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公開日:2020年5月15日

「同一労働同一賃金」の実現に向けた自主点検と改善方法 月刊「企業実務」 2020年6月号

瓜阪 早貴(ドリームサポート社会保険労務士法人 社会保険労務士)


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■「同一労働同一賃金」で何が求められているか

■自社における同一労働同一賃金の位置づけ

■要改善事項へのアプローチ


同一労働同一賃金の実現について、中小企業でも派遣労働者はことし4月から、パートタイム・有期雇用労働者は来年4月から義務化されます
自社が最低限の基準をクリアできているか点検したうえで、未達成の部分の改善策を解説します。


「同一労働同一賃金」で何が求められているか

短時間労働者・有期雇用労働者の同一労働同一賃金について、中小企業は2021年4月1日から対応が義務化されます。「まだ時間はある」と感じていても、待遇差の確認や見直し・会社と労働者の話合い・原資の確保・賃金規程の改定等、やるべきことは盛りだくさんです。
また、人事制度や賃金制度に直接、深くかかわる待遇差の見直しは容易ではありません。
以下では、同一労働同一賃金への対応に向けて、チェックリストや点検票を活用しながら、自社に最適な改善へのアプローチを説明します。対応は計画的にすすめていくことがポイントです。

同一労働同一賃金とは

働き方改革のひとつの柱である同一労働同一賃金。これは、労働者がどのような雇用形態を選択しても、待遇に納得して働き続け、多様で柔軟な働き方を自由に選択できるようにすることが目的です。
そのために、同じ社内の正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間において、不合理な待遇差をなくすことが必要です。
両者の理由なき差が埋められていくと、求職者からは「適切な待遇をしている職場」と魅力的にうつり、労働者にとっては「公正に評価されている」と納得感が生まれるでしょう。結果として、会社の採用力アップや人材の定着が見 込めます。

会社に求められていること

同一労働同一賃金を実現するために、会社に求められていることは図表1の2点です。

図表1 同一労働同一賃金で求められていること図表1 同一労働同一賃金で求められていること

(1)不合理な待遇差の禁止
同じ会社で働く正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間で、基本給・賞与・手当・福利厚生等のあらゆる待遇について、不合理な差を設けることが禁止されます。
不合理性の判断要素は図表2の2点で、基本給や賞与・手当等、個々の待遇ごとに判断されます。

図表2 不合理性の判断要素「均等待遇」と「均衡待遇」図表2 不合理性の判断要素「均等待遇」と「均衡待遇」

(1)の「職務の内容」とは「業務の内容とその業務に対する責任の程度」をいいます。これは労働者の就業実態を表わす要素のうち、最も重要なものです。
(2)の「職務内容・配置」の変更範囲とは「人材活用の仕組みや運用」をいいます。転勤、昇進といった人事異動や役割の変化等の有無や範囲を指すもので、今後の見込みも含めた判断が必要です。
(3)の「その他の事情」には職務の成果や能力、経験、合理的な労使慣行等の様々な要素が含まれ、個々の状況に合わせてその都度検討するものです。

(2)労働者に対する待遇に関する説明義務
会社は、非正規雇用労働者からの求めに応じて、正規雇用労働者との待遇の違いや理由について説明をしなければなりません。
そして、説明を求めた非正規雇用労働者に対して解雇等の不利益な取扱いは禁止されています。
短時間労働者・有期雇用労働者に対して、説明すべき具体的な内容は以下のとおりです。労働者に理解してもらえるよう丁寧に説明しましょう。

待遇差の内容 ■■■■■■■■■■■
・正規雇用労働者との間で、待遇に関する決定基準に違いがあるかどうか
・待遇の具体的な内容または待遇に関する決定基準
待遇に関する決定基準について「賃金は、各人の能力、経験等を考慮して総合的に決定する」という説明は十分ではありません。
賃金テーブルの支給基準を説明する等、比較対象となる正規雇用労働者の水準がどのようなものか把握できることが必要です。

待遇差の理由■■■■■■■■■■■
・(1)職務の内容、(2)職務内容・配置の変更範囲、(3)その他の事情のうち、個々の待遇の性質・目的に照らして不合理ではない理由
能力に基づいて基本給を決定している場合は、能力レベルが異なるために基本給の額に差が出ることを説明します。
なお、今回の法改正で行政による会社への助言・指導等や裁判外紛争解決手続き(行政ADR)が整備されました。労働者への説明が不十分な場合、行政からの「勧告」や、労働者からの「申し立て」に発展する可能性があることを肝に銘じておきましょう。

不合理な 待遇差の考え方

「不合理ではない」とは、図表3のとおり、「白からグレーまで」 を指します。

図表3 対応が求められる「不合理でない」範囲図表3 対応が求められる「不合理でない」範囲

誤解されがちですが、法律上は、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の待遇差について「合理的(白)」といえるレベルまでは、求められていません。
ポイントは、非正規雇用労働者の待遇が、正規雇用労働者との働き方や役割の違いに応じたものになっているかどうかです。単に「将来の役割期待が異なるため」といった抽象的な理由は不合理ではないという説明として認められません。
厚生労働省は、待遇差が不合理かどうか、原則となる考え方や具体例をガイドラインで示しています。ただし、ある程度判断がはっきりしたものに関する一部の例示にとどまります。具体例が示されていない部分は「グレーゾーン」として残り、個々の事情に応じて会社と労働者で話合いをしていくことが望まれています。

(続く)

企業実務



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