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公開日:2012年11月17日

全額損金から2分の1に 法人が支払う「がん保険」の保険料の経理処理 月刊「企業実務」 2012年11月号

入江順也(税理士)

企業実務TOPICS(経理・税務)


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改正を踏まえた生命保険の使い方

ここからは通達以後を踏まえた生命保険の上手な利用方法について検討します。

まず、本通達は、通達前の契約部分には遡及適用されません。つまり、すでに加入しているがん保険に関しては、いままでどおり全額損金とできます。
したがって、いますぐに何かしないといけないということはありません。

ただし、今後、新規契約するがん保険については、保険料の損金算入額が半分になるため、返戻金や保険料の多寡の比較検討がより一層求められます。
前述したように、終身タイプのがん保険を利用するメリットとしては、損金算入の効果に加えて、会社の財務体質の改善を行なえることが挙げられます。

黒字が出ている企業が税金支出を抑える対策として、いずれ必要となるものを前倒しで買うことが考えられます。
ただしこれは支出を伴う経費であり、その支出額に対する税金を減少させることはできたとしても、お金を生み出すことには直接はつながりません。

一方、生命保険はどうでしょうか。保険料の損金算入額が半分のものを活用した場合であっても、その金額を経費として取り扱うことで、その経費額に対する税金が減少することになります。
加えて「契約者貸付」という資金調達手段も出てきます。

そして何より、帳簿には計上されない資産である「解約返戻金」の存在により、財務面の安定化が図れます。

つまり、退職金の発生等の資金需要のタイミングと、解約返戻金の受領額が最も効率がよくなる時期を経営計画に織り込むことで、最適な解約返戻金を受領することができ、結果として長期的な財務体質の改善に大きく寄与することになります。

以上の理由から、今後も生命保険は財務面に気を配りつつ、利益の繰延べをすることができる、非常に有効な商品であることは変わりないといえるでしょう。

一方、デメリットもあります。健康でないと入れないこと(契約前に審査があること)、早期解約の場合は解約返戻金が少ないこと、解約時まで加入し続ける必要があること、解約返戻金を含んだ保険契約は月々支払う保険料が高額なため資金繰りを圧迫する可能性があることなどです。

加入にあたっては、そうしたデメリットについても十分に理解する必要があります。


目的に応じて商品を選ぶ

本通達発遣以降の財務体質改善策としての保険は、以下の3つに大別されるでしょう。

(1)全額損金をうたう商品

「税制と保険業界のイタチごっこ」と揶揄されることも多いですが、今回もポスト全額損金型がん保険を狙った商品がいくつか開発されており、また契約形態を工夫して全額損金可能とうたっているプラン(逆ハーフタックスプランなど)も脚光を浴びています。

また、通達に準拠した商品として解約返戻率を高く設定したものもありますが、こうした商品に通達の裏づけはありません。他の商品に比べて財務体質改善効果は高いのですが、税務調査での否認リスクや今後の税制改正におけるリスクが少なからずあります。

(2)終身がん保険…手続きが簡便

終身がん保険については、2分の1のみ損金算入とされた後でも80%以上の返戻率があれば活用のメリットがあるとする向きが多いです。
医師による加入診査が不要なものや、被保険者との面談手続きが不要なケースもあります。

税制が明確になったことにより、否認リスクや改正リスクの低い商品になったという考え方もできます。税務上のメリットを享受したい場合には有効でしょう。

(3)逓増定期保険、長期平準定期保険…無難に2分の1損金に

数度の改正を経て落ち着いた感のある逓増定期保険や長期平準定期保険の利用が、やはり最もポピュラーな財務改善対策となるのではないかと考えます。
また、今回の改正により、ますますこうした商品の需要が高まるような気がします。
こうした商品の活用は、長期的な財務改善対策を目的とする場合には適切な手段となり得ます。

この3つのうちいずれが最適解なのかは、一概には断じられませんが、財務改善対策も目的とする場合、保険に加入し損金処理を行なっているだけでは、単に利益の繰延べを行なっているに過ぎません。

「退職者用資金の捻出のため」等の具体的な出口対策があって初めて、必要十分なものとなるといえるでしょう。




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