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公開日:2021年1月20日

コロナに対応!今期の決算業務を円滑に進めるための準備と段取り 月刊「企業実務」 2021年2月号

田中 康雄(税理士法人メディア・エス 税理士)


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決算業務を効率化するための準備と段取り

今期の決算はここに注目

コロナ禍への対策とは


3月決算法人では、決算業務を始める時期です。作業をスムーズに進めるための準備と段取りについて解説します。
今期は特に新型コロナウイルス感染症の影響が大きいことから、そのための対策についても紹介します。
(本稿は1月7日時点の情報をもとにしています)


決算業務を効率化するための準備と段取り

決算業務は、日常業務と並行しながら税務申告に必要な申告書類等(図表1)を作成し、申告期限までに税務署等に提出する必要があります。

図表1 法人の決算に係る申告書類等の例図表1 法人の決算に係る申告書類等の例

特にコロナ禍において決算業務をスムーズに進めるためには、事前に準備すべきことを確認しておくことが重要です。

月次処理の再チェック

月次処理を実地している法人でも、決算整理を進めるなかで、これまで処理してきた仕訳に誤りなどが見つかる場合があります。たとえば、消費税コードの入力ミスや、月次処理の段階では解決しきれなかったものが仮払金や仮受金などの仮勘定に残ったままになっているようなケースです。
また、費用計上された項目についても総勘定元帳をベースに改めて見直しをしておくことも大切です。たとえば、租税公課には損金算入できない延滞税や加算税、交通違反等の罰科金などが含まれている場合があるため、申告書の作成に先立ち、これらをリストアップしておきましょう。
そのほか、消耗品費や事務用品費等のなかに1単位当たり10万円を超えるものが計上されていないか、交際費に個人使用と疑われるようなものが含まれていないか、雑費で処理したもののなかに寄附金や交際費など他の勘定科目に振り替えたほうがよいものがないかなどの検討を進めていきます。
決算業務が進んでいくなかで思わぬ修正項目が発見されると、確定しかけた決算もやり直しになってしまいます。また、何度も修正が繰り返されると、申告書に添付する書類間で不整合が生じることにもなりかねません。
決算業務に取り掛かる前に一度、月次処理を全体的に見直しておきましょう。

固定資産台帳への登録

決算整理仕訳の代表的なものの1つとして、減価償却費の計上があります。実務上、減価償却費の計算は固定資産台帳により行なわれていることがほとんどでしょう。
そのため、新規に取得した固定資産は新たに固定資産台帳に登録しますが、これを決算業務のなかでまとめて行なおうとすると、具体的な資産名や事業供用日を登録する際、改めて請求書や納品書等を確認し直す必要があります。また、耐用年数の決定においても判断に迷うケースがあるなど、登録する固定資産が多くなるほど、時間を浪費してしまうことになりかねません。
また、固定資産台帳には、新規取得分の登録のほか、除却や売却した固定資産についても、その除却日等の情報を登録する必要があります。
新たに取得した固定資産については、月次処理のなかや決算前のなるべく早い段階で固定資産台帳への登録を行ない、また、除却や売却などによって減少した資産については、その存否の確認も兼ね、決算前には一度、固定資産台帳に目を通しておくとよいでしょう。

長期滞留債権の状況の確認

長期にわたり滞留している売掛金などの金銭債権の回収不能が確実となったときは、その貸倒れとなった日の属する事業年度に損金算入することになります。
貸倒れ処理のタイミングは消費税の申告においても同じになりますが、原則として、その事実等が生じた事業年度において処理されなければなりません。
通常、長期滞留債権に対する債務者とは容易に連絡を取ることができず、貸倒れとすべき事実等の確認が困難な状況にある場合が多いものの、決算業務の一環として金銭債権を整理するなかでその滞留化が判明することもあります。
貸倒損失として損金算入するタイミングを逸しないためにも、決算業務に当たる前に、気になる得意先の業績状況などを営業担当者に聞き取りしておきましょう。

実地棚卸に向けた手順の確認

事業年度の最終日に実施される実地棚卸は、在庫となった製品や商品の状況を確認するためにも決算業務上不可欠な手続きです。
また、実地棚卸高が販売管理システム上の帳簿棚卸高と大きく乖離してしまった場合には、その原因を追究する必要がありますが、その多くは、移送中のものや滞留在庫のカウント漏れ、棚卸実施中の倉庫内での在庫の移動などが要因となるため、実地棚卸に向けた手順を事前に確認しておくことが重要です。
コロナ禍においては、本来営業用に配布するつもりだった見本品やカタログ等が手つかずのまま残っていることもあるかもしれません。これらは貯蔵品として損金算入できないため、商品や製品の在庫だけではなく、貯蔵品に該当する可能性があるものについても、事前に洗い出しておきましょう。

経過勘定項目の有無
毎月定期的にほぼ同額で発生する家賃や社会保険料などは、月次処理の段階で前払費用や未払費用などの経過勘定によって処理されることが多いかもしれません。
しかし、保険料や水道光熱費、クレジットカードの引落しなどは、月次決算のスピード化のため期中では支払いベースで処理されることが多く、これらが経過勘定として処理されるのは決算整理の段階になります。
経過勘定項目に関しては、通常金額が確定するまで時間を要する場合が多く、また決算間際になって計上すべきことが発覚する場合もあるため、なるべく早く金額を確定できるように資料入手のための段取りをつけておきましょう。

勘定科目内訳明細書の作成準備

法人税の申告書に添付する書類の1つに「勘定科目内訳明細書」(以下、「内訳書」といいます)があります。内訳書には、主に事業年度終了時点の貸借対照表の内訳残高を記載していきます。内訳書のなかには一定の金額以下のものは一括して記載できるものもありますが、たとえ取引先ごとの金額を内訳書に反映する必要がなくても、必ず別の書類等で詳細に把握しておくことが、正確な決算書を作成するうえでは必須です。
預貯金や借入金、有価証券などについては、金融機関等の残高証明書により正確な残高や数量が把握できます。また、得意先や仕入先に対する個別の未収・未払残高は販売管理システム等から抽出できますが、期中での地道な消し込み作業が決算業務の負担を軽減することにつながります。
そのほか、退職金の備えに積み立てている保険金等についても、その残高を確認できる書類を事業年度終了後すぐに保険会社等から入手できるよう手配しておくなど、特に貸借対照表に表示される各勘定科目の正確な残高を確定できるように準備しておきましょう。

法人税申告書の各種別表の準備

未払法人税等の計上は、決算業務では最終段階となりますが、税金計算のための法人税の申告書のなかには事業年度が終了する前でも作成しておけるものがあります。
たとえば、別表五(二)では、前期に確定した未払法人税等と期中で納付した法人税等の中間納付額の動きを会計上の動きから反映させていきますが、決算直前では納付が完了しているため、会計上の処理に沿って準備できます。
また、源泉徴収された利子源泉税や配当源泉税に対し税額控除を選択する場合の別表六(一)や、受取配当金の益金不算入を適用する場合の別表八(一)なども、決算間際で大きく変動する部分ではないため、総勘定元帳をベースに準備することができるでしょう。
そのほか、外国税額控除の適用を受けるような場合には、国外所得金額の計算等のほか、源泉徴収された際の外国税額の書類を海外事業部等から取り寄せる必要があるため、決算業務の効率化のためにも、社内の各部署間で連携して資料収集のための体制を構築しておく必要があるでしょう。

優遇税制等の適用の可否の判断

法人税法上の特別控除のほか、租税特別措置法においても優遇措置として税額控除や特別償却が規定されています。これらを適用するには、一定の要件が設けられているため、適用の可否の判断は期中に行ない、申告のための添付書類や根拠資料等は事前に準備しておく必要があります。
そのほか、たとえば、中小企業向けの所得拡大促進税制は、今般のコロナ禍において適用できる会社は少なくなるかもしれません。
しかし、今期の「雇用者給与等支給額」は、来期の「比較雇用者給与等支給額」になるため、今期では適用できなくても、集計さえしておけば、来期の決算業務の負担軽減につながるようなものもあります。
このように、来期の決算業務の効率化を見据えて今期の決算業務を進めることも重要です。

(続く)

企業実務



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