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公開日:2011年10月18日

社長の貸付金を株に変えることで相続税対策になる場合とは 月刊「企業実務」 2011年10月号

植田卓(税理士)

実務相談室


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[問]従業員34名の建設業の経理部長です。現在、当社の社長が子息に会社を継がせようとしています。
社長は会社の株の大半を保有しているほか、約3,000万円を会社に貸し付けています。この貸付金を株に変えることで、相続税対策になる場合があるということを聞きました。
その具体的な方法と、どのような場合に相続税対策となるのかについて、教えていただけますか。

(神奈川県I社)

[答]社長からの会社に対する貸付金は、社長が死亡した場合には、金銭債権として相続財産となり、相続税の対象になります。

この場合、債権額、すなわち会社に貸し付けている元本の額が相続財産の額になります。
また、会社から利息を受け取る旨の約定があるのであれば、相続開始時点における既経過の未収利息の額を含めた金額が相続税の対象になります。

ところで、社長がこの貸付金を会社に現物出資して増資をした場合、通常であれば、会社の側からみると、借入金が資本金に変わっただけで損益は生じません。
また株主の側からみても、貸付金が減少した分だけ株式の評価額が増加するわけで、全体としての増減はありません。

しかし、会社の経営状況が思わしくなく、貸付金の全額の回収が見込めない場合には、貸付金の現物出資によって増加する資本金は、回収可能額をもとに評価した貸付金の額となります。

会社からみれば、借入金の一部が切り捨てられて収益が実現します。逆に株主からみれば、貸付金の全部が減少する一方で、株式の増加額は貸付金のうち回収可能な部分に見合う額になりますので、将来、相続の対象になる資産の額は減少することになります。

ところで、このようにして相続税対策をするのであれば、相続財産の額を引き下げることも重要ではありますが、相続税の納税資金を確保しておくことも必要となります。

そういう意味では、貸付金を株式に変換するだけでなく、可能な範囲で回収して現物資産を減らし、手元資金を増やすことも大事だと思います。


ポイント解説

会社に対する貸付金を現物出資して増資した場合(DES)の基本的な処理

会社に対する貸付金をその会社に現物出資して増資することを、デット・エクイティ・スワップ(Debt EquitySwap・負債の資本化)といいます。
省略してDESとも記されますが、基本的には次のような処理をすることになります。

(1) 株主からみた場合

株主からみると次のような仕訳で処理され、貸付金が株式に姿を変えたことになります。
有価証券/貸付金

この結果、DESを行なった以後は、利息を受け取る代わりに配当を受け取ることになります。

(2) 会社からみた場合

会社からみると次のような仕訳で処理され、借入金が資本金に振り替わります。

借入金/資本金

この結果、会社は返済の義務を免れて自己資本が充実し、定期的に利息を払い続ける義務も免れます。
その代わり、利益に応じてそのつど、配当を行なうことになります。

DESで増加する資本金の額

会社が現物出資によって設立または増資を行なった場合に、増加する資本金の額については、その現物資産が出資されたときの時価によることとされています。

したがって、ご質問のケースで、社長が会社に対して有している3,000万円の貸付金について、全額の回収が見込まれる状況なのであれば、増加する資本金の額は3,000万円となります。
その直前の1株当りの時価を求め、3,000万円に見合う株数を算定して、社長に交付すればよいわけです。

仕訳で示すと次のようになります。

(1) 社長からみた場合

有価証券3,000万円/貸付金3,000万円

なお、社長に交付する株数が時価と連動せず、たとえば本来交付すべき株数よりも少ない場合には、結果的に他の株主が有する株式の価値が増加することになりますので、社長と他の株主との間で贈与の問題が生じます。

(2) 会社からみた場合

借入金3,000万円/資本金3,000万円

全額の回収が見込めない場合

もし、会社の純資産が資本金の額を下回っているなど、貸付金の全額を回収することが見込めない場合には、回収可能額をもとに貸付金の額を評価し、その評価額が増加する資本金の額になります。

たとえば、ご質問の場合で貸付金の回収可能額が1,000万円だとすれば、その処理を仕訳で示すと次のようになります。

(1) 社長からみた場合

有価証券1,000万円 評価損2,000万円/貸付金3,000万円

この貸付金の評価損2,000万円は、結果的に将来、社長の相続税の計算上、相続財産は3,000万円の貸付金が株式1,000万円になって、2,000万円減少するためです。

(2) 会社からみた場合

借入金3,000万円/資本金1,000万円 債務切捨益2,000万円

この、債務切捨益2,000万円については、法人税法上、益金の額に算入されることになります。


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