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公開日:2013年4月16日

厳密な労務管理が前提 有期労働契約の試用期間を設定・運用する際の留意点 月刊「企業実務」 2013年4月号

多田正裕(社会保険労務士)

企業実務TOPICS(総務・人事)


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正社員として雇用する前段階として、いったん有期雇用契約を結び、問題がなければ本採用するという手法がありますが、その運用には注意が必要です。想定される問題と対応策を解説します。


会社が社員を雇用する場合、適性や能力を判断するために「試用期間」を設けることが一般的です。

しかし実際は、試用期間中であるからといって簡単に社員を辞めさせることができるわけではありません。
そのため、まずは有期契約を締結して一定期間勤務してもらい、その期間中に労働者の適性や能力を判断したうえで、問題がなければ正社員として正式に採用するという方法を取っている中小企業も少なくありません。
会社としては採用後のリスクを少なくできるために都合がよい方法ですが、その設定や運用を間違えると大きな問題が生じる可能性があります。

試用期間の法的性格と有期契約の試用期間

試用期間とは

試用期間とは、採用後に会社が社員の適性や能力を判断・評価するために設ける一定の期間です。
法律に明文化されてはいませんが、判例により「解約権留保付き労働契約」であると定義されています。(三菱樹脂事件最大判昭48・12・12)。

つまり、試用期間中に採用前ではわからなかった問題が生じたり、社員に適性や能力がないと判断された場合には、会社は留保していた解約権を使い、試用期間中や満了時に雇用契約を終了(本採用拒否)することができるとされているのです。

ここで注意しなければならないのは、試用期間中や満了後に退職してもらうことは、本人の同意を得ない限りは「解雇」となることです。

そのため、客観的にみて合理的な理由があり、かつ社会通念上相当であると認められない場合には、解雇権の濫用として解雇そのものが無効と判断されてしまいます(労働契約法16条)。

試用期間中のほうが、通常の場合よりも広く解雇が認められるといわれます(図表1)

図表1 試用期間と解雇基準の関係
ただし、近年は解雇の正当性が認められる判断基準が厳しくなっている傾向があり、試用期間といえども簡単に本採用拒否をすることはむずかしいといえます。
たとえば試用期間中の解雇が無効と判断された判例として、ニュース証券事件(東京高判平21・9・15)があります。
この判例では、中途入社で6か月の試用期間を定めた正社員を、「営業担当としての資質に欠ける」という理由で入社から3か月強の時点で解雇しようとしたところ、その解雇は無効とされました。

有期契約の試用期間

正社員として採用した場合の雇用契約は、「期間の定めのない契約」に該当します。
試用期間を定めている場合でも、採用当初からのワンセットの契約であり、試用期間中や満了時に本採用拒否を行なう場合には、解雇に準じた基準により判断されますので、簡単に辞めさせることはできません。

そこで、中小企業を中心に、試用期間を「期間の定めのある契約(有期契約)」として結ぶケースがあります。

「試用期間=契約期間」であるため、その期間中の勤務状況や仕事ぶりをみて、適性や能力に問題があると判断した場合には契約満了にて終了とし、問題がなければ正社員として本採用を行なうというやり方です。
これは一見、会社が負うリスクがない方法に思えますが、実際の運用では注意しなければならないことがあります。

有期契約であっても、それが試用期間と解されると判断された場合には、通常の試用期間と同様の取扱いになるという判例があります(神戸弘陵学園事件最三小判平2・6・5)。

この判例では、形式として有期契約を締結していたとしても、それが労働者の適性を評価・判断する目的であれば、「契約期間満了によりその契約が当然に終了する」という明確な合意がなされているといった特別の事情が認められる場合を除き、試用期間として取り扱われるとしています。

つまり、こうしたケースに認定されれば、法律的には期間の定めのない契約を結んでいて、かつ、有期契約の期間は試用期間に該当するということになります。

そうなると、結果的に有期契約にしたとしても、通常の試用期間と同じ基準で本採用拒否が許される場合でない限り、期間満了という理由だけでは雇用契約を終了させることはできなくなってしまうのです。



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