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公開日:2012年5月16日

賃金抑制を重視するのは危ない 「定額残業代制」の運用の実際とリスク対策 月刊「企業実務」 2012年5月号

加藤智則(社会保険労務士)

企業実務TOPICS(総務・人事)


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労働時間と成果が連動しない業種・職種では、残業代を定額で支給したほうが、労働の実態に即すケースがあります。適切に定額残業代制を導入・運用するためのポイントをまとめました。


定額残業代制とはどのようなものか

筆者が社会保険労務士業界に入った12年前頃にはすでに、定額(固定)残業代制という概念はありました。
最初の頃は「きな臭い」というイメージが強く、積極的に導入も勧めていませんでした。

しかし、時は経ち、定額残業代制に関する司法の判断も積み重なり、それ自体が違法ではないと判断されるようになりました。
行政側でも適正な定額残業代制については目くじらを立てることはなくなっています。

また、最近、社会問題となりつつある未払残業代請求における経営者側の数々の敗訴事例を見ていると、「経営者側が被害者ではないか?」と思われるケースもあります。
クレーマー社員からの法外な要求に対するリスクヘッジとしても、定額残業代制が有効な対策だと思うようになりました。

そもそもこの制度は、いまだに第2次産業を対象とした時代にマッチしていない労働基準法への合法的な対応策として考え出されたという経緯があります。
適正な定額残業代制導入は会社経営におけるリスクヘッジになり得ます。

しかし、安易な人件費抑制策としてこの定額残業代制を導入すると必ず失敗します。

行政官庁による指摘。従業員のモチベーションの低下、反発。そして無駄な争いの勃発。ユニオンへの駆け込み、訴訟の提起、そして裁判での敗訴……。

安易に人件費のみの削減を考え定額残業代制を導入し、不適正な運用を続けると人件費の削減どころか無駄な出費を招くこともあります。


定額残業代制が有効な職種とは

適正な定額残業代制の導入を考えるうえで、まず、定額残業代制が有効な職種、あまりなじまない職種について整理したのが図表1です。

図表1 定額残業代制が有効な職種

有効と思われる職種

図表1左の1は、名ばかり管理職として問題になることが多い労働者です。

労働基準法上、残業手当を支給する必要のない管理監督者と、会社内で俗に管理職と呼ばれている人は必ずしもイコールではありません。
会社内で管理職と呼ばれていても、中小企業の場合、ほとんどが労働基準法上の管理監督者には該当しません。

であれば、労働基準法上の管理監督者とみなして処遇するより、「社内では管理職だが労働基準法上は残業手当不要の管理監督者には該当しないので、定額残業代制を適用させている」としたほうがスッキリしますし、またリスクヘッジにもなります。

2は、通常であれば「事業場外労働のみなし労働時間制」が適用となり、勤務時間に関係なく1日8時間なら8時間労働したものとみなす、とすることができる職種です。

しかし、最近の判例の傾向をみると、こうしたみなし労働時間制の解釈については厳しい判決が相次いでいること、以前であれば営業手当を支給していることで残業も実質込みであると労使が納得していたが、その営業手当が残業の見合い分ではないと訴えられる恐れがあることなどを考えると、定額残業代制が有効かつなじむものと思われます。

3は、待機時間や移動時間などが争いになった場合にすべて労働時間と認定される恐れがあること、またある程度残業時間(拘束時間)が予想できる点が、定額残業代制を有効と考える理由です。

4は、「専門業務型裁量労働制」「企画業務型裁量労働制」の適用者として、業務に関して大幅な裁量を労働者に委ねることができる職種です。
しかし、実際には裁量労働制を適用するには行政官庁への定期的な届出が必要であり、また裁量労働制を適用すると極端な話、たとえば1日2時間しか働かなくとも成果が上がっていれば注意ができなくなってしまいます。

ある程度業務の裁量をもたせながら、労働者として時間管理をするには定額残業代制が向いていると考えられます。

5は、新人であるためどうしても労働時間が長くなる(=残業手当が増える)ことを何とかしたい、業務効率が悪いから時間がかかっているのに結果として残業手当が増えるという矛盾を解消したい場合の考えになじむケースです。

また、ホワイトカラーには労働時間ではなく成果で賃金を払いたいという考えに対して定額残業代制はマッチしているといえます。
余談ですが、士業事務所の職員で定額残業代制が導入されているケースもかなりあります。

固定残業手当がなじまない職種

労働時間=成果と判断しやすい、労働時間が長い=会社の売上も上がるという場合は、定額残業代制は向いていないといえます。

しかし、製造業が一概に定額残業代制が向いていないわけではなく、中間管理職や営業職には定額残業代制は有効といえます。業種ではなく職種単位で考えたほうがよいでしょう。



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