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公開日:2011年3月18日

遠隔地の売掛金を貸倒損失とする場合の基準は 月刊「企業実務」 2011年3月号

植田卓(税理士)

実務相談室


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[問]福岡で金属部品の受注生産をしている従業員40名のメーカーの経理部長です。北海道の会社に15万円ほどの滞留売掛金があり、取立に行くとすると旅費と宿泊費で約12万円ほどかかりそうです。
従業員の人件費も考えると、取立費用が滞留売掛金の額に届くかどうか微妙なところです。この場合、売掛金を貸倒損失として計上することはできるのでしょうか。

(福岡県O社)

[答]遠隔地の売掛金が滞留して取立費用に満たない場合には、貸倒損失を計上することができますが、その場合の取立費用とは、現地へ取立に行くために要した直接費用をいうものとされています。
したがって、交通費、宿泊費、通信費、日当その他の諸経費については取立費用に該当しますが、取立に行った従業員の人件費相当額については、それに含まれないものであると解されます。
なお、現地での取引先が複数ある場合には、それらの回収額の総額と取立費用とを比較して、それでも取立費用が上回る場合に限られます。


ポイント解説

1.遠隔地の売掛金の貸倒損失計上に関する基本通達の内容

遠隔地にある取引先の売掛金が滞留した場合に、取立費用が回収額を上回るのであれば、その売掛金に対して貸倒損失を計上することができます。

これは、法令で決められているのではなく、法人税基本通達のなかで明らかにされています。

法令とは、法人税法、租税特別措置法などの法律、政令、省令等を指し、すべて納税者を直接拘束します。

一方で通達とは、国税庁長官が職員に対して税法の解釈等に関してすべての税務署で同一の行動をとらせるために発した、いわば職務命令のようなものです。

なぜこのような事柄に触れるのかといいますと、表面的な文言が重要になる法令に対して、法令の解釈の指針を示した通達は、その文言よりも解釈の仕方がポイントになるからです。

遠隔地の売掛金の貸倒れに関連する通達には、その条件として「法人が同一地域の債務者について有する当該売掛債権の総額がその取立てのために要する旅費その他の費用に満たない場合において、当該債務者に対し支払を督促したにもかかわらず弁済がないとき」(法人税基本通達9-6-3のうち該当部分)と記載されています。

そもそも、貸倒損失を損金の額に算入することを法令で規定していない理由は、その事業年度において損失として認識されたものは当然に損金の額に算入されるからです(法人税法22条3項3号)。

しかし、貸倒れによる損失が発生しているかどうかを客観的に把握することが困難なケースも少なくないことから、国税庁は貸倒損失を認識する基準を、法人税基本通達によって職員に対して示しているのです。

2.取立費用の範囲

先に挙げた通達は、ある地域の取引先を集金して回る際に、集金すべき金額の総額よりも旅費等の経費が上回り、なおかつ督促しても弁済してもらえない場合には、経済的合理性の観点から、貸倒損失を認めようという趣旨のものであると解されます。

ただし、未払いの売掛金を回収する場合には、回収の担当者がその分の時間を費やすことになります。もし回収ができなければ、その労力を時間換算して求められる人件費相当額が、結果的に無駄になってしまうケースも珍しくありません。ただ、それは信用販売という形態を採用する以上、やむを得ないことだといえます。

したがって、通達でいう取立費用(旅費その他の費用)とは、交通費、宿泊費、通信費、出張の日当など、取立のために直接要した費用を指しているものであると解され、従業員の人件費相当額はそれに加えないとされています。

3.通達の解釈を適用する場合の注意点

基本通達でいう遠隔地に対する売掛金の貸倒損失については、費用対効果を前提にした経済的合理性をもとに考えられています。

したがって、取立費用が上回るかどうかの基準となる回収額は、滞留している取引先の売掛金だけでなく、その地域にある取引先の回収額全体で判定することに注意しましょう。

なお、貸倒損失の形式基準で多く利用されている1年基準は、継続的な取引先について資産状況や支払能力等が悪化したことによる滞留を前提としていますが、遠隔地の売掛金の貸倒損失については、これらの事項に関係なく、督促しても弁済がなければ認められます。


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