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公開日:2011年2月18日

決算前に売買契約が白紙になった仲介手数料の取扱いは 月刊「企業実務」 2011年2月号

植田卓(税理士)

実務相談室


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[問]3月決算の法人です。年度内に本社を移転するため、中古物件を購入することにし、手付金を入れていたのですが、売り手から手付金を倍返しするから売買契約を白紙にして欲しい旨の申出がありました。
こちらも困るのですが、受け入れざるを得ないと思っています。

手付金の入金時期は今期中になるかは微妙なのですが、この場合、どの時点でどのような処理をするのが適切でしょうか。

(京都府H社)

[答]手付金とは、一般的には、売買契約が締結されてから履行されるまでの間に、契約解除の伴う違約金の特約が付された内金をいいます。
その間に売り手から契約を解除する場合は手付金を戻すとともに同額の違約金を買い手に支払い、買い手が契約を解除する際は手付金を違約金として放棄します。

契約の解除は、民法上、相手方の同意を得る必要はありませんので、一般的な契約であれば、売り手からキャンセルの申出があった時点で、手付金相当額の違約金を受け取る権利が確定します。

したがって、ご質問のケースの場合では、実際に入金されたかどうかにかかわらず、この段階で違約金相当額を収益に計上しなければなりません。


ポイント解説

1.手付金の性格

手付金は、単なる内金とは違い、契約が解除された時の違約金として機能する役割も有している点が特徴です。

契約が履行された際には、手付金は内金として売買代金に充当されますが、契約が解除された場合には、手付金の額を違約金の額として、解除を申し入れた側から相手方に対して弁償することになります。

民法上、契約を解除するには相手方の同意は必要なく、解除する側がその意思を表示すれば成立します(民法540条)。

しかし、契約を解除された側は、その解除に伴って不利益を被る場合もありますので、その際には、解除した側に対して損害賠償を請求することができます(民法545条3項)。

不動産の売買のように、契約を締結してから履行までの間に時間的な間隔があり、他に代替物が存在しないような場合には、双方にとって、契約を解除できるルールをあらかじめ設けておいたほうが、むしろ都合がよいといえます。

そこで、代金の支払者側から受領者側に対して、あらかじめ内金を交付しておき、支払者側から解除した場合にはその内金を放棄し、受領者側から解除した場合には内金の倍額を戻すことにより、損害賠償請求に代わるものとして手付金が習慣化されています。これは、民法においても手付契約として規定されています(民法557条)。

ご質問のケースでは、売り手から手付金を倍返しするから売買契約を白紙にして欲しいという申出があった段階で、民法上は契約の解除が成立します。

つまり、その時点で手付金を返してもらい、かつ手付金相当額の違約金を受け取る権利が発生するのです。

したがって、決算期末までに実際に違約金が入金されるかどうかに関係なく、違約金相当額は今期中に収益として計上しなければなりません。


2.解除に伴う買い手の処理
  1. 売り手から手付金の倍返しを受ける場合
  2. ご質問の場合のように、売り手から売買契約を解除されたことで手付金の倍返しを受ける場合には、売り手から解除の申入れを受けた段階で、手付金相当額の違約金を受け取る権利が生じます。

    したがって、その日の属する事業年度において違約金を収益に計上し、法人税法上も益金の額に算入されることになります。

  3. 売り手に対して手付金を放棄する場合
  4. 買い手の都合で売買契約を解除する場合には、手付金を放棄することになりますので、その放棄による損失が生じます。

    この金額は、売買契約の解除を申し入れた日の属する事業年度の損失となり、法人税法上も損金に算入されることになります。

    なお、売買契約の締結によって手付金を支払ったあとに、ほかに気に入った物件が見つかったために契約を解除する場合には、気に入ったほうの物件を取得するために手付金の放棄による損失を負担したものであることから、固定資産の取得価額に算入すべきであるとの考え方も成り立ちます。

    しかしあくまで別個の契約であることから、法人税法上、取得価額に算入しなくてもよいものとして扱われています(法人税基本通達7-3-3の2)。


3.解除に伴う売り手の処理
  1. 買い手が手付金を放棄した場合
  2. 買い手から売買契約を解除した場合には、売り手はその手付金を没収することになります。

    したがって、買い手から解除の通知を受けた日の属する事業年度において、預り金(または前受金、仮受金)から収益に振り替えることになります。
    法人税法上も、同じ事業年度において益金の額に算入されます。

  3. 買い手に対して手付金の倍額を戻した場合
  4. 売り手から売買契約を解除したために、手付金の倍額を買い手に戻した場合には、手付金の返戻と手付金相当額の損失が発生することになり、その額は、契約の解除を申し入れた日の属する事業年度における損失となります。
    法人税法上も、その事業年度の損金の額に算入されます。


企業実務 2011年2月号 掲載

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