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公開日:2020年3月25日

改正会社法のあらましと中小企業への影響を確認する 月刊「企業実務」 2020年4月号

中島 成(中島成総合法律事務所 弁護士)


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改正会社法のポイントを概観する

中小企業に対する影響を考える

求められる実務対応と留意点


昨年12月に会社法の一部が改正され、主として企業統治のルールが見直されました。
改正内容は多岐にわたり、中小企業の経営実務に影響を与えるものも少なくありません。
そこで、会社法の主な改正内容を概観したうえで、中小企業への影響と求められる実務対応について確認します。
※本稿で「中小企業」とは、主として非上場会社を意味します
※本校での条文は、特に記載がない限り改正法の条文を指します


改正会社法のポイントを概観する

2019年12月4日、会社法の一部を改正する法律(令和元年改正会社法・以下「改正法」)が成立しました。2005年に成立した会社法の施行後、2014年の改正に続く2度目の本格的な改正です。
改正法は、公布の日(2019年12月11日)から1年6か月を超えない時期に施行されます。ただし、改正内容中、株主総会資料の電子提供制度、および会社支店所在地における登記廃止は、システムを整える関係で公布の日から3年6か月を超えない時期に施行されます(改正法附則1条)。
今回の会社法改正は、主として企業統治ルールの見直しを図ったもので、改正内容が多岐に渡り、中小企業の経営実務に影響を与えるものも少なくありません。
そこで、当該改正内容が中小企業にも適用されるのかを含めて、まずは改正法全体のポイントを概観します。


(1)株主総会資料の電子提供(インターネットでの提供)制度

現行会社法でも、株主の個別の承諾を得れば株主にインターネットで事業報告や計算書類等の株主総会資料を提供することができます。しかし、個別同意が必要なため、ほとんど利用されていません。他方、インターネットで提供する場合は、印刷の費用等が省けますし、より早く株主に情報を提供することが可能となります。
そこで改正法は、定款に定めることによって、株主総会資料を自社のホームページ等のWebサイトに掲載し、株主にそのアドレスを書面により通知すれば、株主の個別の同意を得なくても株主総会資料を提供したことになる制度を新設しました(325条の2~7)(図表1)。

図表1 株主総会の電子提供制度のイメージ図表1 株主総会の電子提供制度のイメージ

ただし、電子提供できるのは事業報告や計算書類等の株主総会資料であって、招集通知自体は現行会社法と同じく郵送等をしなければなりません。
また、株主総会資料のWebサイトへの掲載は、株主総会の日の3週間前の日、または招集通知を発した日のいずれか早い日までに行なうことが求められます(325条の3)。
なお、インターネットを利用することが困難な株主もいるため、改正法は、株主が会社に株主総会資料を書面で交付するよう請求した場合は、書面で提供しなければならないとしています(325条の5)。
上場会社は、この制度を利用することが義務づけられます。中小企業などの非上場会社は、義務ではないものの、この制度を利用することができます。


(2)株主が株主総会に提案できる議案数の制限

総株主の議決権の100分の1以上の議決権を有する等の株主は、株主総会の日の8週間前までに会社に通知することで、総会に議案を提出することができます(株主提案権)。
しかし、1人の株主から非常に多くの提案がされるなど濫用される場合もありました。
そこで改正法は、1人の株主が1つの株主総会で提案できる議案の数を10個までに制限しました。たとえば、15個の提案がされた場合、そのうち10個しか提案することが許されず、どの5個が提案できなくなるかは、株主が優先順位をつけていない限り、会社が判断します(305条5項)。
ただし、取締役や監査役の選任議案は人数にかかわらず1個の提案とされます(305条4項)。取締役等の人数が多いときに1人の取締役等につき1個の議案と数えられると、すぐに10個が埋まってしまうからです。
この改正も、中小企業にも適用されます。


(3)取締役の個別報酬決定方針の取締役会による決定

現行会社法は、お手盛り防止のため、取締役の報酬は定款または株主総会決議で定めるとしています。しかし、実際には概括的な定めしかされず、個別取締役の具体的な報酬額は、取締役会や代表取締役が内部的に定めています。それでは、適正な報酬か否かが株主にわかりにくいことが指摘されていました。
そこで改正法では、上場会社は、取締役会において定款や株主総会決議で取締役の個人別報酬が具体的に定められていない場合は、その決定方針を定めなければならないとされました(361条7項)。
また、上場会社か否かにかかわらず、取締役の報酬として株式または新株予約権を与える場合は定款または株主総会決議でその上限数を決めなければならず、株主総会に提出する取締役の報酬に関する議案が適正なものであることを会社は株主総会で説明しなければならないとされました(361条1項、4項)。


(4)取締役への株式による報酬

取締役が会社の株式を報酬として与えられるならば、業績を向上させたり、不祥事による株式価値毀損を防ごうとするインセンティブ(動機)になり得ます。
しかし現行法では、株式発行に際してその株式に見合う払込みが会社にされなければならないという資本充実の原則が重視されるため、会社が取締役から金銭払込みを受けずに単に報酬として株式を与えることができるかは、必ずしもはっきりしていませんでした。
そこで改正法では、上場会社が取締役の報酬として株式を交付する場合は、その株式と引換えに取締役から金銭払込みを会社が受けることは不要であることが明文化されました(202条の2)。


(5)補償契約について

取締役ら役員が職務執行に関して会社に損害を与えたことを理由に株主代表訴訟等で責任を問われたときに生じる弁護士費用等の防御費用や、会社以外の第三者から損害賠償請求を受けた場合の賠償金を、会社が当該役員に支払う契約(以下「補償契約」)を締結することは、役員の人材確保や、役員が思い切って職務を執行することを容易にします(図表2)。

図表2 会社補償と役員賠償責任保険のイメージ図表2 会社補償と役員賠償責任保険のイメージ

他方、そのような契約は、会社と取締役の利益が相反することから現行会社法では補償契約に関する規定が置かれていません。
そこで改正法では、補償契約の手続き、補償できる範囲等について規定が設けられました(430条の2)。その手続きによれば、利益相反の規定等は適用されず(430条の2第6項、7項)、利益相反行為による取締役の損害賠償義務等も発生しないこととされました。
具体的には、補償契約を締結するためには取締役会決議(取締役会非設置会社では株主総会決議)によらなければならず(430条の2第1項)、会社が補償できる取締役の防御費用は、通常必要な金額に限られ、役員等が故意または重過失で第三者に損害を与えた場合は補償できないこととされました(430条の2第2項)。
補償契約に関するこの改正も、上場会社に限らず中小企業にも適用されます。

(続く)

企業実務



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