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公開日:2016年2月22日

「ヒューマンエラーに克つ」組織・体制をつくれ 月刊「企業実務」 2016年3月号

田中 亨(国立研究開発法人産業技術総合研究所)


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「ヒューマンエラーをゼロにする」発想はかえって参事を招く

エラーの影響を最小限に抑える要因分析と対策

ミスを防ぎ、効率を上げる業務マニュアル整備のコツ


多くの会社では4月になると新入社員が入ってきます。
未経験者に仕事を任せることになりますが、それは職場にミス(=ヒューマンエラー)の要素を増やすことでもあります。
そこで、ミスやエラーに強い組織・体制をつくるための考え方と手段を考察します。


「ヒューマンエラーをゼロにする」発想はかえって参事を招く


ヒューマンエラーをゼロにすることは可能か?


ヒューマンエラー、つまり人間のミスは、事故の原因の過半数を占めています。これは、どの産業分野においても共通していえることであり、ヒューマンエラー対策はどの企業にとっても焦眉の急といえます。

しかし裏を返せば、ヒューマンエラーは簡単になくならないからこそ、いまだに主要な事故原因として残っているのです。

そもそも、人間はなぜ間違えるのでしょうか? それは、まったくの謎といってよいでしょう。

天下無敵の天才棋士といわれる羽生善治氏ですら、「一手頓死」という大きなミスをしたことがあります。何百手も先まで読めるトッププロなのに、たった一手先を読めず、負けてしまったのです。このような不可解な事例を説明できる心理学の理論は、いまだ存在しません。

「人間は誰でもミスをするし、それは仕方がないこと」と、考えるしかありません。

しかし、「ミスしないように、とにかく注意徹底を!」という昔ながらの精神論では、事態は好転しません。いくら注意深い作業員でも、うっかりミスを犯す確率はゼロにはならないからです。

ましてや最近は、業務フローが複雑化し、扱いにくいシステムが幅をきかせ、業務量の増大に反して人員が削られています。こうした現状で、「ヒューマンエラーをゼロにせよ」と号令をかけても、実効性はないでしょう。


「ミスゼロ目標」は有害であることの根拠


最近の安全工学では、「ミスゼロ目標」は有害である考えられるようになっています。その主な理由は次に述べる2つです。


【1】ミスゼロ信仰は隠蔽を招く

「ノーミスを○日間達成すれば表彰する」といった制度は昔からありますが、これがミスを防ぐ励みにならないばかりか、かえってミスの隠蔽を助長することにつながります。

たとえば、「今日もノーミスだったら、○日達成だ。いま、ちょっとしたトラブルが起きているが、これはたいしたことのないミスだから、報告しなくてよいのではないか?」と考えてしまうのが人情です。

明白な事故ならともかく、ちょっとした手違いは職場では頻繁に起こります。軽微で実害のないミスまで全部報告していたら、業務がはかどりません。

作業者は、「このトラブルは大事には至らないかもしれない」「仮に、大事になったとしても、自分のミスが発端であると特定されないかもしれない」という、甘い考えをもってミスを隠蔽してしまいがちです。

黙っておけば済むことに、わざわざ名乗り出るリスクを犯すことはないというわけです。

(続く)

企業実務



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