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公開日:2013年11月16日

育児・介護休業、私傷病休職… 復職後の「職務変更」「賃金減額」の適法・違法の分岐点 月刊「企業実務」 2013年11月号

湊信明(弁護士)/野坂真理子(弁護士)

企業実務TOPICS(総務・人事)


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育児・介護休業や私傷病での休職などから職場復帰した従業員の職務変更や賃金減額について、労使が法廷で争う事例が増えています。
その法的な側面と適法・違法の判断ポイントを解説します。


復職した従業員の基本的な取扱い

育児休業等からの復職

育児・介護休業法では、労働者が育児休業や介護休業(以下、「育児休業等」といいます。)を取得したことを理由として、当該労働者に対し解雇その他不利益な取扱いをしてはならないと定められています(10条、16条)。
「解雇その他不利益な取扱い」とは、解雇、賃金減額等の明白な不利益措置に限りません。
不利益な配置転換や、昇進・昇格の人事考課において不利益な評価を行なうことなど、多岐の事項が含まれます(図表1参照)。

■図表1 育児休業等からの復職後に禁止される不利益な取扱い

(1)解雇すること

(2)期間を定めて雇用される者について、契約の更新をしないこと

(3)あらかじめ契約の更新回数の上限が明示されている場合に、当該回数を引き下げること

(4)退職または正社員をパートタイム労働者等の非正規社員とするような労働契約内容の変更の強要を行なうこと

(5)自宅待機を命ずること

(6)労働者が希望する期間を超えて、その意に反して所定外労働の制限、時間外労働の制限、深夜業の制限または所定労働時間の短縮措置等を適用すること

(7)降格させること

(8)減給をし、または賞与等において不利益な算定を行なうこと

(9)昇進・昇格の人事考課において不利益な評価を行なうこと

(10)不利益な配置の変更を行なうこと

(11)就業環境を害すること

※平成16年厚生労働省告示460号「事業主が講ずべき措置に関する指針」より

罰則は特段定められていませんが、この規定に違反する措置は民事上無効であると考えられていますし、労働者に財産的損害や精神的苦痛が生じた場合には損害賠償請求の対象にもなり得ます。

もっとも、本条で禁止されるのは、あくまでも育児休業等の取得自体を理由として取扱いがなされた場合です。
当該労働者の復職後の状況に応じて労働条件の変更を行なうことが直ちに違法となるわけではありません。

そもそも使用者には、労働契約の範囲内において、労働者をどこに配置しどのような業務に従事させるかを決定する権限(人事権)があります。
必要性があれば復職後の労働者に対しても、人事権に基づいて職務変更や配置転換を行なうことが可能です。

仕事給制度や職能給制度など、これらに従い賃金変更を行なうことができる明示的な根拠が就業規則等にある場合には、賃金の減額も有効であるとされています。

ただし、人事権の行使も、それが必要かつ合理的な理由に基づくものでなければ、人事権の濫用となり無効となります。
特に賃金の減額を伴う場合には、裁判所における合理性の判断が厳格になされる傾向があります。

私傷病休職からの復職

私傷病による休職制度を設けている場合、当該復職者について休職したこと自体を理由として不利益な取扱いを行なうことは、やはり私傷病休職制度の趣旨を逸脱するものであり、原則として認められないと考えられています。

厚生労働省が発表している「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」(平成21年3月改訂)においても、まずは元の職場へ復帰させることを原則としています。

もっとも、医師の診断書によれば直ちに従来の業務を担当することができないと判断されるなど、以前の担当業務より軽易な作業に従事させる必要が生じる場合もあります。
また、うつ病の原因が休職前の職場の環境にあるなど、むしろ配置転換が望ましいと考えられる場合もあるでしょう。
その場合、会社は育児休業等の場合と同様に、人事権に基づき職務変更や配置転換を行なうことができ、明示的な根拠があれば賃金の減額も可能です。

人事権の濫用にならないかに留意することに加えて、私傷病休職の場合には安全配慮義務についても意識する必要があります。
会社は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう必要な配慮をすべき義務を負っています(労働契約法5条)。
私傷病休職からの復職時は疾病が完治していないケースも多く、回復状況や担当業務の内容・量・質に応じて労働者の健康状態が悪化しないよう、通常以上に配慮しなければなりません。
少なくとも原職より負担の大きい職務への変更は避けるべきでしょう。



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