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公開日:2021年8月25日

男性の育休取得を促進! 改正育児・介護休業法のあらましと職場環境の整え方 月刊「企業実務」 2021年9月号

佐佐木 由美子(グレース・パートナーズ社労士事務所/社会保険労務士)


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現行の育児休業制度と関連事項

改正育児・介護休業法の概要

育児休業中の社会保険料免除について

男性が育児休業を取得しやすい職場づくり


出産・育児等による労働者の離職を防ぎ、希望に応じて男女ともに育児等を両立できるようにするため、ことし6月9日に改正育児・介護休業法等が公布されました。
本稿では、育児休業に関する改正のあらましと、それに伴う職場環境の整備について解説します。

現行の育児休業制度と関連事項

育児休業期間について

まず、現行の育児休業制度について見ていきます。
育児休業は、子どもを養育することを目的として、原則として子どもが1歳まで、法律に定められた一定の延長事由に該当する場合は、最長で2歳に達するまで取得できます。
ただし、労使協定により、入社1年未満など一定要件の労働者については、育休取得を拒むことも可能です。
なお、延長事由に該当しない場合であっても、夫婦ともに育児休業を取得する場合に限り、子が1歳2か月になるまで延長することができる「パパ・ママ育休プラス制度」もあります。
また、育児休業は、特別な事情がない限り分割して取得することはできません。
男性に限っては、子どもの出生後8週間以内に取得した場合、特別な事情がなくても再度取得できる例外があり、これを「パパ休暇」と呼んでいます。

育児休業の申出について

育児休業を取得したい労働者は、休業開始日の1か月前までに申出をすることになっています。申出がこれより遅れた場合は、事業主が休業開始申出日の翌日から1か月以内の範囲で指定することができることとされています。
子が1歳以降の休業については、2週間前までに申し出ることになっています。
なお、育児休業の申出を撤回した場合、特別の事情がない限り、同一の子については再度申出をすることができないことに注意が必要です(1歳未満の子についての育児休業の申出を撤回した場合は、同一の子の1歳以降の育児休業を申し出ることは可能)。

育児休業中の社会保険料免除

育児・介護休業法による満3歳未満の子を養育するための育児休業期間について、健康保険・厚生年金保険の保険料は、被保険者が育児休業の期間中に、事業主が年金事務所等に申し出ることにより、被保険者・事業主の双方の負担が免除されます。

改正育児・介護休業法の概要

今回の改正は、主に男性の育児休業の取得を促進することをねらいとしています。改正は段階的に行なわれる予定で、施行時期の早い順から追って確認していきましょう(図表1)。

図表1 法改正の段階的施行図表1 法改正の段階的施行

育児休業を取得しやすい雇用環境整備等

育児休業の申出や取得を円滑にするための雇用環境の整備に関する措置が、事業主に義務付けられます。これは、研修や相談窓口の設置、また、今後示される厚生労働省令の措置を含めた複数の選択肢からいずれかを選択して実施することになります(図表2)。

図表2 雇用環境の整備及び雇用管理等に関する措置(改正育児・介護休業法)図表2 雇用環境の整備及び雇用管理等に関する措置(改正育児・介護休業法)

これまでは、研修といった環境整備に関する規定はありませんでした。環境整備に当たっては、短期はもとより1か月以上の長期の休業取得を希望する労働者が、希望する期間を取得できるよう事業主が配慮することを指針において示す予定になっています。
単にポスターの掲示などをするのみでは足りませんので、留意してください。
また、労働者または配偶者が妊娠・出産した旨の申出をしたときに、その労働者に対して育児休業制度を周知するとともに、取得意向を確認するための措置が義務付けられます。
現行では、個別に周知する努力義務はあるものの、あまり効果が見られません。男性の場合、6割以上が企業からの働きかけがなかったという調査結果(厚生労働省委託事業「平成30年度仕事と育児等の両立に関する実態把握のための調査研究事業報告書」三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社)もあります。
周知の方法は、面談での制度説明、書面等による制度の情報提供等の複数の選択肢からいずれかを選択する予定となっています。また、取得意向の確認については、育児休業の取得を控えさせるような形での周知および意向確認を認めないことが指針において示される予定です。
なお、こうした本人の意向確認によって育児休業の申出をしたことを理由として、解雇その他不利益な取扱いをしてはならないことが新たに規定されました。
この改正における施行日は、2022年4月1日となります。

有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和

契約社員等で働く人など有期雇用労働者の育児休業の取得については、現行では(1)当該事業主に引き続き雇用された期間が1年以上、(2)子が1歳6か月までの間に契約が満了することが明らかでないこと、の2つの要件があります。これが改正によって、(1)がなくなり、無期雇用労働者と同様の取扱いとなります。ただし、入社1年未満の労働者は、労使協定の締結により除外が可能となっていますので、この点をどうするか、労使協定の内容を改めて検討する必要はあるでしょう。
なお、有期雇用労働者に関する介護休業の申出についても、「当該事業主に引き続き雇用された期間が1年以上」の要件が廃止されます。
この改正における施行日は、2022年4月1日となります。

子の出生直後の時期における柔軟な枠組み(出生時育児休業)

男性の育休取得の促進を図るため、子どもの出生後8週間以内の期間に4週間(28日)まで取得することができる柔軟な育児休業の枠組みが創設されました。この期間中、2回まで分割して取得することが可能です。
たとえば、子どもの出産直後や退院時のタイミングで2週間取得し、里帰り出産などで実家から戻るタイミングにまた2週間取得する、といったことも可能となります(図表3)。

図表3 出生後8週間以内の育休取得例図表3 出生後8週間以内の育休取得例

なお、分割して取得する場合であっても、初めにまとめて申し出る必要があります。
有期雇用労働者の場合は、休業可能期間の終期から6か月を経過する日までに労働契約が満了することが明らかでない者に限り、申出をすることができます。
また、育児休業の申出は1か月前が原則ですが、子の出生後8週間以内については、期間を短縮して2週間前までの申出が可能となりました。ただし、職場環境の整備などについて、今回の制度見直しにより求められる義務を上回る取組み(図表4)の実施を労使協定で定めている場合は、1か月前までを申出の期限としてよいことになっています。

図表4 取組みの内容図表4 取組みの内容

さらに、子の出生後8週間以内の期間において、労使協定を締結している場合に労働者と事業主の個別合意により、事前に調整したうえで休業中に就業することが可能となります(図表5)。

図表5 休業中に就業する場合のフロー図表5 休業中に就業する場合のフロー

これは、労働者の意に反したものとならないように注意する必要がありますが、労働者が就業してもよい場合は会社にその条件を申出のうえ、その範囲内で候補日や時間をあらかじめ決めたうえで働いてもらえるようになります。
今後、厚生労働省令で具体的に就業可能日等の上限が定められますが、休業期間中の労働日・所定労働時間の半分となる見込みです。なお、休業開始前までは、任意のタイミングで同意を撤回することができます。
休業開始後も、配偶者の病気やそれに準ずる心身の状態の悪化等の特別な事情がある場合には、同意の撤回が可能とされています。
このとき、労働者にとって気になるのは、育休中の経済状況でしょう。育児休業中、一定要件に該当していれば、雇用保険から「育児休業給付金」が支給されます。現行では、予定していた就労の場合、育児休業と認められず育児休業給付も支給対象外となりますが、分割取得ができることに伴い、次のように見直されます。

(1) 被保険者が同一の子についてする育児休業は、厚生労働省令で定める場合に該当するものを除き、2回目までの育児休業を育児休業給付金の支給対象とする

(2) 被保険者が同一の子について2回以上の育児休業をした場合は、初回の育児休業を開始した日を基準として、みなし被保険者期間および休業開始時賃金日額を計算する

なお、出生時育児休業の新設に伴い、当該休業に対応した「出生時育児休業給付金」が育児休業給付に追加される予定です。
子の出生直後の時期における柔軟な枠組みについては、条文上は男性と限定していませんが、一般的に女性はこの時期産後休業中(就労できない期間)であるため、主として男性を意識した改正内容となっています。
この改正における施行日は、公布日から1年6か月以内の政令で定める日(2022年10月の予定)となります。

育児休業の分割取得

育児休業は、原則分割して取得することができませんでしたが、今回の改正により、前述した新制度(出生後8週間以内に4週間まで2回に分けて取得可能)とは別に、分割して2回まで育休取得が可能となります。
つまり男性の場合は、子が1歳になるまで、最大で4回に分割して取得できることになります。これにより、現行の「パパ休暇」はなくなります。
また、改正後は、1歳未満の育児休業の申出は、育児休業が2回まで可能であるところ、申出を撤回した場合であっても1回の育児休業をしたものとみなされます。1歳以降の育児休業については、特別の事情がない限り同一の子について再度申出はできません。
また、保育所に入所できないなどの理由で1歳以降に育児休業を延長する場合、現行では育休開始日は1歳(1歳から1歳半まで6か月間)と1歳半(1歳半から2歳までの6か月間)に限定されています。しかしそうすると、各期間の開始時点でないと夫婦交代ができず、実用的でない点が指摘されていました。
これが改正により、1歳以降の延長について開始日が柔軟化されることになり、各期間の途中でも夫婦で交代して取得できるようになります(図表6)。

図表6 育児休業の分割取得と1歳以降の育休開始日の柔軟化図表6 育児休業の分割取得と1歳以降の育休開始日の柔軟化

ところで、1歳以降の育児休業は、保育所に入所できない等の延長理由に該当する場合に限られます。しかし、従来からある「パパ・ママ育休プラス制度」を利用して夫婦で育児休業を取得すれば、延長理由にかかわらず、子が1歳2か月になるまで育児休業を取得することができます。ただし、親1人あたりの育児休業の取得可能日数は、最大1年間という点には変更がありません。
これらの改正における施行日は、公布後1年6か月以内の政令で定める日(2022年10月の予定)となります。

育児休業の取得状況の公表が義務化

従業員1,000人超の企業を対象に、育児休業の取得状況についての公表が義務付けられます。
具体的には、男性従業員の「育児休業等の取得率」または「育児休業等および育児目的休暇の取得率」を公表することを予定していますが、詳細は厚生労働省令で示される予定です。
これも男性の育休取得の促進を目的としており、毎年少なくとも1回以上の公表が義務付けられ、2023年4月1日以降から施行されます。
なお、今回の改正における付帯決議においては、育児休業取得期間についても公表を図る方策を検討することや、上場企業等については、有価証券報告書などの企業公表文書などへの育児休業取得率の記載を促すことなども盛り込まれています。

(続く)

企業実務



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