西祥範(財務・金融コンサルタント)
会社の成長・衰退に伴って、あるいは事業分野・経営環境の大きな変化が生じたときには、銀行(メインバンク)との取引を見直す必要に迫られることがある。どのように進めるべきか、そのポイントを解説する。
当たり前の話ですが、メインバンク=融資残高が一番大きな銀行、というのが一般的です。
では、メインバンクを企業サイドの目線で考えるとどうでしょうか。企業にとってメインバンクとは、前向き・後向きにかかわらず、必要なときに資金を貸してくれる銀行です。
業容が拡大し、設備投資を行なう、あるいは増加運転資金が必要になったときに融資をしてくれる。逆に業績が悪化してきたときに、必要な資金を供給し企業を支えてくれる銀行が該当します。
企業サイドからすると、必ずしも融資残高が一番である必要はありません。しかし、外部からみると、「融資残高トップ=メインバンク」とされます。そのためメインバンクの融資残高をトップにしておいたほうが自然だということになります。
それでは、メインバンクとは日頃からどのような付き合い方をすればよいのでしょうか。
2〜3か月に1度程度は接触をもつべきです。特に何か準備をする必要はなく、最近の業況の話だとか、世間話をするためでもよいでしょう。要は、気楽にいろいろと相談できる関係をつくっておくことです。
ここで気に留めておきたいことは、担当者だけではなく、課長クラスにも面会するということです。
一般の企業と同様に、銀行でも現場の実権者は課長クラスであることが多いようです。特に、担当者がまだ若く経験が少ないとき、少し頼りないと感じるときは、課長クラスとの接触が不可欠です。
銀行も組織であり、銀行員もサラリーマンです。上席者のほうがより大きな権限があり、大きな影響力をもっています。
そこで最低でも、年に1、2度は支店長と会う機会をもつべきです。銀行を訪問したときに支店長がいれば気軽に話ができる、逆に支店長が会社を訪問してくるような関係をつくり上げることが理想です。
決算書ができたときに、メインバンクだけは、こちらから銀行へ出向いて、支店長に会って決算報告をするようにしましょう。
決算の概要とともに新年度の計画等を話すことによって、会社に対する理解が深まります。
もちろん、どんな銀行でもメインバンクにできるわけではありません。最低限、次のような条件を満たしていることが求められます。
設立以来でなくても構いませんが、ある程度は取引が長い銀行でなくてはいけないでしょう。
最低でも5〜6年の取引歴が必要です。そして支店長や課長、担当者が代わっても、取引のスタンスにあまりブレのない銀行であることが求められます。
「新しい銀行と新規で取引を始めたときの支店長や担当者は超積極的で、どんどん貸出を行ない、気がつくと融資残高は一番大きくなっていたものの、次の支店長が来たとたんにスタンスが変わり、その後は消極的になった」というような話はよくあります。
そのような銀行は、融資残高は一番になってもメインバンクではないといえます。
保証協会付の借入ばかりではなく、プロパー融資中心の取引をしていることもポイントです。
保証協会の保証も以前の100%保証ではなく、制度改正で銀行も多少はリスクを負担するようになりましたが、銀行にとって保証協会付の貸出はリスクの低い貸出ということになります。
実際に融資の審査を行なっているのは保証協会で、銀行員は保証協会への書類の取次だけ、保証協会がOKならば銀行もOK、保証協会がダメならば銀行もダメという極端なケースもあります。
融資残高は一番大きくても、保証協会付の借入ばかりというのでは、メインバンクとはいえないでしょう。そのような銀行が、必要なときに相談に乗ってくれるとは思えません。
銀行からの借入はプロパーが中心で、一部保証協会付の借入もある、というのが正常な形です。
(続く)