岡本博美(税理士)
一般の取引先とは異なり、関係会社間では法人税法等の原則にそぐわない経理・税務処理が行なわれがちです。
ここでは、関係会社間で問題になりやすい取引を取り上げ、正しい処理方法について解説します。
関係会社間取引は、第三者間取引と比べて恣意性の介入する余地があるため、税務調査で厳しく指摘される可能性があります。
たとえば、一方の法人が繰越欠損金を有していて、資金繰りも厳しいからと、他方の法人から有利な取引条件を設定することは容易にできてしまいます。
しかしながら、関係会社とはいえ別会社ですから、このような取引を実行していると、寄附金と認定される可能性があります。
なお、平成22年度の税制改正により、いわゆるグループ法人税制が創設され、関係会社間の取引であっても100%グループ内の法人間の取引であるか否かにより、取扱いが大きく異なることになりました。そのあたりも踏まえて解説していきます。
寄附金の額のうち、法人による完全支配関係がある法人に対するものは、全額が損金の額に算入されず、寄附金を収受した法人は、受贈益の全額が益金の額に算入されません。
ただし、親法人については、子法人の株式の寄附修正の処理が必要になります(図表1)。
完全支配関係会社間で寄附が行なわれた場合には、その親法人において、子法人の税務上の株式簿価の修正を行ないます。
たとえば、A社がB社に100の寄附を行なった場合には、X社所有のA社株式の税務上簿価から100を減額させ、B社株式の税務上簿価は100を加算させる処理を行ないます。
寄附金の額のうち、国外関連者に対するものは、損金の額に算入されません。
国外関連者とは、外国法人で、その法人との間にいずれか一方の法人が他方の法人の発行済株式・出資(他方の法人が有する自己の株式・出資を除く)の総数・総額の100分の50以上の数・金額の株式・出資を、直接・間接に保有するなど特殊な関係をいいます。
寄附金の額のうち(1)および(2)以外については、損金算入限度額を超える部分の額が損金の額に算入されません。
一般寄附金の損金算入限度額の算出の方法は、図表2のとおりです。
受贈益の額のうち、法人による完全支配関係がある法人からの受贈益は、全額が益金の額に算入されません。
この受贈益は、相手方においては寄附金の損金不算入となりますので、グループ全体としては課税関係は生じません。
無償による資産の譲受けその他の取引から生ずる収益の額は、益金の額に算入します。