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公開日:2019年2月20日

“お手盛り”にみられると危ない! 役員報酬・賞与・配当にまつわるリスクを防ぐ 月刊「企業実務」 2019年3月号

米津晋次(よねづ税理士事務所/税理士)


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税務上の懸念を払拭するための役員報酬・賞与の実務処理

現物給与の処理で気をつけておきたいこと

役員退職金はどこまで認められるか

違法配当になるのはどこからか


このところ高額な役員報酬が話題になっていますが、役員報酬・賞与・配当については中小企業の税務調査でも俎上に乗せられることが多いもの。
どのような設定でどのような配慮をすれば税務リスクを回避できるのか、実務ベースで考察します。

税務上の懸念を払拭するための役員報酬・賞与の実務処理

法人税法では、役員給与の恣意性を排除することが適正な課税を実現するためには不可欠であるとして、損金算入とされる役員給与(【1】退職給与のうち非適格業績連動に該当しないもの、【2】使用人兼務役員の使用人部分の給与、の両者を除いた損金算入の役員給与)の範囲を、職務の対価として相当とされる3つのもの(定期同額給与、事前確定届出給与、業績連動給与)に限定しています(図表1)

図表1 損金算入される3つのケース図表1 損金算入される3つのケース

これらに共通するのは、「あらかじめ決まっていた金額かどうか」という点です。

役員給与損金算入の例外

この3つに該当したとしても、次に該当する場合は、損金算入されないこととされています。

・その役員の職務内容、類似法人の支給状況などに照らして不相当に高額な部分の金額
・事実の仮装・隠ぺい等の不正経理により支給した役員給与の額

これらの原則を踏まえたうえで、税務上、役員報酬や賞与が問題になるケースとそれを防ぐための処理の仕方について考えます。

役員報酬の額自体が問題になるケース【1】

役員報酬の額自体が問題になるケースとして、まずは形式基準を取り上げます。
会社法上、役員報酬は定款や株主総会で定められた額を支給するのが大原則です(「取締役の報酬、賞与その他の職務執行の対価として株式会社から受ける財産上の利益(略)は、定款に当該事項を定めていないときは、株主総会の決議によって定める(会社法361条)」)。これらの定めを超える役員報酬の支出は会社法違反になりますから、法人税法でも否認されることになります。
否認を避けるためには、株主総会・取締役会議事録を作成・保存します。

役員報酬の額自体が問題になるケース【2】

もうひとつ、役員報酬の額自体が問題になるケースは、役員報酬が不相当に高額な場合です。

(1) 非常勤役員
役員報酬が不相当に高額だと否認されたケースの多くが、非常勤役員の職務執行状況に実態が伴っていない場合です。
特別な事情がない限り、過去の裁決等からすると、あまり業務に関わっていない非常勤の役員への役員報酬は月額10万~15万円程度が標準的な水準でしょう。
それ以上の役員報酬を非常勤役員に支給する場合は、なぜその金額を支給しているのかを説明できる資料、たとえば、出席した取締役会議事録などの記録をとっておくことなどが必要になります。
また、配席図や組織図にも記載があって客観的に経営に参画しているという役員の役割を明らかにすることなども必要でしょう。

(2) 代表者役員
代表者の役員報酬については、不相当高額否認はまずない、というのが現場の常識です。しかし、代表者役員報酬否認の判例等もあります。平成28年1月25日最高裁判決(いわゆる「残波事件」)や平成29年4月25日裁決です。
これらの判決等では、収益動向、使用人給与の上昇動向と役員報酬の増加率の対比という手法が見られました。
平成29年4月25日裁決では、会社の収益動向も使用人給与の動向もおおむね一定であったのに対し、代表者の役員報酬だけが平成22年7月期と比較すると、平成23年7月期が約2.3倍、平成24年7月期が約3.3倍、平成25年7月期が約3.9倍、平成26年7月期が4倍、平成27年7月期が約4.3倍と、いずれも高い伸び率となっていました。代表者役員報酬の増額が、業績や使用人給与の増減と相関性がない点が不相当高額認定の理由でした。
なお、役員報酬の相当額として、比準法人の最高額が用いられています。
この裁決からは、高額な役員報酬の増額を検討する場合には、自社の収益動向や使用人給与の上昇動向との相関性に対する目配りが必要だと言えます。

役員報酬の変更が問題になるケース

(1) 役員報酬変更の時期
役員報酬額の変更は、役員の職務執行期間(定時株主総会から次の定時株主総会までの期間)に合わせた事業年度開始の日から3か月以内の期間内に行なわれるもの(定時改定)のみが認められています。
たとえば、3月決算の法人が毎月末日に役員報酬を支給することとしている場合において、6月25日に開催した定時株主総会において定期給与の額の改定を決議したときには、次の【1】または【2】に掲げる各支給時期における支給額が同額である場合には、それぞれが定期同額給与に該当することとなります(図表2)。

図表2 6月30日支給分から増額する場合図表2 6月30日支給分から増額する場合

【1】 その事業年度開始の日(4月1日)から3か月以内に行なわれる改定前→4月30日、5月31日

【2】 その事業年度開始の日(4月1日)から3か月以内に行なわれる改定後→6月30日、7月31日、8月31日・・・、3月31日

この法人と同じ決算、支給日で、実際には改定を決議した株主総会の日から1か月経過後最初に到来する給与の支給日である7月31日支給分から適用するケースもあるかと思います。この場合、事業年度開始の日から3か月以内の期間内に改定がされていないため、定期同額給与に該当せず、7月31日支給分からの増額分が損金不算入になってしまうのではないかと不安になります。
国税庁が公表している『役員給与に関するQ&A 平成20年12月(平成24年4月改訂)』では、その場合の取扱いについて次のように解説しています。
定時株主総会において翌職務執行期間に係る給与の額を定めたものと思われますが、6月25日から開始する翌職務執行期間に係る最初の給与の支給時期を、定時株主総会直後に到来する6月30日ではなく、その翌月の7月31日であるとする定めも一般的と考えられますので、次の【1】または【2】に掲げる各支給時期における支給額が同額である場合には、それぞれが定期同額給与に該当することとなります(図表3)。

図表3 7月31日支給分から増額する場合図表3 7月31日支給分から増額する場合

【1】 その事業年度開始の日(4月1日)から給与改定後の最初の支給時期の前日(7月30日)までの間の各支給時期→4月30日、5月31日、6月30日

【2】 給与改定前の最後の支給時期の翌日(7月1日)から当該事業年度終了の日(3月31日)までの間の各支給時期→7月31日、8月31日・・・、3月31日

(2) 臨時改定
定期同額給与の定時改定以外の増額支給は、原則認められていません。例外的に、その事業年度において役員の職制上の地位の変更、その役員の職務の内容の重大な変更その他これらに類するやむを得ない事情(臨時改定事由)によりされたこれらの役員に係る定期給与の額の改定は定期同額給与に該当するとされています。
では、代表取締役甲が病気で入院したことにより当初予定されていた職務の執行が一部できないこととなった場合はどうでしょう。
国税庁公表『役員給与に関するQ&A 平成20年12月(平成24年4月改訂)』によると、この場合、代表取締役甲の職制上の地位の変更はないものの、これまで行なってきた役員としての職務の一部を遂行することができなくなったという事実が生じており、職務の内容の重大な変更その他これに類するやむを得ない事情があったものと考えられますので、臨時改定事由による改定に当たり、役員報酬の額を減額することは臨時改定事由による改定と認められます。
また、従前と同様の職務の執行が可能となった場合に、入院前の給与と同額の給与を支給することとする改定も臨時改定事由による改定と認められます。したがって、甲に支給する給与はいずれも定期同額給与に該当します。
なお、定期同額給与の臨時改定事由に該当しない増額支給があった場合、規定上はその全額が損金不算入になるとされていますが、国税庁が公表した『役員給与に関する質疑応答事例(平成18年12月)』では、増額後の支給額が同額の場合について、従前からの定期同額給与とは別個の給与が上乗せされて支給されたものと同視できるので、上乗せ支給された給与のみが損金不算入になると示されています。

図表4 上乗せ支給された給与のみが損金不算入になる図表4 上乗せ支給された給与のみが損金不算入になる

図表4の場合では、9月からの支給額の毎月70万円全額が損金不算入になるのではなく、増額分の毎月10万円だけが損金不算入になります。

(3) 業績悪化による減額
定期同額給与の場合、期中の増額だけでなく減額も認められていません。ただし、例外として業績悪化事由による減額改定は認められます。
業績悪化改定事由にどのような場合が該当するのかが気になります。国税庁が公表した『役員給与に関するQ&A 平成20年12月(平成24年4月改訂)』では、対「利害関係者」という概念を持ち出して、【1】株主、【2】取引銀行、【3】取引先等の利害関係者との関係上、役員報酬を減額せざるを得ない事情が生じたことで行なう給与改定は、業績悪化改定事由に該当するとしています。
つまり、自社が判断した一時的な資金繰りの都合や単に目標の経営数値に届かないことによる減額改定は業績悪化改定事由に該当せず、第三者からの要望などといった外的要因による減額改定であれば、利益調整につながらないため認められるということです。
さらに『役員給与に関するQ&A』では、現状では数値的指標が悪化しているとまでは言えないものの、役員報酬の減額などの経営改善策を講じなければ、客観的な状況から今後著しく悪化することが不可避と認められる場合には、業績悪化改定事由に該当するとしています。
具体例として、売上の大半を占める得意先が1回目の不渡りを出し、数か月後には売上が激減することが避けられなくなった場合や、主力製品に瑕疵があることが判明して、今後、多額の損害賠償金やリコール費用の支出が避けられない場合を挙げています。
なお、業績悪化による減額後に支給額を元に戻すことは、仮に減額する期間を「○か月間」や「平成○年○月まで」とあらかじめ決めていたとしても「増額改定」に該当することになります。
したがって、元の支給額に戻す時期が「増額改定」の改定事由に該当しなければ定期同額給与には該当せず、増額改定後の金額のうち、改定前の金額を超える部分の金額が損金不算入となります。

(続く)

企業実務



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