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公開日:2020年7月21日

取引先の倒産に備えるための 危機管理のポイントとは 月刊「企業実務」 2020年8月号

米津 晋次(よねづ税理士事務所 税理士)


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景気は急激に悪化している

自社の資金繰りをよくするには

連鎖倒産を防ぐための対策とは


新型コロナウイルスの影響で厳しい経営環境が続いており、今後も見通しは明るくありません。
中小企業としては、自社の資金繰りを点検するとともに、他社の倒産に巻き込まれないようにすることも肝要です。
そこで、取引先の倒産等に備える対策について解説します。


景気は急激に悪化している

経済指標にみられる景気悪化の状況

(1)景気動向指数
ことし7月7日に内閣府から公表された5月分の景気動向指数(速報)によると、景気の現状を示す一致指数が4月と比較して5.5ポイント低下の74.6となり、4か月連続での下降となりました。
この下落幅は、統計を開始した1985年1月以降過去最大を記録した4月に引き続き、大きな数字となっています。新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言の発令や、外出自粛により企業活動が抑制されたことが響いたようです。
このため、指数の動きから機械的に導かれる景気の現状の基調判断は、10か月連続で「悪化」(景気後退の可能性が高いことを示す)となっています。
また、数か月先の動向を示す先行指数は、79.3となり、過去最大の下落幅を更新し11年1か月ぶりの低水準となった4月と比較して1.6ポイント上昇したものの、依然として低い数値となっています。

(2)企業倒産件数
次に、企業の倒産件数ですが、帝国データバンクによると、ことし5月の全国企業倒産件数は288件と意外にもリーマンショックを含む2000年以降最少になっています。東京商工リサーチの発表でも、5月の企業倒産件数は314件と、こちらも1964年6月の295件に次ぐ56年ぶりの記録的な低水準となりました。
この数字だけから見れば、新型コロナウイルス危機の大きさの割には、企業倒産件数がかなり少ないように感じられます。
しかし、これらだけで判断することはできません。政府や自治体の資金繰り支援や手形の不渡り猶予などの支援策があり、経済活動を休止していた企業・店舗の再開や廃業、倒産の判断が先送りされたこと、倒産などの法的手続きをする裁判所の業務縮小などが数値を減少させたとみられます。
一方、帝国データバンクによって7月10日16時までに新型コロナウイルス関連倒産が332件に達したことが確認されました。50件ごとの推移では、51件目以降に加速し、以後、50件の確認に要する日数は平均16日(月約100件ペース)となっていて勢いは衰えていません。帝国データバンクは、ことしの倒産(負債1000万円以上、法的整理)件数が、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で7年ぶりに1万件を超すとの見通しを明らかにしています。
そもそも、実質的には倒産ながら、廃業として処理することで倒産件数に数えられない件数が非常に多い現状があります。
2019年は倒産約8400件に対して休廃業・解散件数はその5倍の約4万3000件に達していたとの集計もあります。したがって、「倒産件数」だけでは、景気の悪化状況を把握することが困難になっています。

(3)失業率と失業者数
総務省がことし6月30日に発表した5月の労働力調査によると、完全失業率は4月比0.3ポイント上昇の2.9%となりました。2017年12月以来の高水準となっています。
完全失業者数は、198万人で前年5月と比較して33万人の増加、ことし4月と比較して9万人の増加で4か月連続の増加になっているだけでなく、増え方も大きくなっています。
新型コロナウイルス感染症の影響で宿泊・飲食・サービス業を中心に失業者が増えただけでなく、就業者としてカウントされる仕事を持ちながらも仕事をしていない「休業者」数が5月に423万人となり、前年5月と比較して2.8倍に急増しています。
今回の新型コロナウイルスの感染拡大は、地域、業種、規模などを問わず、数多くの企業に影響をおよぼすことが予想されます。
とくに「衣・食・泊」の業種では、すでに甚大な被害を受けているうえに、新型コロナウイルス感染症がある程度収束したとしても売上が100%元に戻ることは難しいでしょう。


自社の資金繰りをよくするには

売上を増やせば利益が増え、その結果資金も増える、と単純に考えている中小企業経営者も多いかもしれません。しかし、それは間違いで、いわゆる「黒字倒産」のようなケースもあります。
たとえば、仕入代金や外注費などを支払うまでの期間である「支払サイト」より売上代金が入金になるまでの期間である「回収サイト」が長いと、売上が増えるほど資金は不足しやすくなります。
在庫を持つ業種であれば、さらに資金不足になりやすいでしょう。

資金繰りをよくするには

(1)回収サイトを短く、支払サイトを長く
回収サイトと支払サイトは、資金繰りに大きな影響を与えます。
回収サイトより支払サイトが長ければ資金に余裕が出ますが、逆に回収サイトが支払サイトよりも長いと、資金に負担がかかります。
たとえば、小売業や飲食業は、回収サイトは長くてもカード決済の1か月以内で、現金の売上も多いはずです。
それに対して、仕入れの支払サイトは、掛け仕入れであれば、1か月以上が多くなります。そのため、資金繰りでは余裕を持ちやすくなります。
一方で、完成まで時間がかかる建設業や製造業の場合、回収サイトは長くなりがちです。半年ということも珍しくありません。それに対して、材料や外注費の支払サイトは、1か月から2か月という場合も多く、資金の負担は大きくなります。
まずは、自社の回収サイトと支払サイトについて、取引先別に一覧表にまとめて、再確認をしてみるとよいでしょう。
資金繰りをよくする回収サイトと支払サイトのバランスは、回収サイトは短く、支払サイトは長くするのが理想です。ただし、支払サイトを長くすると、仕入先、外注先に迷惑がかかるので、回収サイトの短縮化に力を入れるべきでしょう。
とくに回収サイトが長い得意先から1社ずつ、わずかでもサイトを短くできないか、地道に交渉をしていくことが大切です。手形をもらっている得意先については、手形による支払いを少なくする交渉もしてください。
回収サイトが長く短縮ができない得意先から、回収サイトが短い得意先へシフトしていくことも考えましょう。

(2)在庫の適正化
小売業や卸売業では、商品の在庫を多く保有すると、欠品の可能性が低くなります。いつでもすぐに納品することができれば、お客様や取引先の満足度も上がるでしょう。
また、製造業の場合でも、部品の在庫を多く保有することで、材料欠品で製造ができなくなるリスクが下がり、納品までの期間も短縮できます。また、在庫を多く持つことにより、仕入値を下げる効果も期待できます。
しかし、在庫を持つためには、仕入先に代金を支払って仕入れることになるため、現金が在庫に化けることになります。そのため、多額の在庫を保有すればするほど、資金面では悪影響が出ます。
さらに、在庫を保管する場所も必要となるため、その費用も増加します。在庫を探したり取りに行ったりする費用もかかります。また、型落ちなどで売れない「死に筋商品」の在庫が多くなると、さらに資金繰りに悪影響を与えることになります。
したがって、資金面の負担を下げるためには、在庫を少なくすることが必要です。
ただし、在庫を少なくすればよいわけではありません。在庫を少なくすれば、欠品が発生する可能性が高くなり、販売機会を失ったり、お客様の不満も高まったりすることにもつながるからです。
過去の販売記録から欠品が生じない商品別の適正在庫を算出し、できるかぎりその適正在庫以上の在庫はもたないようにすると資金面での負担が減ります。型落ちなどの商品は、今後さらに売れなくなるので、値引きしてでも早く現金化したほうがよいでしょう。

(3)設備投資の再検討
資金に大きな影響があるものに、設備投資があります。
以前から計画していた設備投資やオフィスの拡張移転、自動車の購入なども、いま本当に必要なのか、投資した場合にその投資資金をこの先何年で回収できるかなどについて、再確認してみましょう。

(4)経費の見直し
いままで、なんとなく支出していた無駄な経費を思い切って減らすことで、資金繰りの負担を軽減できます。効果が出ていない交際費や加入意味がなくなった諸会費などがその候補です。ほかにも、出張を電子会議で済ませば、経費削減だけでなく時間の節約にもなります。金額の大きい経費から順番に検討していくとよいでしょう。
ただし、むやみに経費を削減するのは危険です。たとえば、広告費や教育費、研究費を削ると、いずれ売上に響いてきます。給料を下げれば社員のモチベーションが低下し、社員の退職にもつながります。いまだけでなく、これからのことも考えた経費削減を検討してください。

(5)ビジネスモデルの見直し
回収サイトの短縮化や在庫の適正化、設備投資計画の再検討や経費の削減を行なってもなお資金面の改善が困難で、この先改善の見通しも立たない場合には、自社のビジネスモデル・業種の見直しが必要となる場合があります。

資金繰り表を作成する

自社の売上、利益、資金の関係を理解するには、資金繰り表を作成するのが一番です。資金繰り表に決まった様式はありませんが、おおむね月別に図表1のように作成することが多いです。

図表1 資金繰り表(作成手順および記載例)図表1 資金繰り表(作成手順および記載例)

資金繰り表では、お金の動く月ごとに記載するのが原則です。掛け売上は回収月に記載し、手形回収はその期日の月に記載します。
支払いも掛け仕入れは支払月に記載し、支払手形を切っている場合は、その決済期日の月に記載します。
経費でも請求書が届いて翌月支払う場合は、その支払月に記載し、クレジットカードについても、その口座引落月に記載します。
区分は、通常の収入・支出である「経常収支」、設備投資や有価証券投資等を記載する「経常外収支」、借入、返済を記載する「財務収支」の3つに区分するとよいでしょう。各段階での差し引き過不足欄も設け、その段階で資金繰りがどうなっているのかを表示します。

(続く)

企業実務



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