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公開日:2012年2月18日

自社ビルに入っているテナントが窓ガラスに宣伝広告を貼り出して困っている 月刊「企業実務」 2012年2月号

平田法律事務所

実務相談室


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[問]従業員20名の小売業の総務部長です。
当社では、店舗として使用している自社ビルの一部をテナントに貸し出していますが、最近、このビルの4階に入居している学習塾が、通りに面した窓ガラスに「○○高校多数合格」などといった塾を宣伝する広告を貼り出しています。

ビルの外観が損なわれるので、広告を剥がすよう申し入れているのですが、学習塾側は「窓を利用するのは借り手の権利」と主張して譲りません。

契約書には窓ガラスの使用について特に明記してはいませんが、建物の所有者である当社は、学習塾の主張を受け入れなくてはならないのでしょうか。

(鹿児島県E社)

[答]ビルのテナントは家主の承諾なしに広告等を貼り出すことはできない、というのが社会常識(慣行)でしょう。

したがって、貴社は学習塾に対して広告を剥がすように求めることができると思われます。


ポイント解説

賃借建物の使い方

賃貸借契約の借主は、契約またはその目的物の性質によって定まった用法に従い、その物の使用・収益をしなければなりません(民法616条、594条)。

契約や目的物の性質で決まる用法の具体的内容は、慣行に従い、合理的に解釈すべきだとされています。

用法違反の典型例としては、建物の無断増改築、使用目的の変更(喫茶店として賃借した物件をバーとして使用するなど)、反社会勢力の事務所としての使用、犬猫等のペットの飼育、近隣迷惑行為などがあります。

広告等禁止の契約書式例など

賃貸物件の一部(借室の窓など)を利用して広告・宣伝をすることは借主の当然の権利になるかというと、そうではないというのが一般的な常識だと思います。

その理由は、広告・宣伝は賃貸物件の通常の利用範囲を超えるものであること、広告・宣伝が認められなくても借主としては使用目的を達成するのに支障がないこと(たとえば学習塾として使うのに支障はありません)、ビル全体の美観を損なうこと(家主が美観を損なうと考える以上、それは尊重されるべきです)、などです。

現に、ビルやアパートの賃貸借契約の書式例の多くが、家主の承諾を得ずに広告・宣伝をしてはならないとしています。

広告、宣伝を禁止ないし許可を必要とする具体例(ビル貸室賃貸借契約、付属の館内規約、アパート貸室賃貸借契約などの書式例)には、次のようなものがあります。

  • 家主の書面承諾がなければ、みだりに建物の内外面を問わず、そのいずれの部分にも社名、業種の表示、広告宣伝文、ポスター類を貼付、掲示してはならない
  • 建物の外郭(出入口扉、外壁、窓ガラスなどを含む)に商号、商標その他のものを表示するときや、看板・広告設備を設置するときには家主の文書承諾を得ることが必要である
  • 建物および賃貸借室の内外および窓ガラス、壁などに宣伝、広告ビラ等を掲示または貼付してはならない

そのほか、「室外表示・装飾は建物全体の調和を保つため家主の同意した場所・方法に限りこれを行なうことができる」と定めたもの、「営業についての広告を賃貸施設のある団地内に掲示しようとするときは、書面承諾を得なければならない」と定めたものなどもあります。

明文の条項がない場合

ご質問では、「契約書には窓ガラスの使用について特に明記していない」とのことですが、自社ビルの一部をテナントに賃貸する際には、広告等の禁止ないし許可に関する何らかの条項が通常はあるものです。

仮に広告等の禁止に関する条項がなかったとしても、前述の書式例にもみられるように、ビルのテナントは家主の承諾を得なければ賃借物件を利用しての宣伝・広告(会社名や事務所名の表示を含む)はできない、というのが現在の社会常識(慣行)でしょう。

したがって、学習塾に対して広告を剥がすよう求めているにもかかわらず、貼り出しを続ける場合には、貴社は違反行為の差止め(つまり広告の撤去)を請求することができます。

学習塾の違反行為が互いの信頼関係を破壊するまでに至った場合には、賃貸借契約の解除も可能だと思われます。ただし、あまり性急に契約解除に走るべきではありません。粘り強く説得を続けるべきです。


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