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公開日:2015年2月16日

ケース別レッスン 退職金は「どんなとき」「どこまで」カットできるか 月刊「企業実務」 2015年2月号

吉村雄二郎(弁護士)

企業実務TOPICS(総務・人事)


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退職金は、就業規則に規定されている範囲でカットすることができますが、その半面、労働者とのトラブルも生じやすくなります。

どのようにすればリスクを回避できるのかを探ります。


退職金をカットする際のリスク・留意点とは

労働者が退職時に企業から支給される一時金のことを、一般に退職金(または退職手当・退職慰労金)といいます。

一方、その支払いが年金方式で行なわれる場合には、「退職年金」あるいは「企業年金」とも呼ばれます。

退職金の性格については、

  1. 労働者が毎期に受け取れるはずの賃金の一部を使用者が積み立て、それらの合計を退職時にまとめて支給するもの(賃金の後払い)
  2. 在職期間中の企業に対する功労・貢献の度合いに応じて支給される報奨金(功労に対する報奨)
  3. 退職後の生活保障

などの考え方があります。
ただし、いずれかの性格だけに限定される場合は少なく、実際には3つの性格が混在しているケースがほとんどと考えられます。

どれを重視すべきかは、各企業における退職金制度の成り立ち、構成のいかんによるといえるでしょう。

2.の退職金の功労報奨としての性格からすると、企業への功労がなく、むしろ背信的行為を行なって退職する労働者に対しては、報奨金としての退職金を支払う理由はありません。
このため、企業秩序を乱して懲戒解雇された労働者などには、退職金を支払わない、またはカットする企業も多く存在します。

しかし、1.賃金の後払い的性格、または3.生活保障としての効用を考えると、退職金の不支給・カットは、その後に退職金請求の紛争リスクを孕むことになります。

実際、退職金の不支給・カットにより、労働者が企業を相手取って退職金全額の支払いを求めて法的措置(労働審判・訴訟等)を提起することは決してまれではありません。

そこで以下、退職金の不支給・カットに関して、法的リスクを踏まえた対応について説明します。


退職金規程中の不支給・カット規定の留意点

退職金の不支給・カットは、あらかじめ退職金規程等に明記されてはじめて労働契約の内容となり、それを行なうことができます。

また、退職金規程等に不支給・カットとなる場合が明記してあっても、その規定に該当しない場合は行なうことはできません。

図表1は、不支給・カットを行なうべき場合を明記した退職金規程の具体例です。

図表1 退職金規程中の不支給・カットの規定例
退職金規程に記載すべき不支給・カットに関するポイントは、次のとおりです。

(1)退職金の不支給(没収)だけではなく、カットできることも明記する

退職金の不支給は、労働者にとって不利益となる度合いが強いため、裁判で無効と判定されることは少なくありませんが、一部をカットすることを許容する裁判例は多く存在します。

そこで、不支給が法的に無効となることを回避するために、事案に応じて柔軟な対応ができるよう、カットについても規定しておくべきでしょう。

(2)懲戒解雇・諭旨解雇をしない場合であっても、不支給・カットを行なえるようにしておく

懲戒解雇や諭旨解雇に相当する事実があっても、事案によっては普通解雇や自主退職により退職する場合もあり得ます。
また、自主退職後に、懲戒解雇・諭旨解雇に相当する事実が判明することもあります。

これらの場合でも、退職金の不支給・カットを行なうべき場合がありますが、その旨、規程に明記しておかなければ、実際に不支給・カットはできません。

(3)不支給・カットだけでなく退職金の返還についても定める

後述のとおり、退職金が支給済みの場合、返還規定を明記することにより返還を求めることができます。

(4)規定を新設・変更する場合は労働者の同意を得る

退職金の不支給・カットを行なう規定を新設・変更する際は、退職金の支給を限定する変更となりますから労働条件の不利益変更に該当し、その合理性が問われます。
そのため、労働者に対し、新設・変更の合理性を説明したうえで、できれば労働者の同意を取り付けたほうが安全です。



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