NJ Publishing Sales - NJ Business Online

総務・人事 | エヌ・ジェイ出版販売株式会社


【お知らせ】 月刊「企業実務」好評発売中!

Home総務・人事企業実務TOPICS(総務・人事) ≫ 黙認していませんか? 社員の「持ち帰り残業」に関するトラブル防止策...
公開日:2012年4月16日

黙認していませんか? 社員の「持ち帰り残業」に関するトラブル防止策 月刊「企業実務」 2012年4月号

中川清徳(社会保険労務士)

企業実務TOPICS(総務・人事)


このエントリーをはてなブックマークに追加  

パソコンの普及により昨今では持ち帰り残業が生じやすい環境にありますが、事業主の目の届かない場所で仕事が行なわれることから様々な問題が浮かび上がっています。
リスク管理として押さえたい要点を学びましょう。


持ち帰り残業はこういう会社で起こりやすい

東京都産業労働局労働相談情報センターの「平成20年度労働時間管理等に関する実態調査」によると、仕事を自宅等に持ち帰ってする、いわゆる持ち帰り残業を、「ほぼ毎日」もしくは「時々」していると回答したのは全体の2割超でした。

役職別にみると部長級と主任級、部門別では対人サービス部門において、その割合がほかと比べて多くなっています。
持ち帰り残業をする理由は、多い順で次のようになっています。

  • 自宅のほうが仕事がはかどる
  • 自分が納得する成果を出したい
  • 勤務先で残業規制があり帰宅せざるを得ない

また、この理由を役職別にみると「自宅のほうが仕事がはかどる」という回答が最も多いのが部長級、次いで一般社員、主任級と続きます。

「自分が納得する成果を出したい」という回答が多かったのは係長級と課長級となっています。
「自宅のほうが仕事がはかどる」「自分が納得する成果を出したい」という理由で仕事を持ち帰る場合は本人の意思です。

しかし、次のケースに当てはまる場合、「100%本人の意思」で持ち帰り残業をしているとは断定できないでしょう。

  • 定時退社が奨励されているため残業がしづらいムードがある
  • 残業時間の上限(「月20時間まで」など)を設定し、それ以上の居残りを厳しく規制する
  • 省エネ対策として早めの消灯をするので会社で残業ができない
  • こなしきれない仕事量が期限付きで与えられる

以上のようなケースに該当する場合は、会社が意図しないところで社員の持ち帰り残業が常態化するおそれがあります。

そのほか、喫煙習慣のある社員が持ち帰り残業をする傾向もみられます。
これは、受動喫煙防止の対策として会社が全面禁煙となったことを受け、「喫煙しながら仕事がしたい」という自身の希望から、持ち帰り残業をすることが増えたようです。

また、育児や介護の都合で業務を自宅に持ち帰ってこなしているケースも多くみられます。

労働時間に当たる場合と当たらない場合の違い

持ち帰り残業は残業代(深夜割り増しを含む)を払う義務が事業主にあるのでしょうか。

それをはっきりさせるために、そもそも労働時間とは何かを明確にする必要があります。
労働基準法は次のようになっています。

(労働時間)
第32条 使用者は、労働者に、休憩時間を除き1週間について40時間を超えて、労働させてはならない。
2 使用者は、1週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き1日について8時間を超えて、労働させてはならない。

このように労働基準法は労働時間について規制しているものの、「労働時間とは何か」については定義がありません。
労働基準法について、行政解釈を中心に裁判例や学説等の引用を加えて解説している『労働法コンメンタール』では、「労働時間」の定義を示しています。
それによると、「労働時間とは使用者の指揮監督下に置かれている時間をいう」「使用者の指揮監督下とは明示的なものである必要はなく、現実に作業前に行なう準備や作業後の後始末、掃除等が使用者の明示または黙示の指揮命令下に行なわれている限りそれも労働時間である」となっています。
労働基準法32条の労働時間について弁護士の安西愈氏は、原則として次の5項目の拘束(指示命令)を使用者から受けて事業目的のために肉体的精神的活動を行なっており、労働から解放されていない時間としています。

  1. 一定の場所的な拘束下にあること(どこで業務や作業等の行為を行なうか)
  2. 一定の時間的な拘束下にあること(何時から何時まで行なうか、どのようなスケジュールで行なうか)
  3. 一定の態度ないし行動上の拘束下にあること(どのような態度や秩序、規律などを守って行なうか)
  4. 一定の業務の内容ないし遂行方法上の拘束下にあること(どんな行為(業務)をどのような方法、手順で行なうか)
  5. 一定の労務指揮権に基づく支配ないし監督的な拘束下にあること(それを上司の監督下や服務支配下に行なう必要があるか、自己の自由または任意か、それを行なわないことで懲戒処分や上司からの叱責を受けたり、賃金・賞与等の取扱い上で不利益を受けるものであるか)

これらの5項目すべての拘束要件を満たし、業務あるいは一定の使用者の事業のためになしている行為と評価される時間が原則として労働時間とみなされます。
安西弁護士の定義する労働時間を持ち帰り残業に当てはめると、

  1. 場所的な拘束がない
  2. 労働時間の拘束がない
  3. 行動はテレビを観ながら、あるいは飲酒しながらでも差し支えない
  4. 作業手順が自由である
  5. 使用者の具体的な指揮監督が及んでいない

となり、5項目のいずれにも該当しないことから労働時間とはなりません。
したがって、仮に持ち帰り残業について社員から残業代の支払いを請求されたとしても、持ち帰り残業は労働時間ではないので、原則として賃金の支払い義務は生じません。



このエントリーをはてなブックマークに追加  




PAGE TOP