植田卓(税理士)
従来から使われていた白熱球や蛍光管は、いずれも途中での交換を当然のように必要としています。
そのため、交換のために購入する白熱球や蛍光管は、一般的に消耗品として扱われていると思われます。
しかし、LED照明は、光度が初期の70%程度に低下するまで約4万時間といわれていて、仮に1日あたりの点灯時間を10時間、年間の稼働日数を250日とすると、16年間使用できる計算になり、電気設備の耐用年数である15年をも超えます。
したがって、LED照明は立派な減価償却資産であるといえるでしょう。
資本的支出と新たな資産の取得とは、どちらも減価償却資産の取得価額に計上されるという点では同じですが、その性格は異なります。
資本的支出とは、既存の資産に対して行なう支出であるのに対して、新たな資産の取得は、文字どおり新規に資産を取得することをいいます。
照明器具は、一般に、電球や蛍光管等の発光具、発光具を取り付けたり点灯を制御するための回路を有する取付器具、点滅を操作するためのスイッチ、スイッチと取付具との配線から構成されています。
したがって、LED照明への交換にともなって、発光具、取付器具、スイッチ、配線のすべてを取り替えた場合は、既存資産を除却して新たな資産を取得したことになると解されますので、既存資産の帳簿価額を除却したうえで、LED照明への交換費用を新たな資産の取得として減価償却資産に計上することになるでしょう。
しかし、LED照明への交換の場合は、(1)電球だけを取り替えるか、(2)電球の交換とともに取付器具を調整するか、(3)電球と取付器具とを交換するか、のいずれかになると思われますので、既存資産に対する支出として、資本的支出か修繕費のいずれかで処理することになるでしょう。
既存資産に対する支出が、次のいずれか、すなわち資産を改良するための支出に該当する場合には、資産に計上することになります。
LED照明への交換費用が、右に当てはまらず、現状維持や原状回復に止まる場合は、修繕費として処理します。
LED照明への交換費用が、当初想定されていた耐用年数を延長させるための支出と解される場合は、資本的支出として処理します。
資本的支出について、その支出額が20万円未満の場合は、明らかに改良費に該当する場合であっても、修繕費として損金処理することができます。
この場合の20万円未満かどうかの判定の単位ですが、照明器具は、一般に各部屋や廊下など、建物の仕切りごとに仕様を設計されている場合が多いと思われます。
したがって、一般的には、部屋ごとに20万円未満かどうかを判定して差し支えないものと思われ、現実には損金算入されるケースが多いのではないでしょうか。