便化のため、前後の期間を通算した期間(前の付与日から後の付与日から1年を経過する日までの期間。以下「通算期間」という)の長さに応じて5日を比例按分した日数を、通算期間全体を通じて付与することも特例として認められます。
付与日数の算出方法は、次のようになります。

◎ 付与日数=5日÷12か月×通算期間の月数

通算期間に1か月未満の端数が生じる場合は、1か月に切り上げて計算しても差し支えありません。また、計算結果に1日未満の端数が生じた場合は、0.5日(半日単位での取得を認めている場合)または1日に切り上げて付与日数とします。
端数処理の有無によって使用者が取得させなければならない日数に若干の差異が生じることがあるため、端数処理の方法についても明確に定めておくことが望ましいでしょう。なお、これらの端数を切り捨ててしまうと計算結果が5日を比例按分した日数に満たなくなってしまうため、四捨五入や一律切捨てによる端数処理を行なうことはできません。

【4】年次有給休暇を分割して付与している場合
年次有給休暇を分割して付与している場合は、合計付与日数が10日に達した日を第一基準日とみなして1年間の起算日とします。ただし、分割付与された年次有給休暇が第一基準日より前に取得された場合は、当該取得日数を第一基準日以降に取得させなければならない5日から控除する必要があります(図表4)。

図表4 10日のうち一部を法定の基準日より前倒しで付与した場合

(続く)

企業実務



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