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公開日:2020年6月24日

コロナとの共生を踏まえ 景気減速期における企業法務を考える 月刊「企業実務」 2020年7月号

湊 信明(湊総合法律事務所 弁護士)


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人事・労務上求められる対応

契約不履行による損害賠償責任

注意したい下請法違反

個人情報の取得と第三者提供


新型コロナウイルスによる感染症の流行は、世界経済に大きな打撃を与えています。
緊急事態宣言は5月25日に解除になりましたが、再度、発出される可能性もあります。
ここでは、景気減速期に求められる企業法務上の判断と対応について考えます。


人事・労務上求められる対応

【 休業時の賃金支払義務 】

(1)緊急事態宣言が発出された場合の賃金支払義務

1. 事業継続を求められている業種
緊急事態宣言下において、食品の製造・販売業等、日常生活に欠かせない業種に対しては、事業の継続が求められました。
このような事業に属する企業が新型コロナウイルスに感染していない健康な従業員を、感染拡大防止のために休ませる場合には、企業が自主的に従業員を休業させるものとして、労働基準法26条に定める「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当し、平均賃金の6割以上の額を休業手当として支払う必要があると解されます。

2. 休業要請を受けている業種
緊急事態宣言に基づき、都道府県知事から休業要請(改正新型インフルエンザ等対策特別措置法24条9項)を受けた業種については、法律に基づく休業要請であることから、基本的には労働基準法26条に定める「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当せず、休業手当は不要と考えられます。
もっとも、休業要請はあくまで「要請」であり強制力があるものではないこと、休業要請に基づき店舗を休業する必要はあるものの、テレワークによる業務実施が可能なケースも考えられること等から、休業手当を要するか否かについては、当該企業の業種・事業内容、休業する従業員の地位・業務内容、休業する必要性等を踏まえて個別に判断する必要があるものと考えられます。

3. 1.2.に該当しない業種の場合
事業継続が求められたわけではなく、休業要請も受けなかった業種の場合はどのように考えるべきでしょうか。多くの企業は、このケースに該当するのではないかと思われます。
行政から解釈が示されていないため、あくまで私見になりますが、自主的な休業として賃金の6割以上の休業手当が必要となるケースが多いものの、使用者に責任があるとは言えず、休業手当の支払いが不要となるケースも少なからず存在するものと考えます。
休業要請を受けたわけではなく、企業は通常どおり事業継続が可能であるのに、従業員を休業させる場合には、基本的に企業の自主的な休業指示として休業補償を行なうべきとも思われます。
しかしながら、すべてのケースで企業に対して休業手当の支払いを求めた場合、企業としては従業員を出勤させる方向に動くことになり、これでは緊急事態宣言の趣旨とは逆に感染拡大に寄与する結果となってしまい本末転倒です。
また、企業は従業員に対して安全配慮義務を負っていますので、当該義務をまっとうする意味でも、従業員を休業させる必要がある場面は存在するものと思われます。
したがって、 2.の場合と同様に、休業手当の支払いを要するか否かについては、当該企業の業種・事業内容、休業する従業員の地位・業務内容、休業する必要性等を踏まえて個別に判断する必要があるものと考えます。

(2)緊急事態宣言解除後の賃金支払義務

緊急事態宣言解除後、休業要請は、段階的に緩和されます。
自社がどの段階で休業要請が解除されることになるのかを慎重に判断して対応する必要があります。
休業要請解除後は、前述の1.と同様に対応することになります。

(3)従業員の感染が判明したため休業させる場合

感染が判明した従業員は職場におけるウイルス感染を惹起する可能性が高く、労務提供は不能です。そして感染の原因が、職務や職場と関係ないものであれば、労働基準法26条の「使用者の責に帰すべき事由」にも該当しないものとして、休業手当を支払う必要はないものと考えられます。
もっとも、当該従業員が職務を遂行する際や、職場で業務遂行中に新型コロナウイルスに感染したとか、使用者が感染拡大のために必要な措置を講じていなかったために感染した場合には、会社側の帰責性が強いことから、6割の支給では足りず、民法536条2項に基づいて全額の賃金支払義務が認められることになりますから注意を要します。

【 業績悪化による整理解雇 】

(1)整理解雇が有効となる要件

整理解雇は、普通解雇や懲戒解雇とは異なり、従業員にその理由があるものではなく、会社側の事情に基づく一方的な解雇です。一方的な解雇は従業員の職を奪い、生活基盤を失わせることとなるため、裁判上も、図表1に記載したような厳格な要件のもとでしか認められないのが実情です。

図表1 整理解雇が認められる要件図表1 整理解雇が認められる要件

仮に何も検討もせずに従業員を整理解雇した場合、従業員からは解雇無効を理由とする訴訟を提起され、場合によっては解雇が無効になるだけでなく、多額の賠償金の支払いが必要となることもあります。

(2)整理解雇を行なうときは

図表1のとおり整理解雇の要件は極めて厳格ですので、コロナ禍により経営が厳しくなっているという理由だけで整理解雇を行なってしまうと、後に深刻なトラブルに陥ることになる可能性が高まります。
整理解雇を行なう場合には、図表2に示した手順に沿って適切な手続きを履践しつつ行なう必要がありますので、弁護士に相談しながら進めることを、強くお勧めします。

図表2 整理解雇の手順図表2 整理解雇の手順

【 テレワークによるトラブル防止 】

(1)テレワーク導入時に会社が行なうべき労働時間の管理

従業員に自宅などでテレワークを行なってもらう場合も、会社は従業員の労働時間を把握・管理する義務を負っています。
厚生労働省は、テレワークを行なう場合に特有の労働時間の把握・管理の方法について、「情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」を策定し、注意点として図表3に記載したもの等をあげています。

図表3 テレワークを実施する際の注意点図表3 テレワークを実施する際の注意点

また、テレワークでは、労働時間を算定することが困難な場合があります。その場合には、労働基準法38条の2に規定されている事業外労働のみなし労働時間制が適用されることになります。
この場合、テレワークを行なう従業員は、就業規則等で定められた所定労働時間を労働したとみなされることになります。

(2)テレワークに際して会社が負う特有の義務

テレワークは、従業員が会社から離れた場所で業務を行なうため、長時間労働を招くおそれがあります。
会社は従業員の健康を守るための安全配慮義務を負っています。そこで、長時間労働を防ぎ、安全配慮義務を果たすために、図表4のような対応をとることが考えられます。

図表4 従業員の長時間労働を防ぐための対応図表4 従業員の長時間労働を防ぐための対応

(続く)

企業実務



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