【Q24】
雇用調整助成金とは、どういう制度ですか。
【A24】
雇用調整助成金(中小企業緊急雇用安定助成金を含みます)は、景気の変動、産業構造の変化その他の経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、従業員の雇用を維持するために、一時的に休業等を行なった場合、その休業等に係る休業手当相当額等の一部を助成する制度です。
受給するには事業活動の縮小に関する一定の生産量要件を満たしたうえで、休業等の計画を事前に届け出る必要があります。
雇用調整助成金の金額は、原則として休業手当相当額の3分の2(従業員の解雇等を行なわないなど一定の要件を満たした事業主は4分の3)となります。
なお、中小企業については、中小企業緊急雇用安定助成金として、要件の緩和や助成金の支給率を休業手当相当額の5分の4(従業員の解雇等を行なわないなど一定の要件を満たした事業主は10分の9)とする引上げが行なわれています。
【Q25】
今回の地震によって被害を受けた場合、雇用調整助成金を申請することはできますか。
【A25】
雇用調整助成金(中小企業緊急雇用安定助成金を含みます)は、今回の地震被害に伴う「経済上の理由」で事業活動が縮小した場合にも利用できます。たとえば、
・交通手段の途絶によって従業員が出勤できない、原材料の調達や製品の搬送ができない等のため事業活動が縮小した
・事業所や設備等が損壊し、修理等も困難で生産量が減少した
・計画停電の実施を受けて事業活動が縮小した
といったケースが考えられます。
また、青森県、岩手県、宮城県、福島県、茨城県のうち、災害救助法適用地域に事業所がある場合には、その受給要件が次のとおり緩和されています。
(1) 今回の地震に伴う「経済上の理由」により、最近1か月の生産量、売上高などがその直前の1か月または前年同期と比べ5%以上減少していること
(2) 平成23年6月16日までの間については、災害後1か月の生産量、売上高などがその直前の1か月または前年同期と比べ5%以上減少する見込みであること
(3) 平成23年6月16日までの間に提出された「計画届」については、事前に届け出たものとして取り扱われること
【Q26】
災害に関連した雇用保険の失業給付の特例措置として、どのようなものがありますか。
【A26】
災害により直接被害を受け、事業所が休止・廃止になり、休業した場合または一時的な離職をした場合には、雇用保険の失業給付について、次の特例を受けることができます(雇用保険に6か月以上加入しているなどの要件を満たしていることが必要)。
(1) 休業……事業所が災害を受けたことにより休止・廃止したために、休業を余儀なくされ、賃金を受けることができない状態にある場合、実際に離職していなくても失業給付(雇用保険の基本手当)を受給することができる
(2) 離職……災害救助法の指定区域にある事業所が災害により事業を休止・廃止したために、一時的に離職を余儀なくされた場合、事業再開後の再雇用が予定されている場合であっても、失業給付を受給することができる
この措置の適用を受けるには、事業所がハローワークに対し、(1)は「休業証明書(通常の離職証明書と同様の様式)」を、(2)は「離職証明書」を提出していることが必要で、事業主から交付される「休職票」または「離職票」を持参します。ただし、事業所の被災等で休業票や離職票を受け取れる状態にない場合は、その旨をハローワークで個別に相談することになります。
なお、失業給付の受給者が、災害のため指定された失業の認定日にやむを得ずハローワークに来所できないときは、電話などで連絡すれば、失業の認定日を変更できます。
また、交通の途絶や遠隔地への避難などにより居住地を管轄するハローワークに来所できないときは、来所可能なハローワークで失業給付の受給手続きをすることができます。
【Q27】
雇用関係の各種助成金等について、被災によって期限までに申請等ができない場合の取扱いはどうなりますか。
【A27】
申請期限が定められているものについて、「天災その他やむを得ない理由」がある場合には、期限後の申請等が認められます。したがって、地震による道路の寸断や書類の紛失等によって支給申請書類などを期限までに提出できなかった場合には、災害がやんで支給申請などが可能になった後一定期間内に、その理由を記した書面を添えて提出すれば、期限内に支給申請等があったものとして取り扱われます。
対象となる助成金等は次のとおりです。
(1) ~(23) については支給申請等が可能となった日から7日以内、(24) ~(30) については支給申請等が可能となった日から1か月以内に申請をする必要があります。
いつの時点で支給申請等が可能となったかについては、個々の事情をふまえて判断されます。
【Q28】
被災に伴う労働保険料の納期限の延長については、どのようになっていますか。
【A28】
青森県、岩手県、宮城県、福島県、茨城県に所在する事業所等(これら県内の労働保険事務組合に労働保険事務を委託している場合を含みます)が納付する労働保険料で、平成23年3月11日以降に納期限が到来するものについて、その納期限が延長されます。
平成23年の労働保険料の第1期分の納期限は7月11日(10日が日曜日のため)ですから、第1期分以降が対象となります。対象地域は、今後、被災の状況をふまえて見直していくこととされています。
延長後の労働保険料の納期限については、災害のやんだ日から2か月以内の日が定められますが、4月5日時点では未定です。
また、前記の対象地域以外の事業主についても、今回の地震によって財産に相当な損失(全財産の価額のおおむね20%以上の損失)を受けた場合には、事業主の申請に基づいて、1年以内に限り納付の猶予を受けることができます。
【Q29】
被災に伴う社会保険料の納期限の延長については、どのように取り扱われますか。
【A29】
青森県、岩手県、宮城県、福島県、茨城県に所在する事業所等が納付する社会保険料で、平成23年3月11日以降に納期限が到来するものについて、その納期限が延長されます。
社会保険料の納期限は翌月末日であるため、平成23年2月分(納期限は平成23年3月31日)以降が対象となります。対象地域は、今後、被災の状況をふまえて見直していくこととされています。
延長後の社会保険料の納期限については、災害のやんだ日から2か月以内の日が定められますが、4月5日時点では未定です。
社会保険料を口座振替としている場合、当初は個別の連絡により口座振替を停止することにしていましたが、連絡ができないケースも多いと考えられるため、納期限が延長されている間は一律に停止されます。
その停止期間内に納付を希望する場合は、金融機関の窓口等で納付することが可能です。
なお、被災等により業務に支障が生じている年金事務所があります。年金事務所管内の各種届出書等については、県外を含む他の年金事務所でも受付をしています。
企業実務 2011年5月号 掲載