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公開日:2018年5月21日

どうする?「同一労働同一賃金」への対応 月刊「企業実務」 2018年6月号

小岩広宣(社会保険労務士法人ナデック/特定社会保険労務士)


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■同一労働同一賃金ではどこまで平等を求められるのか

■これから必要となる労働条件の整備・調整

■同一労働同一賃金の実現に伴う「不利益変更」の留意点


「働き方改革」の目玉である同一労働同一賃金では、正規労働者と非正規労働者の格差を是正することが求められますが、実際にはどう対応すればよいのでしょうか。
その背景と企業の進むべき方向性を探ります

(この記事は5月7日時点の情報によるものです)

同一労働同一賃金ではどこまで平等を求められるのか


「働き方改革関連法案」は、国会の混乱によって予定よりも遅れましたが、4月6日、閣議決定を経て国会に提出され、審議入りすることになりました。
法案の成否には不透明な部分がありますが、長時間労働の是正、多様で柔軟な働き方の実現、雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保といった規制が強化されるという流れは変わらないと思われるため、これからを見据えた実務対応が急務だといえるでしょう。
今後、労働基準法などの改正によって、時間外労働の上限規制の強化や中小企業の割増賃金の引き上げ、有給休暇の取得の義務化などが実施されていくことが想定されますが、それらと「同一労働同一賃金」の考え方とは、根本的に異なります。
前者は、労働者が働き過ぎ等によって健康を害することのないように国が事業主を規制する内容なのに対して、後者は、正規雇用と非正規雇用との不合理な待遇差を解消するという、国のある種のバランス感覚が働いた政策だといえます。
仕事内容や労働時間、それに対する賃金は、雇用する側と働く側との合意によって決定されるものです。
最低賃金などの縛りはあるにせよ、当事者が納得している労働条件については、他人が干渉することはできないのが原則です。
この原則の一部を、国の政策によって修正しようとするのが「同一労働同一賃金」ですから、そもそもわかりにくい内容ということができます。

同一労働同一賃金の目的とは

同一労働同一賃金の具体的な考え方については、2016年12月20日に公表された「同一労働同一賃金ガイドライン案」に示されています。
今回国会に提出された働き方改革関連法案が成立した際には、このガイドライン案が正式なガイドラインとなり、具体的な判断をしていくうえでの一定の基準とされることになります。
その意味では、法改正は少し先になるにしても、ガイドライン案に示されている内容を参考に、いまから実務的な準備をしていくことは非常に重要です。
ガイドライン案の前文では、同一労働同一賃金の目的は、正規雇用と非正規雇用との間にある基本給や手当、福利厚生等をめぐる「不合理な待遇差の解消」としており、あらゆる格差を解消して完全な均等待遇を図ることを目指しているわけではありません。
したがって、両者に待遇差が存在する場合に、何をもって「不合理」と判断するかが非常に重要になります。
この点について、前文には「ガイドライン案の趣旨」として、「本ガイドライン案は、いわゆる正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間で、待遇差が存在する場合に、いかなる待遇差が不合理なものであり、いかなる待遇差は不合理なものでないのかを示したものである。この際、典型的な事例として整理できるものについては、問題とならない例・問題となる例という形で具体例を付した。なお、具体例として整理されていない事例については、各社の労使で個別具体の事情に応じて議論していくことが望まれる」と書かれています。
つまり、ガイドライン案に示されたのはあくまで「典型的な事例」なのであり、ここに示されていない論点については、「各社の労使で個別具体の事情に応じて議論していくこと」とされています。
事例に当てはまらない具体的な論点については、国は労使の自主性を尊重し、折衝や協調に期待しているというのが、ここで示されている考え方です。
さらに前文には、「今後、各企業が職務や能力等の内容の明確化と、それに基づく公正な評価を推進し、それに則った賃金制度を、労使の話し合いにより、可能な限り速やかに構築していくことが、同一労働同一賃金の実現には望ましい」という表現も見られます。これは、「労使の話し合い」のプロセスに対する期待がより明確に示されているといえるでしょう。
このように、同一労働同一賃金の考え方は結果として平等に近づけることが求められる法整備の流れを基本としつつも、職務や能力の明確化やそれに基づく公正な評価に期待するものでもあります。
今後、具体的に実務対応を進めるにあたっては、賃金制度や評価制度の構築・運用が効果的となる場面も増えていくと考えられますので、このあたりについては後ほど整理したいと思います。

(続く)

企業実務



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