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公開日:2011年2月18日

海外赴任に備えて受講させた語学講習は労働時間になるのか 月刊「企業実務」 2011年2月号

坂井求(特定社会保険労務士)

実務相談室


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[問]当社では、中国に勤務させる予定の従業員に対して、会社が全額を負担して半年間の中国語講座を受講させています。講座は夜に行なわれるので、従業員は終業後に受講していますが、最近、そのうちの1人から、「これは労働時間になるのではないか」といわれました。
労働時間になるのなら、賃金の問題などが出てきますが、どうなのでしょうか。

(神奈川県K社)

[答]語学講座に参加しない従業員に就業規則上の制裁や人事考課上の不利益な取扱いがなされるのであれば、受講時間は労働時間となり、賃金の支払い義務が発生します。
また、会社の命令ではなく自発的な参加であったとしても、実際にその講座を受講しないと今後の業務遂行に支障が生じるようであれば、従業員としては出席せざるを得ないわけですから、受講を強制していることになります。したがって、この場合も労働時間となります。このような点をふまえて検討する必要があります。


ポイント解説

労働時間の定義

労働基準法上、賃金を支払う必要が生じる労働時間とは、「労働者が使用者の指揮監督の下にある時間」を指します。

この「指揮監督の下にある」状態には、使用者側の黙示の指示も含みます。たとえば、「残業をしなさい」と命令していなくても、残業をしないと期限に間に合わないような仕事量を与えることは、残業を命じているのと同じであり、「指揮監督の下にある時間」、つまり労働時間となります。

この点をふまえ、従業員が語学講座等の教育訓練に参加する時間が労働時間となるかについて考えてみましょう。

これに関して、通達では「労働者が使用者の実施する教育に参加することについて、就業規則上の制裁等の不利益取扱による出席の強制がなく自由参加のものであれば、時間外労働にはならない」と明確に述べています(昭26・1・20基収2875号)。

ポイントは、明示・黙示を問わず「参加の強制」があるかどうかです。つまり、自由参加であり、参加しないことで制裁措置や人事考課上の不利益取扱いがなされないことはもちろん、今後の業務の遂行のうえでも問題とならないのであれば、その教育に参加する時間は「使用者の指揮監督の下にある時間」ではなく、労働時間とはなりません。

一方、何らかの形で従業員が参加せざるを得ない教育である場合は、労働時間とみなされることになります。

労働時間になるかどうか

ご質問のケースでは、中国に勤務する予定の従業員に、全額会社負担で終業後に中国語講座を受講させているとのことです。

その講座を受講しないと就業規則上の制裁や賞与のマイナス査定など、何らかの不利益な取扱いがなされているかという点についてはわかりませんが、中国語講座を受講することがその後の中国勤務に大きく関係するという点については、慎重に対応する必要があります。

中国に留学していたなどの事情がない限り、中国語を半年間でマスターするのは困難でしょう。間違いの許されないビジネスの場面においてはなおさらです。

したがって、会社の中国語講座を受講させるスタンスが、現地で生活するに当たっての事前のサポート、といった程度のものであれば、それを受講しないと業務遂行に支障を来すというレベルではないと思われるため、従業員に参加を強制していることにはならないでしょう。

しかし、中国語講座が中国での仕事にも大きく関係したものであり、その講座を受けたうえで中国に行かないと仕事にならないというのであれば、参加を強制していることになります。したがって労働時間となり、その分の賃金の支払いが必要となります。

この点については、残業代の不払いが発生しないように、語学講座を受けさせる目的を、客観的かつ慎重に検討する必要があるでしょう。


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