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公開日:2012年1月18日

「労働者代表」の引き受け手がいない場合にはどうすればよいか 月刊「企業実務」 2012年1月号

久保内統(弁護士)/角田智美(弁護士)

実務相談室


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[問]従業員40名のIT企業の総務部長です。当社では、三六協定の締結などをする際には、いままではある特定の1人の従業員を「労働者代表」として毎回、協定を結んでいました。
しかし、先日、この従業員が退職してしまい、以降、労働者代表がいない状態です。
いまいる従業員のなかからは、率先して代表になるような者は出てきそうにないので、会社側から適任と思われる人物を指名することを考えています。この場合に留意すべきことについて教えてください。

(愛知県Y社)

[答]会社が従業員の誰かに代表者の就任を打診したり推薦を求めたとしても、会社側が選出の契機をつくるだけにとどまり、その後は労働者のみで適切な選出手続きがなされたのであれば、違法な選出にはならないといえます。
ただしその際にも、会社側からの圧力がなく、民主的に選出手続きが実施されたことを明確に記録に残すようにしておくことが重要です。


ポイント解説

労使協定の締結と労働者代表

三六協定、賃金控除に関する協定など、各種の労使協定を締結する場合には「当該事業場の労働者の過半数で組織される労働組合」もしくは「労働者の過半数で組織されている労働組合がないときは、労働者の過半数を代表する者(労働者代表)」との間で行なわなければなりません。

御社には、労働者の過半数で組織される組合はないようですから、労使協定の締結相手として、従業員のなかから労働者代表を選出してもらい、その者と協定を締結する必要があります。

労使協定は労働者に重大な影響を生じさせますので、民主的方法で選出された、純粋に労働者を代表する者が締結当事者でなければならないとされています。

労働者代表の選出の際には、次の要件が必要となります。

  • 会社の監督または管理の地位にある者でないこと
  • 選出方法については
    (1)選出にあたり、協定の締結等をする労働者の過半数を代表する者を選出することを明らかにすること
    (2)投票、挙手等の方法による手続きにより選出された者であること

従業員の親睦団体の代表者がそのまま労使協定の労働者代表となって結んだ協定が、適法な過半数代表者と結んだものとはいえないとし、三六協定の効力を認めなかった判例もありますので、選出には注意が必要です。

労働者代表の候補者選び

労働者が自主的に代表者を選出してくれるのであれば特に問題はありません。
しかし、労使協定の締結に必要だと企業が告知しても、「代表になりたい」と名乗りを上げる人が出てこないことはよくあります。

このような場合に、会社が適任であるとみなした労働者を一方的に労働者代表に指定したのでは、民主的な方法で選出された労働者代表とは認められません。
仮にきっかけは会社が与えたとしても、労働者が自主的に代表を選出したと認められるようにする必要があるのです。

自ら積極的には労働者代表になりたくはなくても、他人から推薦されれば受けても構わないと考える従業員も、探せば出てくるかと思います。

まずは、潜在的な労働者代表の適任者、または適任者を推薦してくれそうな従業員を探して、取りまとめを打診することを検討しましょう。

「自ら立候補してもらえないか」「代表者として適任な人物を推薦してくれないか」と会社が従業員側に打診したとしても、そこから先の具体的な選出手続きに対して会社側が圧力などをかけず、従業員が民主的な方法で代表者を選出したのであれば、結果的には有効な労働者代表の選出がなされたと認められるといえます。

民主的手続きによる選任の確認

労使協定に調印した労働者代表について、「勝手に代表者を会社が決めた。決めるための選挙もしていない」などと労基署に訴えられて、協定の効力を争われると面倒なことになります。

代表の選出は「挙手」でもよいとされますが、このような事態を防ぐためにも「投票」で行なうようにさせ、確実に記録を残すべきです。

御社のようなIT企業は、従業員全員がパソコン端末を利用できることが多いといえるでしょう。
そこで、代表選出のための投票を従業員各自のパソコン端末でできるようなシステムを企業が用意することも考えられます。

投票内容について経営者が一切関知できない仕組みであれば、投票用紙の準備、投票会場の手配等の事務作業を企業が行なっても、それだけで問題にはならないでしょう。

協定を締結する機会を減らす

労使協定に有効期間が設けられていると、期間満了時に改めて協定の締結が必要になります。

ただし内容に変更がなければ、締結者が退職等により労働者代表でなくなった場合でも、すでに締結されている労使協定は無効にはなりません。

そこで自動更新規定(会社または労働者代表から特段の申し出がなければ同一条件で更新される)を設け、適当な労働者代表がいなくても協定書の効力を継続させることもできます。

ただし、労働法は頻繁に改正されます。それに伴い協定の見直しが必要になることもあるので、自動更新規定だけでは対応しきれません。
結局のところ、普段から労使協定の締結に備えて労働者代表をすぐに選出してもらいやすい労務環境を構築しておくことが重要になります。


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