NJ Publishing Sales - NJ Business Online

経理・税務 | エヌ・ジェイ出版販売株式会社


【お知らせ】 「できる社員の仕事力養成講座」 好評発売中です

Home経理・税務企業実務TOPICS(経理・税務) ≫ 対象企業を限定 段階的に廃止される貸倒引当金の処理はこうする...
公開日:2012年12月17日

対象企業を限定 段階的に廃止される貸倒引当金の処理はこうする 月刊「企業実務」 2012年12月号

高岸直樹(税理士)

企業実務TOPICS(経理・税務)


このエントリーをはてなブックマークに追加  

平成23年12月の税制改正により、一部の法人を除き貸倒引当金の繰入れが税務上の損金とされなくなりました。経過措置も設けられてはいますが、ここでは貸倒引当金の処理について解説します。

そもそも貸倒引当金とは何か

図表1 企業会計における債権の区分 図表2 個別評価金銭債権の繰入限度額 貸倒引当金は、金銭債権等に取立不能のおそれがある場合に、取立不能見込額として計上される引当金です。
企業会計では取立不能のおそれがある場合、貸倒引当金を計上しなければなりません。
債権を3つに区分し、区分に応じた方法で取立不能見込額を算定します(図表1)

貸倒引当金繰入額は企業会計上の費用とされますが、必ずしも全額が税務上の損金とされるわけではありません。
貸倒引当金繰入額として費用計上した金額のうち、一定額までを税務上の損金額に算入することができます。

税務上の貸倒引当金の繰入限度額は、(1)個別評価金銭債権と(2)一括評価金銭債権に区分して計算します。

(1)個別評価金銭債権の貸倒引当金繰入限度額は、債務者に生じた事由に応じて債務者ごとに取立不能見込額を計算します(図表2)

対象となる債権は①売掛金、貸付金その他これらに準ずる金銭債権、②その他の金銭債権です。

個別評価貸倒引当金では、金銭債権であれば対象となる点が特徴です。たとえば、差入保証金や前渡金であっても、その返還を求めたのであれば返還請求権という金銭債権となり、②その他の金銭債権にあたるので、税務上も貸倒引当金の繰入れが認められることになります。

これに対して、(2)一括評価金銭債権の繰入限度額は、事業年度末の一括評価金銭債権に貸倒実績率を乗じ、対象となる債権について一括して計算します。

一括評価貸倒引当金の対象となる債権は、①売掛金、貸付金その他これらに準ずる金銭債権であり、②その他の金銭債権は対象とされていません。

図表3 中小法人の法定繰入率つまり、対象となる債権を売上債権等に限定しており、仕入割戻の未収金や費用の前払い・一時的な立替金などは対象とならず、個別評価貸倒引当金の対象債権よりも範囲が狭くなっています。個別評価貸倒引当金の計算の対象となった債権も含まれません。

なお、資本金1億円以下の中小法人等では貸倒実績率に代えて、法定の繰入率により計算することが認められています(図表3)

貸倒実績率よりも法定の繰入率のほうが高い率になるのが一般的であるため、中小企業では法定の繰入率により一括評価金銭債権の繰入限度額を計算していることが多いようです。


平成23年12月税制改正と経過措置の内容

図表4 新制度における実務上の貸倒引当金繰入れの可否平成23年12月税制改正で税務上の貸倒引当金制度が改正されました。
平成24年4月1日開始事業年度から適用法人を、
①資本金1億円以下の中小法人等
 (資本金5億円以上の大法人の完全子会社等を除く)
②銀行・保険会社等
③このほか、リース債権を有する法人等

に限定し、③の法人では繰入対象となる金銭債権等についても限定されました(図表4)

このため、①~③以外の法人では、税務上の貸倒引当金が廃止されたことになります。

しかし、貸倒引当金を廃止することによる急激な税負担増を回避するため、平成24年4月1日から平成27年3月31日までに開始する事業年度において、改正前の制度に基づいた貸倒引当金繰入額について、毎年4分の1ずつ3年間にわたり繰入限度額が逓減する経過措置が設けられています。

たとえば、毎事業年度ごとに計算する「改正前の貸倒引当金繰入限度額」が常に同額の1,000であるA社で考えてみましょう。
図表5 繰入限度額の経過措置の適用例平成24年4月1日から平成25年3月31日までに開始する事業年度では、当該年度の改正前の規定による繰入限度額1,000の4分の3に相当する金額750を経過措置による繰入限度額とし、以後は、平成24年4月1日~平成26年3月31日までに開始する事業年度では同様に4分の2の500、平成26年4月1日から平成27年3月31日までに開始する事業年度では4分の1の250とされます(図表5)

つまり、同額の一括評価金銭債権のみをもつ場合、毎年4分の1ずつ繰入限度額が減少します。
実際には毎事業年度ごとに金銭債権等の額は異なるのが一般的であり、「改正前の貸倒引当金繰入限度額」の計算は当該年度の金銭債権等の額が基礎になることに注意してください。

なお、経過措置の適用を受ける場合は貸倒実績率の計算にも留意する必要があります。
貸倒実績率は、前3年内事業年度の貸倒損失と売掛債権等を対象とした個別評価貸倒引当金繰入額から個別評価貸倒引当金戻入額を差し引いた額を分子とし、前3年内事業年度の一括評価金銭債権の合計額を分母として計算します。

経過措置を適用すると、この個別評価貸倒引当金繰入額は毎年4分の1ずつ逓減し、その逓減分の洗い替えによる翌期の戻入額も減少します。
このため、経過措置を用いた後の個別評価貸倒引当金繰入額・戻入額を用いると、貸倒実績率が本来の値より小さくなるという問題が生じます。

そこで経過措置の適用を受ける場合も、貸倒実績率の計算では、改正前の個別評価貸倒引当金繰入額・戻入額を用いて計算することとされているのです。




このエントリーをはてなブックマークに追加  



PAGE TOP