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公開日:2018年1月22日

職場で共有したい「ADHD」との付き合い方 月刊「企業実務」 2017年12月号

岩田由美(社会保険労務士)


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ADHD」とは、発達障害の一種です。
 
発達障害は、生まれつき脳の一部の機能に障害がある人に現われ、「注意欠如・多動性障害(ADHD)」のほか、「自閉症」「アスペルガー症候群」「学習障害」など、いくつかの種類に分類されています。それぞれの症状は、下図のとおりです。
 
発達障害では、同じ人に異なるタイプの発達障害が併発することも珍しくありません。同じ障害であっても、人によってまったく異なる症状が見られることもあり、個人差の大きい障害といえます。
 
ADHDの特徴は、年齢に見合わない多動-衝動性、あるいは不注意、またはその両方の症状が見られることです。

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そのような症状は、大体7歳頃までに現われるといわれています。学童期の子どもには3〜7%存在し、男性は女性の数倍現われ、男性の有病率は青年期には低くなりますが、女性の有病率は年齢を重ねても変化しないと報告されています。
 
ADHDは、それぞれの症状の程度によって、多動-衝動性優勢型、不注意優勢型、混合型の3つに分類されます。典型的な症状としては、次のようなものが挙げられます。

1. 多動-衝動性の症状

  • 貧乏ゆすりなど無駄な動きをする
  • 落ち着いて席に座っていられない
  • 思ったことをすぐ口に出す
  • 衝動買いをする

2. 不注意の症状

  • ケアレスミスが多い
  • 気が散りやすく注意を集中し続けることができない
  • 段取りや整理整頓が苦手
  • 忘れ物や紛失が多い
  • 約束を守れない

多動症状は、一般的には成長とともに軽くなる場合が多いです。
 
不注意や衝動性の症状は半数が青年期まで、さらにその半数は成人期まで続くと報告されています。なかにはうつ症状や不安症状を合併する人もいます。

職場でよく見られる行動・状況とは

1. 多動-衝動性、2. 不注意の症状は、たとえば職場では、次のような行動・状況に現われます。

(1)仕事に集中できない

まず、発達障害の持つ特性として、パソコンに向かっているとすぐに目が疲れる、職場のエアコンの音がやたらと気になる、脳に入ってくる情報の取捨選択が苦手、といった特性を挙げることができます。ADHAの場合は、それに加えて、気が散りやすい特性が重なるため、なかなか仕事に集中できない状況がよく見られます。

(2)仕事がなかなか覚えられない

仕事の流れというのは、基本的な手順はあっても、状況によって毎回異なる対応が求められます。いわば応用の連続です。
 
発達障害の特性として、パターン化した流れは得意でも変化は苦手、さらに人のペースに合わせることも苦手という特性があります。当事者の頭のなかでは、周りの想像以上にパニックが生じていると考えられます。
 
加えて、ADHDの場合には指導を受けている間に意識がほかのことに向いてしまう場合も多く、教えたことがまったく身に付いていないことも珍しくありません。当事者が「何度も教えてもらうわけにはいかない」と自己判断で進めてしまい、大きなミスにつながってしまうこともあります。

(3)約束が守れない

たとえば、「今日は3時に訪問する」とわかっているのに、会社を出る直前になって、「来週の会議の資料は……」とほかのことが気になって探し物を始めたりします。
 
ADHDの当事者には、思いついたことをいますぐやらないと気が済まない衝動性が見られます。
 
その場の状況や計画を考えずにすぐ行動に移してしまうのです。気になることがあると気持ちを切り替えることができず、冷静に考えれば優先度は低いとわかることであっても自分の行動をコントロールすることができず、その結果、仕事上の約束を守れなくなってしまいます。

(4)入力作業でミスが多い

パソコンの入力作業等でミスが散見されます。不注意が原因で、何度もやっている慣れた仕事でもケアレスミスが頻発する傾向にあります。
 
大事な仕事とわかっていても集中するのがむずかしいADHDの特性もあり、ケアレスミスは問題視されるところです。

(5)会議についていけない

衝動性のために頭に浮かんだアイデアや疑問をすぐ口に出してしまいます。会議の流れに沿わない発言であれば相手にされず、この状況が繰り返されると「またアイツだ」と評価を下げるだけになってしまいます。

(6)電話応対がうまくできない

ADHDの気が散りやすい特性が、目の前に相手のいない状況ではさらに顕著になります。
 
電話中に気になることが目に入ってしまったり、気になることが頭に浮かぶと、相手の言っていることは完全にすり抜けて「何を言ってたんだっけ……」となってしまったりします。
 
用件を聞くだけでも精一杯なのに、「書く」という作業も加わってくるとパニックになってしまい、メモが取れません。

(7)雑談ができない

頭に浮かんだことを自分のなかで確認せず、すぐに口に出してしまうのがADHDの特性です。
 
当然相手に不愉快な思いをさせることも多く職場の人間関係がうまくいかなくなり、それが原因で長く勤められなくなってしまうことも少なくありません。

職場での 接し方、付き合い方

ADHDと診断の付いている人は、決して仕事に対して「やる気がない」わけでも「いい加減」なわけでもなく、本人なりに一所懸命取り組んでいることは間違いありません。
 
熱心に取り組んでいるのにADHDの特性が邪魔して仕事の達成に結びつかないという困った状況は、ちょっとした工夫をすることで解決できる場合が多いです。

(1)集中できる環境をつくる

たとえば、聴覚過敏でエアコンの音が気になって仕方ないというのなら耳栓の使用を認める、視覚過敏で人一倍光を眩しく感じるようであれば照明の調整をする、目の前で人が横切るだけでも気になるならパーテーションを設置する、など過敏な感覚への刺激を少しでも和らげるための工夫をして、仕事に集中できる環境をつくるのが効果的です。

(2)自分専用のマニュアルを作成させる

相手の話を聞きながらメモを取るのが苦手なため、一度教えたからといって完璧に覚えてもらうことは期待できません。
 
職場にマニュアルがあるなら事前に渡しておく、目で見たほうが理解できる内容は図や写真を渡す、教えたことをその場でメモに取れないなら忘れないうちに記録してもらってその内容が正しいか確認する、などの手順を少しずつ積み重ねながら、当事者自身に自分専用のマニュアルを作成させるのが確実です。

(3)自分の行動にかかる時間を把握してもらい、スケジュールに「余裕時間」を組み込む

「3時に訪問する」のであれば、何時に会社を出るつもりなのか、持参する資料等を準備するにはどのくらい時間がかかるのかなどを逆算してもらいます。そのうえで、「約束」を実行に移す時刻を認識してもらいます。
 
その際、万一脱線しても遅刻することのないよう、スケジュールには「余裕時間」を組み込んでおきましょう。

(4)入力したデータを確認する仕組みをつくる

紙のデータを入力する場合は、入力している箇所に定規を置いて見やすくする、入力が終わったら印刷してチェックする、パソコン上で入力画面を限定して表示するなど、ツールをうまく使い、入力したデータに間違いがないか確認できる仕組みをつくりましょう。

(5)会議は「予習」を指示し、発言の前に一呼吸おかせる

会議の予定が決まったら「出席者」「会議の目的」「議題」などを事前に把握して、専用の資料を作成し、ADHD当事者の仕事に関係する部分について質問や意見をまとめてもらいます。
 
会議当日は、用意しておいた質問や意見が話題になったタイミングで発言してもらい、話題にならなかった場合は、会議終了間際に発言させるなどするとよいでしょう。
 
途中で発言したくなった場合は、すぐ口に出すのではなく一呼吸おくことを心がけさせます。会議中の行動をある程度定めておいて、周りから浮かない工夫をしましょう。

(6)電話応対マニュアルと電話応対専用のメモ用紙を作成する

受けた電話が自分あてでない場合には、特に混乱する傾向にあります。
 
引継ぎのパターンを応対マニュアルとして作成し、そのとおりに応対させるのが有効です。
 
メモを取るときも「誰あてに」「誰から」「用件は」を簡潔に残せる電話応対専用のメモをつくっておくと、重要な情報を聞き逃すことが少なくなります。

(7)話を聞く姿勢を身につけさせる

雑談などで、人と話をする際には、無理に発言しようとするよりも相手の話を聞くように努めさせるとよいでしょう。
 
「話している相手の顔を見て、うなずく、相槌を打つ」などの聞く姿勢を身につけてもらうことで、コミュニケーションのトラブルが減らせるはずです。

個々の特性に合った支援と対応を

職場で見られるADHDの特性は、程度の差はあれ誰もが持ち得る傾向といえるかもしれません。
 
大事なことは、当事者が何に困難を感じ、周囲にどんな影響を与えているのかを見極めたうえで、「この人には、この場合、このような支援援が必要」と、個別に具体的な支援をするよう努めることではないでしょうか。
 
「ADHDだから」にこだわり過ぎず、個々の特性に合わせて必要な支援や配慮のできる職場環境を整えることは、結果として当事者以外の社員にとっても働きやすい職場環境を整えることにつながるでしょう。


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