N.J. HIGH-TEC - NJ Business Online

経理・税務 | エヌ・ジェイ出版販売株式会社


【お知らせ】 実践「経営実学大全」 好評発売中です

Home経理・税務企業実務・特別記事 ≫ 冬場に向けて備えたい 職場での新型コロナウイルス感染防止対策...
公開日:2020年10月19日

冬場に向けて備えたい 職場での新型コロナウイルス感染防止対策 月刊「企業実務」 2020年11月号

森本 英樹(森本産業医事務所 医師・医学博士)/本山 恭子(本山社会保険労務士事務所 特定社会保険労務士・公認心理師)/脊尾 大雅(秋葉原社会保険労務士事務所 社会保険労務士・精神保健福祉士)


このエントリーをはてなブックマークに追加  

新型コロナウイルスについて知っておきたいこと

企業が行なうべき感染防止対策

感染防止策としてのテレワーク

状況別に求められる企業の対応


新型コロナウイルスの流行はいまだ収まらず、空気が乾燥する冬場に向けて、さらなる拡大防止に努める必要があります。
職場でどのような対応が必要となるか、様々な状況に対応した感染予防対策について解説します。

※本稿は、10月7日時点の情報に基づいています。


新型コロナウイルスについて知っておきたいこと

新型コロナウイルス感染症の対策を、「どこまですべきか」「不足しているところはないか」など、担当者の悩みはつきません。
感染拡大防止対策は、健康管理と人事労務管理の両面から進める必要があります。

新型コロナウイルス発生からこれまでの経過

昨年12月に中国武漢で肺炎が発生し、瞬く間に全世界へと広がりました。
日本では4月7日に緊急事態宣言が発出され、新規検査陽性者数は4月10日の708件/日をピークに減少局面に入りました。しかし6月下旬より再度感染者数が徐々に増大し、その後は8月上旬をピークに減少しています。
今後の流行は専門家の間でも見解が分かれますが、免疫保有者が一定割合に達するまでは、何度か波がくる可能性が高いと考えられます。特に、冬場はインフルエンザなど他の発熱を伴う病気が増加することから、発熱者の対応のため職場や医療現場で混乱をきたす可能性があります。
そのため、職場の感染拡大防止対策を進め、万が一感染者数が増加した場合でも事業が継続できる環境を整える必要があります。

新型コロナウイルス感染症の概要

コロナウイルスの潜伏期は、1~14日(ピークは5~6日)とされています。
感染経路は主に飛沫感染(感染者のくしゃみや会話によって発生する飛沫とともにウイルスが放出され、他の人の口や鼻・眼などから感染)と、接触感染(感染者の手にウイルスがつき、握手や周りの物経由で他の人の手にウイルスが付着。その後、手で眼や口を触ることで感染)があります。
状況によってはエアロゾル感染(飛沫よりも微細な粒子が空気中に長時間ただよい、それを吸入することで感染する)の可能性もあると言われています。ただし、エアロゾル感染の頻度は低く、換気をすることでそのリスクを低くできると考えられます。
このウイルス対策の困難な点として、発症する前から感染力を持ち、発症する2日前から発症後10日間程度が人にうつす可能性(ピークは発症2日前から発症直後)があります。また、若年層を中心に感染しても症状がまったく出ない人がいます(無症候性病原体保有者)。
そのため、不調になったときにほかの人への接触を最小限にするだけでは感染拡大防止策としては十分とは言えません。
つまり、「自身も周りの人も不調でなくても、すでに感染しているかもしれない。そのため、無症状でも感染拡大防止策をとる」といった考え方が重要です。
症状として、当初は風邪症状(発熱、全身倦怠感、息切れ、咳、関節痛、食欲不振、頭痛、下痢、味覚・嗅覚低下など)をきたします。そのため発症初期の症状では、普通の風邪やインフルエンザと見分けがつきません。
発症した80%の人は風邪症状を引き起こすだけで数日~1週間程度で治癒しますが、残りの人は入院して、人工呼吸器なども必要となります。
高齢者(65歳以上)や持病をもつ人は、重症・死亡につながりやすいとされています。具体的には肥満、高血圧、糖尿病、心臓病、慢性の呼吸器疾患や腎臓病が該当し、喫煙者や悪性疾患を持つ人なども要注意とされています。
現在、コロナウイルス感染症に対する治療・ワクチンは試行錯誤が続いています。ワクチンは早ければ2020年内にも承認されるとの報道がありますが確定していません。
コロナウイルス感染症の検査は、PCR検査・抗原検査・抗体検査など複数の検査があります。信頼性が最も高いPCR検査であっても見落としが多い(3~4割は感染者でも陰性と出てしまう)検査です。自費で検査を受けることができる医療機関はありますが、本当に検査を受ける意義があるのかを事前に検討することが必要です。


企業が行なうべき感染防止対策

感染防止対策の考え方の基本

企業でコロナウイルス感染症の従業員を発生させない、もしくは発生させたとしても複数の感染者を発生させない確実な対策は、全員を在宅勤務させることです。
しかし、小売業では対面での接客が原則ですし、製造業では従業員が集まらないと製造できませんので、全員が在宅勤務を行なう対策は、現実的ではありません。
そのため、感染拡大リスクを抑えつつ、事業活動を推進するというトレードオフの関係をどう両立させるかが重要となります。

職場における集団感染事例

まずは、職場における集団感染事例を厚生労働省の資料から紹介します。

【事例1】会議で感染拡大
会議を通じて感染が拡大した事例です。会議の後に体調不良になった従業員がコロナウイルス感染症と診断。その後6名の参加者に感染が拡大しました。
無症状の人から感染が広がったと考えられています。体調不良者が出社しない対策は必須ですが、それだけでは十分ではありません。
会話が感染拡大の要因となりやすいので、ウェブ会議を推奨しつつ、対面で会議を行なう場合には換気の徹底・相手と距離をとる・マスクを着用するといった対策が必要です。

【事例2】オフィスで感染拡大
マスクの着用が少なく、席が密接し、換気や消毒が不十分であったことが要因とされています。

【事例3】共有スペースで感染拡大
休憩スペースや更衣室、食堂といった共有スペースで感染が拡大した事例です。
共有スペースではマスクを外した状態で会話を行なうことが多く、換気不良になりやすいため注意が必要です。

【事例4】社外で感染拡大
宿泊を伴う研修などで、複数の労働者に感染が拡大しました。
車で移動したことや3密があったことが原因として推察されています。

【事例5】勤務時間外に感染拡大
職場で開催された懇親会が要因となりました。
飲食はマスクの着用がないまま談笑が続くため、感染拡大の大きなリスクになります。

感染拡大防止対策の行政通達

具体的な新型コロナウイルス感染拡大防止対策の考え方の基礎となるのが「職場における新型コロナウイルス感染症への感染予防、健康管理の強化について」(2020年8月7日)です。ここには、図表1の5項目が掲載されています。

図表1 感染予防・健康管理の強化のための5項目図表1 感染予防・健康管理の強化のための5項目

この通知には、企業が主体的に正確な情報を確保し、労働者の協力を得ながら感染拡大防止に取り組む必要があること、その一助として助成金や接触確認アプリなどを活用してほしいことが示されています。

感染拡大防止のためのチェックリスト

感染拡大防止対策は多岐にわたるため、具体的な対応策を検討する際には「職場における新型コロナウイルス感染症への感染予防、健康管理の強化について」のなかにある「職場における新型コロナウイルス感染症の拡大を防止するためのチェックリスト」を参考にするとよいでしょう。
チェックリストは、職場での対策の実施状況を労使で確認することを目的として作成されています。
また、衛生委員会を設置する50人以上の事業場では、労使で審議することを念頭においています。
感染症対策をどこまでやれば許容されるのかというのは、企業規模や地域の流行状況などに左右されるので明確にすることは困難ですが、チェックリストにある「感染防止のための3つの基本」の
(1) 身体的距離の確保
(2) マスクの着用
(3) 手洗い
や、「不調者を出社させないこと」「労働者の感染者が発生した時に適切に対応すること」を確実に励行するように会社の体制を整えつつ、テレワークによる出社率の低減、消毒、換気、休憩スペース等の整備などが求められます。

チェックリストは、6項目に分かれています。
平常時の対策としては、
(1) 体制づくり
(2) 基本的な対策
(3) 具体的な対策
(4) 配慮が必要な労働者への対応
の4つがあり、図表2のような対策例があげられています。

図表2 感染症拡大防止のために平常時行なう対策図表2 感染症拡大防止のために平常時行なう対策

また、発生時の対応としては、
(5) 陽性者や濃厚接触者が出た場合等の対応
があります。(6)は熱中症予防に関する内容なので、割愛します。
チェックリストは「はい/いいえ」の記載になっていますが、社員食堂に対する記載などもあるので該当なしもあり得ます。高層階のオフィスでは、窓を開放しての換気が不可能な場合もあります。
すべて「はい」でないと対策に不備があると考えるより、できることから始めていくという意識で取り組むのがよいでしょう。
なお、実施のポイントとして、マスク非着用での会話は感染のリスクが高いので、食事をする環境や更衣室、懇親会への対策は慎重に行なうべきです。特に会議ではマスクの着用を徹底させることが重要となります。
陽性者や濃厚接触者が出た場合の対応は本誌22ページで解説します。

業種ごとの対策

オフィス事務や製造業など、各業界団体が作成した業種別ガイドラインが多数発行されています。自社が関連するガイドラインに目を通しておき、定期的に更新されていないかを確認するようにしましょう。

チェックリストに記載されていない留意点

【1】 インフルエンザの予防接種
冬になると、インフルエンザも発生する可能性があります。極力、予防接種を実施するように従業員に推奨しましょう。

【2】 マスク以外の防御策
マウスシールドの効果は不明瞭です。マスクより着用効果が落ちるため、マウスシールドは皮膚過敏などマスク着用が困難な人にのみ許容されるものでしょう。
また、首下げ型や設置型の環境除菌グッズは、効果が不明瞭なうえに有害事象も発生するケースがあり、使用は推奨できません。


感染予防対策としてのテレワーク

テレワークの導入と実施する際の課題

今回の新型コロナウイルスの影響で、私たちの働き方は大きく変化しました。
総務省が行なった「平成27年通信利用動向調査」ではテレワークの導入企業は16.2%でしたが、ことし内閣府が行なった「新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」では、「テレワーク(ほぼ100%)」導入10.5%、「テレワーク中心(50%以上)」11.0%、「定期的にテレワーク(出勤中心:50%)」6.9%、「基本的に出勤(不定期にテレワーク)」6.1%という結果になりました。
同調査ではテレワーク経験者は、ワークライフバランス、地方移住、仕事に関する意識が変化した割合が高いという傾向もあり、図らずとも多様な働き方が促進されたと言えます。
しかし、課題も残っています。たとえば、「安全配慮義務は履行できるのか」という視点です。

(続く)

企業実務



このエントリーをはてなブックマークに追加  



PAGE TOP