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公開日:2021年4月19日

中小企業に適応される 最近の法改正への実務対応を確認しよう! 月刊「企業実務」 2021年5月号

毎熊 典子(毎熊社会保険労務士事務所/特定社会保険労務士・上級リスクコンサルタント)


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ことし施工の改正法と実務対応のポイント

来年以降に施行される改正法と実務対応のポイント


働き方改革の流れを受けて、労働関係法令の改正が相次いでいます。
企業としては、改正法の内容を理解したうえで、漏れがないよう対応する必要があります。
令和3年以降の重要な法改正の概要および対応ポイントを解説します。


ことし施工の改正法と実務対応のポイント

令和3年に施行される労働関係法令の改正に係る重要事項には、主に次のものが挙げられます。


子の看護休暇・介護休暇の時間単位の取得

(1) 改正の概要
育児・介護休業法(「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」)は、規模や業種を問わず、すべての企業に適用されます。
そして、企業は、育児や介護を行ないながら働く労働者の育児・介護休業、子の看護休暇・介護休暇、時間外労働の制限、深夜業の制限、所定外労働の制限、短時間勤務制度について、就業規則に定めておく必要があります。
育児・介護休業法の改正により、令和3年1月1日以降、子の看護休暇や介護休暇(以下、「子の看護休暇等」)を時間単位で取得できるようになりました。
子の看護休暇等については、改正前は、1日単位または半日単位での取得しか認められておらず、また、1日の所定労働時間が4時間以下の労働者は、半日単位での取得ができませんでしたが、改正により、すべての労働者が時間単位で子の看護休暇等を取得することができるようになりました。
なお、今回の改正では取得単位が変わるだけであり、子の看護休暇等を取得した際の賃金を無給とすることは問題ありません。しかし、時間単位で利用できる有給の子の看護休暇制度や介護休暇制度を導入し、労働者が休暇を取得するなどの一定の要件を満たせば、両立支援等助成金を受給することができます。職場環境整備の一環として、この機会に、子の看護休暇等を有給の休暇制度にすることを検討してもよいでしょう。

(2) 就業規則見直しのポイント
子の看護休暇等の最小単位を「半日」から「時間」に変更することが必要となります。
改正法で求められているのは、いわゆる「中抜け」なしの時間単位休暇であるため、図表1のように、始業時刻から連続または終業時刻まで連続して取得できる旨を定めることで足ります。

図表1 改正育児・介護休業法に係る規定例図表1 改正育児・介護休業法に係る規定例

ただし、すでに「中抜け」ありの時間単位休暇制度を導入している企業が、「中抜け」なしに変更することは、 不利益な労働条件の変更に当たります。
なお、子の看護休暇等は、1年間で5日(対象となる子が2人以上の場合は1年間で10日)を限度として取得できますが、年次有給休暇とは異なり、未取得分の翌年への繰り越しはありません。就業規則に特段の定めがない場合、「1年間」は、4月1日から翌年3月31日までとなります。年次有給休暇を一斉に付与する制度を導入している企業では、年次有給休暇と子の看護休暇等の期間を合わせておくと管理がしやすいでしょう。


障害者の法定雇用率の引上げ
障害者雇用促進法(「障害者の雇用の促進等に関する法律」)は、すべての事業主に法定雇用率以上の割合で障害者を雇用することを義務付けています(障害者雇用率制度)。
令和3年3月1日以降、民間企業の障害者の法定雇用率は、従来の2.2%から2.3%へと引き上げられています。
それに伴い、対象となる事業主の範囲も、常時雇用する労働者数が45.5人以上から43.5人以上へと広がりました。
対象となる企業は、毎年6月1日時点における障害者の雇用状況をハローワークに報告しなければなりません。また、障害者の雇用の促進と継続を図るため、「障害者雇用推進者」を選任することが努力義務とされています。
法定雇用率未達成の常用労働者101人以上の企業は、「障害者雇用納付金」制度により、障害者雇用納付金(不足1人当たり月額5万円)を徴収されます。
他方、法定雇用率達成企業には、調整金や報奨金が支給されるとともに、障害者の雇用の促進等を図るための各種の助成金が支給されます。


同一労働同一賃金の中小企業への適用

(1) 同一労働同一賃金の概要
令和2年4月1日にパートタイム・有期雇用労働法(「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」)と労働者派遣法(「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」)の改正法が施行され、同一労働同一賃金がスタートしました。施行当初は、大企業のみが適用対象とされていましたが、令和3年4月1日以降は、中小企業についても同一労働同一賃金が適用されます。
同一労働同一賃金のポイントは、(1)不合理な待遇差の禁止、(2)労働者に対する待遇に関する説明義務の強化、(3)行政による事業主への助言・指導等や裁判外紛争解決手続(行政ADR)の整備、の3つです。
不合理な待遇差の禁止では、同一企業内において、正規労働者と非正規労働者(パートタイム労働者、有期雇用労働者、派遣労働者)との間で、基本給や賞与のほか、福利厚生を含むあらゆる待遇について、不合理な待遇差を設けることが禁止されます(図表2)。

図表2 不合理な待遇差の禁止図表2 不合理な待遇差の禁止

また、派遣労働者については、次のいずれかを確保することが義務付けられます(図表3)。

図表3 派遣労働者に対する均等・均衡待遇の確保図表3 派遣労働者に対する均等・均衡待遇の確保

(a) 派遣先の労働者との均等・均衡待遇
(b) 同種の業務に従事する一般労働者の平均的な賃金と比べ、派遣労働者の賃金が同等以上であることなどの一定の要件を満たす労使協定による待遇
そして、説明義務の強化により、非正規労働者は、正規社員との待遇差の内容や理由について、事業主に説明を求めることができ、事業主は、非正規労働者から求めがあった場合、説明しなければなりません(図表4)。

図表4 待遇に関する説明義務図表4 待遇に関する説明義務

さらに、「均等待遇」や「待遇差の内容・理由に関する説明」に関する事項については、都道府県労働局において行なわれる「あっせん」などの無料の裁判外紛争解決手続(ADR)を利用することができます。

(2) 同一労働同一賃金ガイドライン
厚生労働省の「同一労働同一賃金ガイドライン」(「短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針」)では、基本給、賞与、役職手当や通勤手当を含む各種手当のみならず、教育訓練や福利厚生等について、いかなる待遇差が不合理なものであり、いかなる待遇差が不合理なものでないか、原則となる考え方や具体例が示されています。
同一労働同一賃金ガイドラインでは、「正社員とパートタイム労働者・有期雇用労働者の賃金の決定基準・ルールに違いがあるときは、『将来の役割期待が異なるため』という主観的・抽象的説明では足りず、賃金の決定基準・ルールの違いについて、職務内容、職務内容・配置の変更範囲、その他の事情の客観的・具体的な実態に照らして、不合理なものであってはならない」としています。
なお、厚生労働省の「働き方改革特設サイト」では、同一労働同一賃金に関する動画や、「同一労働同一賃金取組手順書」等を公開しているので、賃金制度等の見直しの参考にするとよいでしょう。


70歳までの就業機会の確保

(1) 改正の概要
高年齢者雇用安定法(「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」)の改正により、令和3年4月1日以降、70歳までの高年齢者就業確保措置を講じることが企業の努力義務となりました。
これまで、高年齢者雇用安定法では、60歳未満の定年を禁止し、65歳までの雇用確保措置として、(1)65歳までの定年引上げ、(2)定年制の廃止、(3)65歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度等)の導入のいずれかの措置を講じることを企業に義務付けていました。
今回の改正では、70歳までの就業機会を確保するため、従来の65歳までの雇用確保義務に加えて、定年を65歳以上70歳未満に定めている事業主および65歳までの継続雇用制度(70歳以上まで引き続き雇用する制度を除く)を導入している事業主を対象として、高年齢者就業確保措置として、図表5のいずれかの措置を講じることが努力義務となりました。

図表5 高年齢者就業確保措置図表5 高年齢者就業確保措置

(2) 就業規則見直しのポイント
70歳までの就業機会の確保については、今回の改正では努力義務とされていますが、将来的に70歳定年が義務化されることも考えられます。
厚生労働省の令和2年「高年齢者の雇用状況」によると、66歳以上まで働ける制度のある企業は、5万4802社と、全体の33.4%を占めており、前年比2.6ポイント増となっています。生産年齢人口が減少し続けるなか、企業としては、安定的な雇用を希望する労働者が働きやすい環境の整備や、将来的に企業に求められる対応を見据え、70歳までの継続雇用制度や創業支援等措置(図表5の(4)・(5))の導入を検討することが考えられます。
これらの制度を導入するにあたり、適用対象者に基準を設ける場合について、ガイドライン(令和2年厚生労働省告示351号)では、「労使で十分に協議のうえ、各企業等の実情に応じて定められることを想定しており、内容は原則として労使に委ねられる」としています。また、厚生労働省の「高年齢者雇用安定法Q&A」では、対象者を限定する基準について、次の点に留意して策定されたものが望ましいとしています。
(a) 意欲、能力等をできる限り具体的に測るものであること(具体性)……労働者自ら基準に適合するか否かを一定程度予見することができ、到達していない労働者に対して能力開発等を促すことができるような具体性を有するものであること
(b) 必要とされる能力等が客観的に示されており、該当可能性を予見することができるものであること(客観性)……企業や上司等の主観的な選択ではなく、基準に該当するか否かを労働者が客観的に予見可能で、該当の有無について紛争を招くことのないよう配慮されたものであること(図表6

図表6 改正高年齢者雇用安定法に係る規定例図表6 改正高年齢者雇用安定法に係る規定例

「会社が必要と認めた者に限る」や「上司の推薦がある者に限る」などの基準は不適切とされています。また、「男性(女性)に限る」は男女差別に、「組合活動に従事していない者」は不当労働行為に該当するとしています。
創業支援等措置を導入する場合は、実施に関する計画を作成したうえで、過半数労働組合(労働者の過半数で組織する労働組合がない場合には労働者の過半数を代表する者)の同意を得る必要があります。
なお、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構では、65歳超雇用推進プランナーの派遣などにより、高年齢者の雇用に関する無料の相談・援助を行なっています。


中途採用比率の公表義務

労働施策総合推進法(「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」)の改正により、令和3年4月1日から、常時雇用する労働者数が301人以上の企業について、正規雇用労働者の中途採用比率を公表することが義務化されました(図表7)。

図表7 ことし施工の主な改正一覧図表7 ことし施工の主な改正一覧

具体的には、雇用契約の形態を問わず、
(1) 期間の定めなく雇用される者
(2) 過去1年以上の期間について引き続き雇用されている者または雇入れから1年以上引き続き雇用されると見込まれる者
のいずれかを満たす労働者が301人以上の企業は、求職者が容易に閲覧できる方法により、直近3事業年度の各年度について、採用した正規雇用労働者の中途採用比率を公表しなければなりません。公表は、年に1回、公表した日を明らかにして、インターネットの利用やその他の方法によって行ないます。
中途採用者比率の公表は、労働者の主体的なキャリア形成による職業生活のさらなる充実や再チャレンジが可能となるよう、中途採用に関する環境整備を推進することを目的とするものです。
中途採用に関しては、厚生労働省による「中途採用等支援助成金(中途採用拡大コース)」があり、中途採用の雇用管理制度を整備し、中途採用の拡大を図った企業に助成金が交付されます。
さらに、当該制度で定められる「生産性要件」を満たした場合は、追加の助成も行なわれます。
新型コロナウイルス感染症の影響を受けて新卒採用を見送った企業などで活用の機会があるものと思われます。

(続く)

企業実務



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