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廃棄されたホタテの貝殻を社会に役立つ高機能製品に再生(株式会社チャフローズコーポレーション 社長 笹谷広治) 月刊「ニュートップL.」 2014年4月号

吉村克己(ルポライター)

キラリと光るスモールカンパニー


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青森や北海道で大量に廃棄され、社会問題にもなっているホタテの貝殻。
その貝殻に、人体に有害な物質を除去する力があることを発見し、壁材・洗浄剤・除菌剤など様々な商品を開発、海外からも注目を集めているチャフローズコーポレーション。
創業者の笹谷広治社長に、開発にいたる苦労と、その波瀾万丈の人生を聞いた。



◇    ◇    ◇


sc39_2 ホタテ貝はその美味しさのため、食卓にのぼる機会が多い。だがその一方で、養殖産地である北海道や東北では、毎年約21万トンものホタテの貝殻が廃棄され、山のように野積みされている。捨てられた貝殻は青森県内だけでも約70万トン以上あるといわれ、社会問題にもなっているほどだ。

ホタテ貝は海中のプランクトンなどをおもなエサとし、2~3年で殻の大きさが12センチほどにまで成長する。成長が早いので養殖には適しているが、その分、廃棄貝殻は増え続けてしまう。

この厄介者の貝殻を人に役立つ製品に再生したのが、チャフローズコーポレーション(以下、チャフローズ)の笹谷広治(ささやこうじ)社長(78歳)である。

「生まれ故郷が青森なのですが、子供のころ、風邪をひいたりお腹をこわすと、母親が必ず大きなホタテの貝殻に卵やニラ、味噌を入れて温めた煮汁を飲ませてくれました。子供心にホタテの貝殻は薬というイメージがあり、不思議な力があると思っていたものです」(笹谷社長、以下発言は同氏)

詳しいいきさつは後述するが、笹谷社長は、故郷に帰ったときにこのホタテの貝殻が大量に捨てられ、問題となっていることを知り、「もったいない。何かに使えるのではないか」と研究を始めた。1996年のことだ。専門家の協力を得ながら調べていくと、貝殻が予想していた以上に秘めた力をもっていることがわかってきた。


ホタテの貝殻がもつ様々な機能を発見

ホタテ貝殻の成分は、炭酸カルシウムが99%と有機質1%である。これを細かく粉砕し、高温で焼成すると驚くほどの多機能性を示すのだ。この加工貝殻を、笹谷社長は「ホタテ貝殻セラミックス」と呼んでいる。

ホタテ貝殻セラミックスの機能を挙げてみよう。シックハウスの原因となるホルムアルデヒドをたった10分間で80%も分解し、初期濃度700ppmの二酸化炭素を210分間でゼロにする。大腸菌はホタテ貝殻セラミックスの溶液を入れただけで、60%が死滅し、1分以内にほぼすべてが死滅した。

そのほか、サルモネラ菌、黄色ブドウ球菌、抗生物質に耐性をもつMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)、虫歯菌、歯周病菌などにも有効で、MRSAは5分で96%が死滅、15分でほぼゼロになった。残留農薬の除去にも有効など、人間にとって有害な物質を排除できる、万能ともいえるパワーをもっている。

笹谷社長は、開発を始めた96年にホタテ貝殻セラミックスを利用した第一号製品として、『チャフウォール』という塗料・内装材を発売した。壁のクロス上に塗るだけで、ホルムアルデヒドや揮発性有機化合物を軽減し、シックハウス症候群に有効だという。しかもタバコやペットの臭いを抑える消臭機能、高い吸放湿性、カビやダニを抑える抗菌性などの効果ももつ。

99年には国土交通省の新技術情報提供システム(NETIS=公共工事などで活用できる優れた技術や企業をサポートするために情報を共有するしくみ)にチャフウォールが登録された。2001年には青森県で住宅金融公庫(現・住宅金融支援機構)の高規格住宅としてチャフウォールを利用すると、200万円までの割増融資が受けられるようになった。東京都や神奈川県でも同様に認定されている。08年の北海道洞爺湖(とうやこ)サミットでは、メイン会場とメディアセンターの内装塗料としてチャフウォールが採用された。

日本にとどまらず、ウォール・ストリート・ジャーナルでもチャフウォールが数回にわたって取り上げられ、アメリカでも注目されている。現在、国内では全国30代理店がチャフウォールを取り扱っているが、まだまだ知名度が低く、ヒットするには至っていない。

そのほか同社では01年に、台所用除菌洗浄剤『チャフクリーン』を発売。スプレータイプで、野菜やまな板、包丁、スポンジなどに吹きかけるだけで、大腸菌や黄色ブドウ球菌が3~5分で、1万分の1以下になることをアピールした。野菜などの残留農薬も除去し、もちろん口に入れても無害である。現在、チャフクリーンは1本800円前後で販売されている。

「チャフクリーンは開発途中の99年に特許を申請していたのですが、認可が下りたのが09年。10年間も店ざらしされている間に、類似の粗悪な商品が出回ってしまいました。ホタテ貝殻セラミックスは、焼成する方法や温度などによって効果が弱くなるどころか、場合によっては有害物質も発生します。だから同じホタテ貝殻を使っていても、チャフクリーンと他社製品では品質が違うのです」


日本の規制に阻まれ米国で水虫治療薬を発売

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日本特有の規制には、たびたび悩まされた。チャフローズは、青森県にホタテ貝殻セラミックスの製造工場をもつ。ある夏の時期、素足にサンダル履きで製造していた社員の水虫がいつの間にか治っていた。

そこで実験してみると、ホタテ貝殻セラミックスによって白癬菌(はくせんきん)がほぼ死滅することがわかった。水虫の有効な治療薬ができると確信した笹谷社長は、研究開発を進めた。横浜市の診療所の協力で行なわれた実験では、患部にホタテ貝殻セラミックス入りの薬液を数滴垂らすだけで、半年後には7人の患者全員が完治した。

ところが、日本では治療薬としての認可を受けることはできなかった。厚生労働省が定めた医薬品製造指針があり、水虫とタムシの薬は定められた成分を使ってつくらなければならないと決められていたのだ。

「要するに水虫の薬といっても、各社同じ成分の組み合わせに過ぎないのです。いくら有効性を証明できても、ホタテ貝殻セラミックスでは水虫の薬をつくれない。おかしな話ですよ。そこで、アメリカで承認を得ることをめざしました。アメリカなら治験を通して有効性と副作用を明らかにできれば、薬として認めてくれるんです」

笹谷社長はアメリカで治験を行ない、治療効果と肌への影響などの研究を進めた。治験患者へのアンケートでは70%が満足と回答し、他の水虫治療薬に比べて71%が高く評価した。05年に水虫治療薬としてアメリカで承認され、09年に『MOIYA(モイヤ)』の商品名で発売、好評を得ている。国内では治療薬としては販売できないため、足ふきマットや靴などに使用する除菌・消臭スプレー『爽貝(そうかい)水』として販売されている。

健康食品としてもホタテ貝殻は利用価値が高い。04年には発芽玄米と組み合わせた『カルシウムライス』を発売。12年にはカルシウムだけでなくビタミンやルチン、マグネシウムなどを効果的に摂取するため、炊飯時に添加するサプリメント『TAKIKOMI(タキコミ)』を発売した。

笹谷社長は自ら10年来、ホタテ貝殻セラミックスをご飯と一緒に炊いて食べており、骨密度やコレステロール量は20代の若者並み、血圧や血糖値も正常で医者いらずだという。


警察を退職して渡米 飲食業に乗り出すが…

笹谷社長は異色の経歴の持ち主だ。1935年に青森県に生まれ、中央大学に進学するも思うところがあり中退。神奈川県警に転じ、警察官として実務経験を重ねた。その後、幹部警察官などを対象とした警察大学校も卒業し、69年には県警の交通課長、70年には警察庁長官官房に勤務している。そのまま警察にいれば順当に出世の道も開けていたが、71年に「アメリカで警察学を学びたい」と2年間の休職願を出した。

「もともと人生を前半と後半に分けて考えており、35歳になったら、自分の仕事を見つめ直そうと思っていたのです」

2年という長期にわたる休職は認められなかったが、笹谷社長の固い決意を知る上司の計らいもあり渡米、カリフォルニア州立大学に入学する。しかし警察学の授業は期待していたものとはまったく違い、退屈なものだった。失望して1か月で帰国するも、職場にも戻りづらかった。72年に退職して、信号機や道路標識などを手がける日本交通産業を設立する。

その後、アメリカで世話になった人から、84年開催予定のロサンゼルス・オリンピックに向けて、米国行政府相手の道路標識や白線引きの事業を立ち上げないかと誘われた。チャンスと思い、79年にアメリカへ家族と一緒に渡る。しかしオリンピックは民間主導になり、行政を対象としたビジネスは成り立たないことがわかった。

困っていたところ、知人から日本食レストランを経営してはどうかと助言され、ロサンゼルス郊外に寿司と天ぷらの店を出した。調理経験のない笹谷社長はもっぱら皿洗いを担当した毎日スポンジを片手に食器を洗っていると、あるとき保健所の職員がやってきて、ポリウレタン製のスポンジは雑菌の温床になるので使ってはいけない、と忠告された。

「アメリカで使用されているスポンジは、木材パルプを原料にしたセルローススポンジなので熱湯消毒が可能ですが、ポリウレタン製は耐熱性がなく消毒できないからです。アメリカで食中毒事故を起こしたら実刑判決ですから、あわててセルロース製に替えました」


雑草でつくったスポンジが日本で大ヒット

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何気ないこの出来事を笹谷社長は見逃さなかった。調べてみると、先進国の中でポリウレタン製スポンジを使っているのは日本ぐらいだった。今後、日本でもセルロース製スポンジが主流になるのではないかと考え、日本への輸出販売を始めた。これが大ヒットして、生協などを中心に売上を伸ばした。

しかしエコロジーブームとともに森林破壊が問題となり、木材パルプからつくられる商品が敬遠され、売行きが落ちてしまう。 そこで、笹谷社長は木材パルプ以外の原料を探し、もみ殻や雑草からセルローススポンジを製造する研究を始めた。90年に特許を取得、製品化に成功する。93年には米国人の共同パートナーと合弁会社をつくるとアイオワ州に工場を立ち上げ、年商8億円を稼ぐまでに成長させる。94年にチャフローズを設立。「チャフ」はもみ殻やくずを意味する。それにセルロースを加えて命名した。

ホタテ貝殻の廃棄問題を知ったのは96年、久しぶりに故郷へ帰ったときだった。雑草からヒット商品を生み出した笹谷社長は、貝殻からも付加価値のあるものがつくれるはずだと考えた。青森県の工業試験所に相談したところ、八戸工業大学の小山信次教授(現在・名誉教授)を紹介された。小山教授もホタテ貝殻の工業利用を研究していたのだ。

こうして、笹谷社長と小山教授の二人三脚の研究活動が始まった。ホタテ貝殻がもつ抗菌性などの効果を最も高くする粒子の大きさや、焼成温度を発見する。焼成用の機械も独自に開発するなど苦労を重ね、前述のとおり、様々な商品の生産に成功した。

だが、話はここで終わらない。06年に米国人の共同パートナーが、笹谷社長に無断で工場を大手企業に売り払ってしまう。報道でそれを知った笹谷社長は激怒。最終的に法廷闘争へ持ち込まれた。07年には上場の準備に入るほど業績は好調だったが、この事件によって笹谷社長が会社経営に打ち込めない状態になり、ホタテ貝殻セラミックス関連の事業も停滞してしまったのだ。

現在も法廷闘争は続いているが、12年に決着のめどが立ち始めたことから、笹谷社長はホタテ貝殻セラミックス事業の本格的な展開を再開。スポンジ事業の再建も考えている。78歳となったいまも情熱はまったく衰えず、波瀾万丈の人生を楽しんでいるかのようだ。

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